我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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19-4 開かれた…秘密の部屋(チェンバーオブシークレッツ)

すでに日を回っている現在。

アルダープさんの説得を試みようとするが失敗に終わった。

 

……いや、まだだ。

俺が殺され、義賊に逃げられるだけでも直視しがたいのに、さらに悪魔が出てきたとなれば、アルダープさんは混乱するだろう。

しかし、説明すればわかってくれる人だ。

そう思って俺たちは朝まで体を休めることにした。

 

 

翌朝、俺たちは神器があった部屋へと向かった。

アルダープさんを説得するには証拠がいる……その証拠を探すためだ。

俺の記憶では、悪魔は俺の背後からいきなり現れた。

転移魔法か、それとも隠れるスキルかはわからない。

だが、その魔法が使われた痕跡があれば、悪魔がいたことへの証明となるはずだ。

そう思ってドアに手をかけようとした――そのときだった。

 

「……なんだ、貴様ら。ワシの寝室の前で集まりおって」

 

勝手にドアが開くと、太った腹が見えた。

それはアルダープさんだった。

 

「え? アルダープさん!? どうしてここに……」

「どうしても何も、ここはワシの部屋だからだ。貴様が無残に殺されたせいで昨日はひどい目に遭った」

「それは本当にすみません……って、そうじゃなくて! どうしてアルダープさんがここにいるんだ? この部屋は血まみれ――」

 

一番ひどい目に遭ったのは俺だが、アルダープさんからすれば自分の家が殺人現場になっているのだからかなりひどい目ではあるだろう。

そんなことを思いながら一つの違和感を覚える。

 

匂いだ。

昨日はこの部屋の外からでもわかるくらい血の臭いでひどかったのに、今はどうだ。

アルダープさんがドアを開けてもほとんど無臭なのだ。

いやな予感がして部屋の中をのぞき込むと――

 

「なっ、なんだこれ!? どうしてこんなにきれいになって……!?」

 

血だまりもなければ血痕すらわからないほどにこの部屋はきれいになっていた。

俺の言葉に反応して、めぐみんたちも部屋をのぞき込むと、その顔は驚愕へと変わる。

 

「あ、アルダープ殿! まさか部屋を昨晩のうちに……」

「ああ、清掃させたわ。ワシの家が冒険者の血のにおいで充満してたら堪らん。壁や床にシミが残ったらどうする」

「し、しかしあれは重要な物的証拠となり得るのですよ! これから調査をしようとしていたというのに!」

「はん、ダスティネス様ならともかく、冒険者ごときが余計な口を出す出ないわ! 調査は終わりだ!」

「ま、待ってくれアルダープ殿! どうしてこんなことを……!」

 

ダクネスが声を上げる。俺も胸に小さな不安が広がった。

まさかアルダープさんがこんな考えなしの行動をするなんて……と。

しかし、めぐみんはその言葉を聞いた瞬間、瞳を鋭く光らせた。

いつもの爆裂魔法のテンションではなく、冷静で理詰めな紅魔族の目。

彼女は一歩前へ出て、アルダープをじっと見つめ――

 

「あの、もしかしてですが、調査を終えたというのは、もうすでに調査をした……ということですか?」

「そ、そうだとも! 先ほどからそう言ってるではないか!」

 

思わず安堵した。

まさかアルダープさんが混乱のあまり正気を失って重要な証拠まで掃除してしまったのかと……

 

「流石はアルダープさん……もう犯人の尻尾をつかんでいるんですね!」

「ああそうだとも」

 

皆の目は大きく見開かれた。

昨日は俺の話を嘘だと否定していたが、やはりアルダープさんはアルダープさんだ。

自ら調査して、決定的な何かをつかんで……俺たちより一足先に真相へたどり着いているに違いない。

 

「アルダープ殿っ、つまり犯人が誰だか、どこにいるのかわかったのか!? 犯人の、悪魔の目的は!?」

「落ち着きくださいダスティネス様。流石に現場に残されている痕跡のみで全てを把握できるわけがない。それに、犯人が悪魔だと判明した訳でもない」

 

期待外れの答えに、俺は思わずうつむいた。

しかしアルダープは俺の表情を見るなり、ふっと口元を吊り上げた。

 

「……だが、どこにいるのかはわかっている」

「なっ!? ほ、本当か!? やっぱり何か掴んでるんだな!?」

「もちろんだとも。……私は昨夜からずっとおかしいと思っていたのだ」

「おかしい……?」

 

俺は思わずアルダープさんの言葉を反芻する。

何がおかしいのだろうか……。

そう思っていると、アルダープさんは手を後ろに組み、ゆっくりと寝室の扉に目を向けた。

 

「まず第一に、あの部屋は密室だったということだ。あの密室で、胸を貫かれるほどの致命傷を負わされたのであれば、犯人は部屋の出入りをした何らかの痕跡が残るはずだ。しかしそれがない」

「確かにそうですね。あれほどの惨劇を引き起こしたのであれば返り血を浴びて、探せば証拠は出てくるはずなのに出てきていない……」

「加えて、一番最初に入ったのはあの義賊だ。が、貴様が義賊に殺されたことを否定してる以上別の方法で何者かが部屋に入っている。しかし、廊下には兵士を立たせて厳重に監視していた……昨日から今に至るまでずっとだ」

「……っ! なるほど、そういうことですか!」

 

アルダープの言葉を聞いためぐみんが突然声を上げる。

何かに気づいたらしいが、俺にはまだ全く理解できない。

 

「何がそういうことなんだよ?」

「この部屋にはドアが一つしかないのに殺人鬼はどうやってカズマの背後に現れたのでしょう……ということですよ」

「そ、そりゃテレポートとか転移してきたか……」

「それは不可能なのですよカズマ。テレポートは地点登録しないと目的地へ移動できませんし、何ならそんな魔力を大量に使う魔法が発動されたら我が邪王真眼が見逃しません」

「つまりどういうことなんだよ!? テレポートじゃないっていうんだったら何だよ!」

「……つまり、カズマを殺した犯人は、姿を隠して、まだこの部屋のどこかにいるのではないでしょうか」

 

それを聞いて、俺の心臓がざわつく。

俺を殺したやつがすぐ近くにいるだって……?

アルダープさんを見ると、まるで「よくぞ気付いた」とでも言いたげな、底の読めない笑みを浮かべていた。

 

「……流石紅魔族だ、頭が切れる。そこまで察するとは思わなかった」

「ふふん、そうでしょうそうでしょう名推理でしょう! 何せ私は紅魔族随一の天才、めぐみんなのですから! 現世で暴けぬ謎も見抜けない真実もありはしないのです!」

「……その、この部屋に殺人鬼はいないのだが」

「…………」

「は、恥ずかしっ! めぐみんってば紅魔族随一の天才とか名乗っておいて推理が外れて……や、やめっ、いたっ、ちょっと、胸を叩かないでよ!!」

 

確かに恥ずかしい、恥ずかしいがゆんゆんの援護はしないでおこう。

戦いに巻き込まれたら蘇生されてすぐの俺じゃ秒殺だろう。

……別に、ゆんゆんのたゆんたゆんを眺めたいなんてやましい思いはこれっぽっちしかない。

そう思ってめぐゆんのじゃれ合いを見ていると、ダクネスがアルダープさんに。

 

「めぐみんの推理が間違っていたというのであれば、アルダープ殿は一体どのようにお考えなのか」

「……私は不思議だったのだ。どうしてあの状況でカズマ殿が義賊以外に殺されたと妄言を吐いたのかと」

「たしかに……アルダープさんは最初、悪魔の仕業だってのは否定して……」

「そうだ。だが――もしやと思って屋敷の構造を調べ直したのだ」

 

次の瞬間、アルダープは寝室の床を指さした。

そう言ってアルダープさんが指さしたその先――ベッドがあった位置。

そこには今までになかった扉があった。

その指先は、見えない何かを示しているかのように震えている。

ゆんゆんとめぐみんも息をのみ、アクアでさえ真剣な表情になった。

俺は無意識に拳を握りしめていた。

 

「……この寝室には、地下へ通じる隠し階段がある」

「っ!!?」

「な、なんですって!? 寝室から……地下に!?」

 

アルダープは深くうなずき、さらに続けた。

その顔つきは、もはや確信をもって真実を突きつける探偵のそれだった。

俺たちの背筋に冷たいものが走る。

まさかこんな展開になるとは、誰も予想していなかった。

 

「カズマ殿の言う悪魔が出入りした痕跡が一切ない……とすれば」

「それは……この隠し階段が使われたってこと? 悪魔はドアを使わず、地下から寝室へと直接上がってきた……じゃあ……その悪魔は今も……?」

 

ゆんゆんの言葉にアルダープは大きくうなずく。

俺の声音には興奮と恐怖が混ざっており、どうしても震えが止まらなかった。

思わず姿勢を正し、俺はアルダープさんの次の言葉を待つ。

 

アルダープはゆっくりと俺たちを見渡し、重々しく言い放った。

その声は低く、そして恐ろしくはっきりしていた。

寝室に走る緊張は、肌を刺すほど鋭い。

視線を合わせた全員が、続く言葉を飲み込むように聞いた。

 

「――もし、カズマ殿を殺したのが悪魔なら。そいつはまだ、地下室にいる可能性がある」

 

その瞬間、俺たちは同時に息をのんだ。

あの悪魔はまだ、この屋敷の地下かに潜んでいる。

アルダープは静かに、しかし逃げ道を完全に塞ぐような声音で俺たちに依頼を告げた。

悪魔の存在を確信し、もはや後戻りできないと踏んだのだろう。

 

「ダスティネス様、それからカズマ殿も。どうか冒険者として仕事を引き受けてはもらえないだろうか。この件、どうか力を貸してくれ」

「……もちろんです。私の仲間があんな目に遭わされたままでは怒りが収まらない」

 

 

 

 

「……なあダクネス」

「なんだカズマ」

「俺、流石に仕事引き受けたくないんだが」

「な、何を馬鹿なことを言っているのだ! そもそもお前を殺した相手を討伐しないでどうする、冒険者の名折れだぞ!」

「じゃあ逆に聞くが、ライオンがいる檻に入って死んだやつがもう一回同じ過ちをするか!? しないね!! だから俺はアルダープさんと一緒に待ってるからダクネスたちで行ってきてくれ!」

「そんなにトラウマなのか!?」

 

当たり前だろ!

ダクネスは一度も死んだことがないからそんなことが言えるんだ!

人間ってのは何度も同じことを体験すればなれるっていうが全くそんなことはない。

痛いものは痛いし、死ぬのは嫌だ。

 

「そうだ、いいこと思いついた」

「……絶対ろくなものじゃないが一応聞いてやろう」

「あの悪魔は引きこもってるんだろ? なら俺たちは屋敷の外に出て、めぐみんの爆裂魔法とゆんゆんの上級魔法とアクアの退魔魔法をひたすら打ち込めば……」

「たわけが! アルダープ殿の屋敷を破壊して言い分けないだろう!」

「それはアルダープさんに聞かないとわからないだろうが! アルダープさんのことだ、きっと聖人みたいに笑って許してくれるに決まってる!」

「お前の中でのアルダープはどうなっているのだ! 流石に怒るに決まってる! もし笑うにしてもそれは精神が壊れて笑っているだけだろう! ほら、カズマも準備してこい。整ったらすぐにでも行くぞ」

「あァァァんまりだァァアァ!」

 

勝手にダクネスが仕事を引き受けたくせに……!

理不尽のあまり激高してトチ狂いそうだ。

 

 

俺が絶望に打ちひしがれている間にも、作戦会議が行われ、役割分担が決められていく。

アクアはアタッカー、ダクネスはタンクとして悪魔を引きつける盾らしい。

ゆんゆんはサブアタッカー兼緊急時脱出要員として待機。

かく言う俺は後方から全体の指揮とサポートらしい。

 

「なあ、めぐみん。俺と役職交換しないか?」

「何を馬鹿なこといってるのですか……。確かに私は紅魔族随一の天才、そう、天才ではありますが、とっさの判断や機転に関してはカズマの方が上手でしょうに」

「そこをなんとか! お願いします天才のめぐみん様! 俺、もうあの悪魔と会いたくない! めぐみんみたいに外で待機してたい! お願いしますよ天才のめぐみん様!」

「だああっ、やかましいですよ! さっきから『天才の~』とか『~様』とか言ってるくせに尊敬の念が全く感じませんよ! それに、私の仕事を楽チンみたいに言って……一周回って私のことを馬鹿にしてるんですか!? そもそもカズマは爆裂魔法とか使えないのに外で何してるんですか!」

「もちろんそこは考えがある。アイリスを呼んで――」

「どれだけ悪魔と対峙したくないのですか!? 妹のように可愛がっている子を呼び出すなんて!」

 

いや、ほんと、最低なこといってる自覚はあるけど、でも死にたくないんだよ!

ダクネスとかアクアみたいにステータスが高ければいいが、俺なんて一発食らっただけでお陀仏確定なんだぞ!

それに、アイリスなんて俺たち以上に強いわけだし、たまに頼るくらいいいと思うんだ。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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