我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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修正報告
前話において神器が盗まれたという設定を修正し、アルダープの手元にある設定に直しました。


20-1 根源たる…悪感情(デイモス)

布団の中に全身を埋めた俺は、今日は絶対にここから一歩たりとも出るものかと固く心に誓っていた。

悪魔退治だなんて言われても、今の俺がわざわざ死にに行く理由はどこにもないし、むしろ布団と融合することで時間が解決してくれるだろうと……

 

「カズマさん! 本当に行きませんよこのままじゃ!」

「行きません。俺は今日ここで余生を過ごすって決めたんだよ」

 

俺はより一層力を入れる。

頭まで毛布をかぶって息がこもっているのに、それでも悪魔の討伐にかり出されるよりは百万倍マシだ。

このまま眠ったふりをしてやり過ごせればいいが、うちのパーティーはそんな甘くないのを俺はよく知っている。

 

「余生って……まだ若いでしょう! あと何年そこでいるつもりですか!」

「ここから出たら俺は悪魔討伐で確実に死ぬと断言できる。だから危険な悪魔がどっかいくまではいる予定だな」

「こ、この男は……! いっそのこと布団の上から袋だたきにしてやりましょうか!」

「まあ待てめぐみん。布団の上から袋だたきにしたところで衝撃が吸収されて効率が悪い。それでは相手を喜ばせ――じゃなく、屈服させることはできまい」

 

何言いかけたんだこの変態。

そう思っていると、ダクネスは布団の端を無造作に掴むと、潔よいというよりも乱暴な動作で一気に引き剥がそうとしてきた。

しかし俺の覚悟はこの程度の力にはなびかない。

 

「くっ……この! さっきまでフラついていたくせに!」

「このカズマさんをなめるなよ? 今の俺は寝具一体……誰も攻略できない鉄壁の要塞だ」

「くそっ、こうなったら……すまない、めぐみんもゆんゆんも手伝ってくれ!」

「は、はい! ごめんなさいカズマさん!」

 

ゆんゆんが申し訳なさそうに眉を寄せながらも、同時にしっかり布団をはがしにかかる。

だが、俺の強固な防御は破れない。

確かに力は強いが、ただそれだけ。

布団を剥がす技術もないペーペーに、幼い頃から毎日母ちゃんと激闘を繰り広げていた俺を破ることなどできない!

そう思いながら布団の中で丸まっていると、外から世界の終わりみたいな気配が迫ってきた。

――爆裂魔法の、ビリビリとした気配だ。

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が真紅の混淆を望みたもう――」

「め、めぐみん? 冗談だよな? カズマいくら意地になってるからと、爆裂魔法で解決できない問題もあるのだぞ?」

 

ダクネスのそんな声が聞こえてくる。

俺の布団を引き剥がそうとする力が弱まるのを感じるが、きっとこれは俺をおびき寄せるための罠に違いない。

いくらめぐみんが爆裂魔法に脳を犯されてるからって、流石にここまで脳筋なわけ……

 

「覚醒の時来たれり、無謬の境界に落ちし理、無行の歪みとなりて現出せよ――」

「めぐみん! いつも言ってるわよね! 何でもかんでも爆裂魔法で何とかしようとする癖をやめなさいって! 爆裂魔法は万能じゃないからって!」

 

わ、わかってる。

ゆんゆんがめぐみんの方に駆け寄っていくが、これは演技だ。

そろそろヤバい気配が強くなってきてるが、あの悪魔の時ほどじゃあない。

俺を恐怖で誘き寄せようとしているのだろうが、そんな……本気でそんなことするわけ……

 

「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」

 

やばい、こいつ、マジでやる気だ……!

肌がビリビリする感覚が強くなる。

今にも弾けそうな熱い気配は、俺が体験した冷たい死の恐怖を上書きした。

そうだ、コイツはやるときにはやる女だ……!

 

「今こそ原初の恐怖を刮目せよ。穿てッ!! エクスプロー――」

「おいめぐみんやめろ! それ以上は流石にしゃれに――」

「今ですダクネス! ゆんゆん! 確保です!」

 

そんなめぐみんの声に思わず目を丸くしてしまう。

しかし俺を確保しようとするダクネスたちも俺と同じような反応をしていた。

 

 

 

 

「す、すまない……め、めぐみんのおかげでカズマを確保できたのだ。そう機嫌を損ねないでほしい」

「ツーン」

「そ、そうよ! ダクネスさんの言うとおり、めぐみんが今日一番の功労者なのよ? 私にできることなら何でもするから……」

 

ゆんゆんがそう言うが、めぐみんは機嫌を損ねたままである。

なぜか。

それは俺がダクネストゆんゆんに挟まれた状態で拘束されているせいだ。

具体的にいえば、巨大なたわわによって身動きがとれないでいるためである。

 

「く、くそー……腕力が強くてまったくほどけないぞー」

「何なんですかこの男は! 全く悔しがってるように見えないのですが! それどころか全く抵抗するそぶりもないですし! なんだむかつくのでこの鼻の下を伸ばしている男を一発殴ってもいいですか!」

「いいわよ。私がちゃんと押さえててあげるから思いっきりやって」

「ちょっ、ゆんゆん!?」

 

いくら「私にできることなら何でも――」なんて言っても、俺を売り飛ばすなんて非人道的なことするか!?

そう思う間もなく、めぐみんの拳が俺の腹を穿った。

 

 

 

 

「さて、治療は終わりよ? おっぱい星人のカズマさん」

「おっぱい星人はやめてくれ!」

 

あれは男性全員の弱点、生理現象、本能といっても過言じゃない。

あれをされたら男は全員ああなる生き物なんだ。

そんなことを思っていると……

 

「よし、それじゃあカズマの治療も終わったことだし、いよいよ行こうか」

「行きません」

「そうですね。カズマさんをこんな酷いことをした悪魔を許すなんてできませんから。行きましょう!」

「行きません。というか酷いことしたのはお前だからな?」

「ふっふっふ、我が爆裂魔法が悪魔を焼き払いし時、我はまた一歩デーモンスレーヤの名声を高めることができるでしょう」

 

どうしよう、本当に行きたくないんだが……

でもこの三人はもう行く気満々といった様子。

もう一度布団に潜ってやり過ごそうかと思うが、ダクネスたちは常に俺のことを警戒しているせいで実行できない。

くそっ、これから警戒すべき対象がほかにいるだろ!

なんで俺にばっかり警戒するんだ!

かくなる上は……普段から怠惰でクエストいくのにいつも反対するアクアに助力を仰ぐしかない!

 

「アクア、アイツらになんか言ってやってくれ」

「……? ああ、なるほどねカズマ、わかったわよ! 『パワード』!」

 

流石駄女神、普段は役に立たないがこういうときは役に立つ。

アクアなら俺と同じ気持ちだと確信していたが、やっぱり頼りになるやつだぜ。

アクアの支援魔法で高速から脱出しようと思い、その腕を振りほどこうとしたのだが……

 

「……あれ? ……あれ? …………なあアクア」

「どうしたの?」

「今支援魔法かけてくれたよな?」

「ええ、そうね?」

「……なんかダクネスとゆんゆんから逃げられないんだが」

「そりゃそうでしょ。カズマにかけたんじゃなくてダクネスにかけたんだから。これから悪魔を討伐するんでしょ? だったら、ダクネスに支援魔法かけて万全にしないと。悪魔殺すべし、先手必勝で私が退魔魔法で地獄に送ってやるわ!」

 

うん、そうじゃない。

アクアが言ってることは普段とは違ってめちゃくちゃまともだ、悪魔に立ち向かおうとしてることを除けば。

 

「悪魔を相手にするときだけ急に有能になるなよ!」

「何よその言い方! まるで私が普段は有能じゃないみたいじゃない!」

「そう言ったんだが?」

「謝って! 私のことを馬鹿にしたこと謝って!」

 

くそっ、俺は平穏に長生きしたいだけなのに、こんな裏切りがありえてたまるか!

なんとかしてこの状況を乗り越えねば……!

そう思っていると、扉が静かに開く音が聞こえてきた。

 

「おや、随分と……羨ましい光景ですな」

「アルダープさん!? あ、あの、これは……!」

「冒険者というのは出陣前に賑やかなものだと聞きますが、なるほどなるほど。ララティーナだけでは飽き足らず……!!」

「いやいやいやいや! どう見ても拘束されてるだけです!」

 

部屋に入ってきたのはアルダープさんだった。

相変わらず落ち着いた足取りで、しかし今この混沌の中心にいる俺を見るやいなや顔を真っ赤にした。

確かに戦を目前にすると武士は子孫を残そうとする本能が爆発すると聞くが、さすがに俺の今の状況は真逆も真逆だ。

 

「助けてくださいアルダープさん! 俺、やっぱり悪魔が怖くて……なのにダクネスたちは俺を無理矢理襲って!」

「ひ、人聞きの悪いことをいうな! 襲ってなど……!」

「……なるほど、そういうことか。ダスティネス様、カズマ殿を放してもらいたい」

 

ダクネスはアルダープさんの言葉を聞くと「逃げるんじゃないぞ」と圧の籠もった視線を飛ばしながら俺を放す。

ゆんゆんもダクネスが放すのを見ると、俺のことを解放した。

アルダープさんは考えるそぶりを見せた後、俺の方に近づいてくる。

よく見ると、アルダープさんの手には小さめの木箱が。

 

「本来はダスティネス様にと思ったのだが……」

 

アルダープの視線が手元に移動した。

木箱が開くと、そこから取り出されたのは見覚えのあるネックレスがあった。

 

「これは、義賊たちが狙っていた神器……?」

「その通りです、ダスティネス様。強大な力を宿しているが、どのような効果があるかも不明な代物です」

「そのようなものをどうしてこの者に……?」

「言ったでしょう。本来はあなた様に渡す予定だったと。この魔道具にある何かしらの恩恵があなた様を守ると思いまして。しかし、もっと必要な者がいたようですな。悪魔との因縁に向き合わなければならない者が」

 

そう言ってアルダープさんは魔道具を俺の目の前に差し出した。

 

「まったく、恐怖するなどと情けない。気持ちは分かるが、ダスティネス様を困らせるなよ」

「え、いやいやいや、そんな、どうして……! ちょ、ちょっと待ってください、これ神器でしょ!? お守りとかそういうのとは訳がちがうんでこんな重要な物を俺に渡すのは……!! そもそも俺は行きませんし!」

 

アルダープは俺の手を強引に取って、ネックレスを押しつけた。

近くで見ると胸がざわつくほどの魔力が渦を巻いているのが分かる。

これを悪魔討伐に向かう俺に渡すというのは信頼の証というやつなのだろうが、そんな重責を背負わされるほど俺は強くない。

いや、でも、これだけ信頼されてると、断ったら逆に悪い気もしてくる……

 

「いや、やっぱりこのネックレスは大丈夫です。アルダープさんのおかげでやる気出てきたんで」

「そうかそうか、それは勇ましいことだな。悪魔の討伐、頼んだぞ」

 

アルダープさんは俺の肩に手を置いた。

……はぁ、しょうがねぇなあ。

俺は、本当はいやだけど、アルダープさんにここまで言われちゃあな。

 

「わかりました、アルダープさん。俺、頑張ってみます」

「うむ。……では代わりにダスティネス様に、こちらを持っていただきたく」

「わ、私にか……!? ですがこれは……」

「あなたの献身と覚悟は、誰よりも重いと私は感じております。それに、元々はあなた様に持っていただきたいと思っておりましたので」

「……光栄です。責任をもってお預かりします」

 

ダクネスの指は震えていた。

あれだけ義賊が血眼で狙ってた理由がよくわかる代物だし、そんなもんを託されるって……いや、期待されてるのはわかるんだけどさ。

俺たちに対する期待というか、悪魔討伐を願う気持ちというか、それを思えば思うほど緊張してくる。

 

「……ダスティネス様とその仲間なら、きっと成し遂げてくれると信じている。どうか悪魔を倒してきてくれ」

「もちろんです、アルダープ殿」

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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