我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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20-2 違和感の…辻褄合わせ(マクスウェル)

「待たせたわね!」

「ほんとだわ! 一体何分待たせるんだよ!」

「1時間も経ってないでしょ? 大げさなのよカズマは」

「もう1時間! 集合する時間すぎてるからな!?」

 

そんなことを言いながら地下へ続く階段の前に現れたアクア。

ダクネスたちは苦笑いしながらいるが、遅刻したくせに反省の一つもしないで……ひっぱたいてやろうか!

 

「ぷーくすくす! 私はカズマに合わせてあげたつもりだったのよ? だってカズマってばさっきまで死にたくないーって地団駄踏んで――」

「や、やかましい! 俺がいないとまとまりもクソもないパーティーだからしょうがなくだぞ! 本当はやりたくないんだからな!」

「何言ってるのかしら、悪魔なんてこの私がいれば一発で浄化できるのよ? まとまりも何もなくたっていけるんですけど!」

 

こいつ……そう言って何回も痛い目に遭ってるのにどうしてこうも学ばないんだ。

そうか、痛い目に遭う回数が足りないんだな。

そう思い、俺は小馬鹿にしてくるアクアに思わず握りこぶしを作るが、それを振り下ろす前にダクネスに止められた。

 

「落ち着けカズマ、今は争ってる場合じゃない」

「……わかった。このアホには後からしっかり教育することにする。アホが治るまでな」

「あーっ! アホっていった! 私アホの子じゃないのに! ダクネス! 引きニートが、引きニートのカズマが……!」

「ふふっ、まあまあ。確かにさっきまで必死に布団に引きこもっていた人物とは思えないが言ってやるなアクア。私からもアクアに教育するなんて糠に釘なことするなといっておいてやるから。カズマがいなければ悪魔を倒すどころか全滅の危機さえある。嫌々でも、参加してくれることに感謝しなければ」

「……はーい。悪魔の息の根を確実に止めるためだものね」

「というわけだ。カズマもアクアのことをいじめてくれるな」

 

……今、アクアに教育するなんて糠に釘だって言ったよな?

馬鹿は死んでも直らないから諦めろと言われると、確かにそれもそうだと少しばかり溜飲が下がる。

そう思っていると、後ろの方で紅魔族二人がこそこそと何か話していた。

 

「それにしても……カズマの弱点がアルダープとは。意外でも……ありませんか。返しきれないほどの恩があるのですから」

「そうね。カズマさんの弱点がアルダープさん…………」

「……おや、顔が赤いですよゆんゆん。大丈夫ですか?」

「えぇっ!? だ、大丈夫よ! ちょっと暑かっただけで…………アルカズ……カズアルは解釈違いだし……」

「ゆ、ゆんゆん!? 一体何を口走っているのですか!?」

「な、何でもないわよ! ただ、その人が弱点だって言うと、なんか恋愛みたいじゃない? 今は多様性の時代だしそうのもアリかな……なんて思ってみたりしただけで。それにカズマさんはパーティーメンバーが女性だけなのに誰ともそういう関係になってないし……もしかしたらって」

「ねりまきですか!? それともお姉さんですか!? 純朴な我が同胞を穢したのは!! ゆんゆんのことを沼に引きずり込むのはやめてくださいといったのに!」

 

待って、ちょっと本当に待てゆんゆん!?

俺も変なこと考えちまっただろ!?

本当にやめてくれ、俺はアルダープさんのことを好きじゃ……いや、好感はあるけどそういう意味じゃなくて!

アルダープさんから神器を託されるほど信頼されてるって思うと、その信頼に応えないとって思っただけだからな!

俺はただ、人としての礼儀というか、義理を返したいってだけで……いやまあ確かに、あの人に真剣な顔で頼まれたら断れねぇよ?

でもそれは誰だって同じだろ!?

 

「アクシズ教はいいわよカズマ。アクシズ教は悪魔とアンデッド、魔王を除くすべてとの恋愛を許すのだから。永遠に愛し合い続けることを認めましょう。だから種族の垣根すら越えてないカズマはアクシズ教に入信し――」

「断る!! 俺はアクシズ教にはならない!」

「なんでよぉ!!」

 

別に恋とか愛の形で悩んでないわ!

というか悪魔っ娘を禁忌にしたらサキュバスサービスも受けられないし困る。

俺はやかましいアクアから逃れるために地下へ足を踏み入れた。

 

 

 

そんなこんなで、めぐみんを外に残して、緊張も何もないまま階段を降りる。

ランタンで周囲を照らすが薄暗く、空気がじわじわ冷たくなってきた。

地下だから室内より涼しいのは当ぜんっちゃ当然だが……

 

「くっさ! 何よここ、とてつもない悪魔臭がするんですけど!」

「悪魔の匂いはわからないですけど、なんだか薄気味悪く感じますね……薄暗いし、寒いし」

 

階段の最後の段を踏みしめた瞬間、ふっと空気が変わった気がした。

いや、実際は何も変わっちゃいない。

でも俺の中の記憶が、恐怖が想起される。

敵感知スキルでも直前まで気づかなかった悪魔の敵意、俺をなぶり痛ぶり、その中で嗤って見せた害意に身震いしてしまう。

 

しばらく進むと階段が終わり、数メートル先にぽつんと立っている古い扉が現れる。

ひどく静かで、奥に何か潜んでいるかわかっているのに何も探知できない。

あの独特の気配が肌を撫で回してくるのは錯覚だ。

スキルに反応がないのだから。

でもこの先が危険だという忌諱感だけは錯覚じゃない。

 

あの奥に悪魔がいる、と思った途端、さっきまで強制的に連れられていたくせに気丈ぶっていた俺の胃が、ぐにゃりとねじれた。

行きたくねぇ気が蘇ってくるのは仕方ねぇだろ……あんなの目の前にしたら普通ビビるわ。

でも、アルダープさんに頼まれた以上、ここで逃げたら男がすたる。

 

「…………アクア」

「何よ、怖じ気づいて震えてるカズマさん?」

「お、怖じ気づいてねえよ! き、緊張してるだけだわ!」

「ぷーくすくす! 声も上ずってるしへっぴり腰だし……プー!!」

「お前は緊張感なさ過ぎだろ! そんな気楽さで変なことするんじゃないぞ!?」

「安心しなさいって。この私にかかれば悪魔なんかちょちょいのちょいよ!」

 

安心できない……

確かにアクアの実力はベルディアの件でもわかってはいるが、調子に乗ってる時ほどアクアの運の悪さがトラブルを引き起こすような気がしてならない。

 

「なあ、念のため言っておくが本当に勝手なことするんじゃないぞ? まずは部屋をゆっくり開けて――」

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』――ッ!!」

「ぎゃぁああああああああ!?」

 

勢いよくドアを開けたと思うと、アクアが輝かしい眼を破壊せんばかりの光線を部屋の中へ照射した。

すると悲鳴が聞こえる。

悪魔に攻撃が当たったのかと思ったが違う。

その光の輝かしさを直視した先頭のダクネスが目を押さえながら地面を転がり回っていた。

 

「言ったそばからなにやってんだよっ! こんな暗いところで激しい光り出したら目がくらむに決まってるだろ!」

「な、何よ! こうした方が悪魔が攻撃する前に倒せると思ったのよ! そんなに怒んなくたっていいじゃない!」

「ったく……悪魔と戦う前だったから良かったけど、戦闘が始まってからだったら……」

 

そう思ったとき、ふと違和感に気がつく。

ダクネスが目を焼かれているが、結局その先に悪魔がいたのか。

アクアは問題児だが、悪魔やアンデッドに対してはエキスパートだし、アクア以上のプリーストがいるわけない。

ともなればアクアの魔法が効かないはずないのだが、奥からは悪魔の叫び声――断末魔すらも聞こえない。

 

「ほら『ヒール』。大丈夫かしらダクネス?」

「ううっ、ありがとう。……って、アクアのせいなのにどうしてお礼を言っているのだ私は……」

 

アクアとダクネスの会話が入ってこない。

魔王軍幹部のベルディアでさえアクアの魔法には悶絶していた。

直撃せずともわずかに悲鳴を上げるに決まってる。

 

「アクア、さっきの魔法で悪魔、倒せたのか?」

「倒せたに決まってるでしょ? 私の魔法の威力を見くびってるんだったらさっきの魔法をカズマに撃ってあげましょうか」

「違う、そうじゃない。悪魔を倒した手応えがあったか聞いてるんだ」

「それは……感じなかったけど……」

 

やっぱり……

もし倒せてなかったとしても、あんな凶悪な魔法……反射的に敵意や殺気が生まれるはずなのに、なんの反応も感じなかった。

この地下室を見る限り、そこに誰かが隠れられる場所はほとんどない。

違和感が鼓動を加速させる。

 

「どういうことだ。悪魔がこの場所にいるんじゃなかったのか……?」

「もしかして、兵士さんたちが気づいてないだけで悪魔はも何処かに行っちゃったのかしら……」

 

ゆんゆんの言うとおり、そうだと俺としては嬉しい。

だが俺の生存本能が油断しちゃいけないと汽笛を鳴らす。

 

「ダクネス、回復したばっかりで悪いが先行してくれ。悪魔の気配は感じないけど、まだ終わってない気がする……」

「……わかった。皆は私の後ろに」

「アクアとゆんゆんは悪魔用に魔法の準備をしててくれ」

 

恐る恐る部屋の中に入るが、そこには何もいない。

何かがいた痕跡すらない。

 

「ねえねえ、もう帰りましょうよ。多分私の魔法で地獄に還ったのよ」

「もしくは元からいなかったか。アルダープ殿に報告しないとな」

「私、めぐみんに爆裂魔法を撃つの中断するように行ってくるわ。多分めぐみんは聞かないと思うけど。その場合は、テレポートでアクセルの街まで連れて行きますね」

 

三人がそう言うが、一度殺されたことがある俺はまだ警戒を解けないでいた。

絶対ここに悪魔はいる。

そう考えないと辻褄が合わない。

どこかに悪魔が隠れている。

そう思って部屋の隅々に目を配っていたときのことだった。

 

「か、カズマ!」

「どうし――って、なんでその魔道具光ってんだ!?」

 

ダクネスの叫び声に反応して駆け寄ると、ダクネスの身につけていたネックレス――体を入れ替える神器が光り輝き始めていた。

前にも魔道具がこんなことになったのを見たことがある。

『お前の物は俺の物。俺の物は俺の物。お前になーれ!』なんていう変な呪文でアイリスと俺が入れ替わったときだ。

まさかこんな時に誰かがあんな変な言葉を口に出したってことか!?

ここにいる四人がみんな混乱している――そのとき。

 

「また、来てくれたんだねぇ」

「――ッ」

 

俺は思わず前に倒れ込んだ。

あのときと同じ、敵感知スキルなんてなくても気づくレベルの禍々しい気配が俺の背後にいた。

前回は反応が遅れて胸を貫通したが今回はもう避けの姿勢に――!

 

「ごふっ……あ、が……っ……。なん、で…………」

「カズマッ……!!」

 

それは前と同じ場所。

腕がずるずると音を立てながら引き抜かれ、肉の中を蠢く不快感に身を震わせる。

残ったのは大きな穴。

えぐり取られた肉が、どくどくと流れる熱が、床に落ちて……

 

「ひゅー、ひゅー……覚えてるよ! キミ、この前どこかで会ったことがあるよ! だから前と同じになるようにしたんだ! ひゅー、ひゅー……久しぶりの絶望!」

 

次第に呼吸が苦しくなっていく。

心臓はまだあるが、それでも地上で溺れていく感覚とともに、声も出なくなっていく。

代わりに口から出るのは鮮やかな血液。

俺は膝から崩れ落ちると、血だまりの池にぼとりと身を放り投げ――

 

「『セイクリッド・ハイネスヒール』――ッ!!」

 

――かけ、アクアの回復魔法でなんとか持ちこたえることができた。

口に残る血の味を飲み込み、俺の足は地を踏みしめる。

 

「悪魔相手に勝手に死ぬなんて私が許さないわよ! アイツに向かって撃つから避けなさいカズマ! 『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』――ッ!!」

「うぉっ!? 死にかけだったんだぞ俺!? 容赦ねえな!?」

「私の魔法ならもう完治してるでしょ! こう見えてカズマが殺されたこと、怒ってるんだからね! 『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』――ッ!!」

 

アクアの魔法が悪魔に向かって飛んでいく。

ただでさえその魔法は上級魔法の中でもさらに習得難易度が高いはずなのに、悪魔を目の前にして、最初の比較にならないほど眩く、攻撃範囲もさることながら高威力に見えた。

しかもそんな魔法が二発連続で放たれたのだ、ひとたまりもない。

 

魔法の軌道上にいた俺はアクアの魔法をなんとか避けるが……

悪魔に攻撃が届くことはなかった。




見通す悪魔バニルの能力がすべてを見通す程度の能力なら、辻褄合わせのマクスウェルは……

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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