我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

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22-4 見通す…悪魔(アルバイター)

「へいらっしゃっせ! 美人の店主に会えると思って、ルンルンと胸を躍らせてやって来たところを申し訳ないっ! ……我が輩でした!!」

「いや、誰だよ!!」

 

勢いよく開けたドアの先、カウンターの向こう側でこれ以上ないほど不敵にポーズを決めていたのは、燕尾服を完璧に着こなし、顔を白黒の仮面で覆った大男だった。

ウィズの癒やしスマイルと清潔感のある紅茶の香り、そして何より「カズマさーん! 戻られたんですね!」という涙ながらの歓迎を期待していた俺のテンションは、一気に垂直落下した。

 

「お、おい、ウィズはどうした? 泥棒か!? 泥棒なのか!? それともウィズの借金がついに限界を超えて、店が差し押さえられたのか!?」

「差し押さえとは言い得て妙であるな。我が輩はこの店のアルバイターであり、店主とは旧知の仲である……バニルという者である。あまりの赤字の酷さに、見かねて経営を手伝いに来たのだが……いやはや、まさか、ここまで救いようがないとはな……」

 

バニルと名乗った男は、愉快そうに高笑いした……かと思えば頭を抱えてテンションを落としていた。

この男、妙な仮面をつけているが、その立ち振る舞いには隠しきれない気品がある。

何なら王都で体験したソレより洗練されてるような気がした。

 

そんな俺の横で、めぐみんが突如として戦闘態勢に入った。

杖を握る手に力が込められ、紅い瞳が鋭くバニルを射抜く。

 

「カズマ、気をつけてください。この男から人間とは思えない、強大な魔力を感じます……!」

「ほう……貴様は紅魔族か。人間でありながら実に見通しにくい。そして陰に隠れているローブの。汝からもただ者ならぬ気配を感じるが……一体貴様たちは何者なのだ」

 

めぐみんがこれほど警戒するのは珍しい。

一方のバニルも、仮面の奥で瞳を怪しく光らせ、興味深げにめぐみんをじっと見据えていた。

 

「……紅魔族の娘よ、その目はどうした。眼帯の奥底から力の根源を感じるが」

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……ふっ、この左目に宿るは邪神の力。数年前に我が身に封印されし邪神の断片が封印され、我が力の一部となったのです。……そういう貴方も、そのかっこいい仮面から力の大半を感じますが」

「フハハハハハ! 我が輩の超絶格好いい仮面から放たれる力の根源に気づくとは! よもや、そこまでの実力者だとは……その端倪すべからざる慧眼には恐れ入った、センスのいい紅魔の娘よ!」

 

さっきまで警戒し合ってただろ……仲良しか、コイツら。

互いに不敵な笑みを浮かべながら目を赤く光らせているし、波長が合うのだろうか。

なんならこのバニルとかいうやつも、紅魔族が仮装してバイトしてるんじゃないかと思えてきた。

 

「おっと、今我が輩のことを頭のおかしい種族と同一視しようとした男よ。我が輩は紅魔族ではない。よいか、紅魔族ではない。わかったな、先ほどから『ああ、めぐみんの背中って小さいんだな。いや、小さいのは背中じゃなくてむn――」

「おいいいいっ!? 今何言おうとした!? というか俺の心を見透かすして!?」

「カズマ、一体私のどこが小さいと考えていたのか、その口からはっきり話してもらおうじゃないか」

「フハハハハ! 久方ぶりの悪感情、しかも怒りと羞恥の悪感情が二人の人間から! 大変、大変美味である!」

 

何だよこのアルバイター!

お客様は神様じゃないのか!

 

「神は死んだ。もしいたら我が輩が直々に地獄へ招待してやろう」

「店主を! 店主を呼べ! アルバイト店員の教育はどうなってんだ! このアルバイターが俺の心を読んで癪に障る発言ばっかしてくるんだが!!」

「フハハハハ! 残念であるが、働けば働くほど赤字を生み出す商才のない貧乏店主は我が輩がお仕置きをしたので今は部屋の奥で眠っているのである! ……眠っているというより余計なことをしないよう眠らせたと言った方が正しいが」

 

本当はここで『ウィズに何をした!』って激高するところなんだろうが、この仮面越しでもひしひし伝わる気苦労感……

今ばかりはこの癪に障るアルバイターに同情してしまう。

 

「まあ、その、アルバイト頑張れよ。俺たちにできることがあれば何でも言って――」

「ほう! 何でも!」

「あ、いや、何でもというか、俺たちができる範囲で何でもという……」

「いやぁ、かたじけない! まさか何でもと言ってくれるとは! さすがは王都で名を馳せた英雄殿は、懐が深いな!」

 

バニルのテンションが目に見えて跳ね上がった。

やばい、これは絶対に何かマズい、取り返しのつかない沼に足を突っ込んだ気がする。

 

「何、身構える必要はない。ほんのささやかな頼み事であるからな」

「頼み事……?」

「貴様らアルカンレティアに行くのであろう? 我が輩がこの店を黒字に持っていくまでの間、この借金を増やすことにかけては天賦の才能を持つ店主を預かってほしい」

「えっ、そんなことでいいのか? それなら願ったり叶ったりというか……」

「うむ。ではポンコツ店主を呼んでくるとしよう」

 

そう言って仮面のアルバイターはカウンターの奥へと消えていった。

……うちの狂犬女神が襲ってこないかだけ心配だが、商才がないだけでウィズは常識人だ。

それに巨乳だし美人。

常識人が増えるし、癒やしも増えるしで、嬉しいことこの上ない。

そ、そんなことを考えていると、店の奥から足音がこちらに聞こえてきた。

 

「久しぶりだなウィズ…………ウィズ!? おい、しっかりしろ! 体が透けてるぞ!」

「ううぅ……すいません、すいません……。まさか、仕入れた全自動卵割り器が一つも売れないなんて……バニルさんから黒字に戻るまで砂糖水生活だと言われて……」

「おまっ、アルバイトのくせに店長より権限あるのかよ!?」

「案ずるな、ステータスの伸びしろがほとんど残されていない冒険者よ。貧乏リッチーが変なものを仕入れてくるのでな、ちと厳しい仕置きをしておいたのだ」

 

ちょっと待て!?

今聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが!?

具体的には伸びしろがないとか言ってなかったか!?

 

「ううっ……流石に殺人光線はお仕置きにしては厳しすぎませんかねぇ……」

「だまらっしゃい極貧店主が! 汝が碌でもないものばかりを仕入れてきては『これは絶対売れますぅ』とか抜かしおって! 返品させているとまた別のトンチキ商品を仕入れてきおって! まともに商売する気があるのか、貴様は!! はぁ……はぁ……すまない、我が輩としたことが声を荒げてしまった。何せまだバイトしてから数日しか経過していないというのにも関わらず、日に日にガラクタと負債が増えるのでな」

「お、お疲れ様です……」

 

俺は思わず同情してしまった。

アクアの借金を肩代わりさせられる俺と、ウィズの赤字を押し付けられているバニル。

俺たちは、立場こそ違えど、本質的には同じ地獄に住む住人なのかもしれない。

そう思っているとバニルは、ぐったりとしたウィズをゴミ袋のように俺の前に突き出した。

 

「さて、この粗大ゴミを持って行くがいい。これからアルカンレティアに行くのであろう? ちょうどいい、そこに捨て置いてくれ」

「ひ、ひどいです!」

「と、とりあえず俺の体力わけようか? めぐみんの体力吸うとピリピリするとか言ってたし……」

「ありがとうございます! ありがとうございますカズマさん……!!」

 

ウィズが泣きながら頭を下げる。

本当は俺より体力があるめぐみんから吸い取ってほしいのだが仕方がない。

何でかめぐみんにドレインタッチするとむしろダメージが入るらしいしな。

 

そう思いながらウィズに体力と魔力を流していると、バニルが俺たちの背後でローブを深く被り気配を殺していた人物に視線を向けた。

まあ、ウィズ以上の巨大な胸の存在感のせいでかき消せていなかったが。

バニルの視線が止まった瞬間、ウォルバクさんの肩がビクッと跳ねる。

 

「ところで……ローブで顔を隠している汝、どこか見覚えがあるような気がするのだが、我が輩の気のせいであるか?」

「ひ、人違いです」

「そうかそうか……この我が輩と貧乏店主の顔を見ても違うと言い張るのであればそうなのであろうな。ならば、本人ではないが、他人の空似である汝に、我が輩のささやかな懺悔を聞いてもらうとしようか」

「ざ、懺悔なんて……私は聖職者じゃないわよ? アクシズ教徒でもエリス教徒でも……」

「実は我が輩、アクセルの街の調査を依頼され、それを適当に済ませ報告したのだが……」

「話を聞きなさいよ!?」

 

さっきまで物陰に隠れていたというのに、思わず飛び出して叫ぶウォルバクさん。

しかしバニルは気にした様子もなく話を続ける。

 

「調査の追加の依頼をされたのであるが、断ったのだ。それでもしつこく依頼してくる老いぼれには困ったものでな、我が輩は逃げ続けたのだ。そうしたら誰か休暇申請をしていた者が代わりに派遣されるという話に――」

「…………ねえ、どうして仕事断ってるのよ。あなた今アクセルの街にいるじゃない」

「理由は単純に面倒事を他人に押し付け、その結果生まれる怒りの悪感情を貪り食うためである……フハハハハハ! 申し訳ないっ、ひっじょうに申し訳ないのであるっ! フハハハハハ!!」

「この悪魔、謝罪する気あるのかしら!?」

 

非常に愉快だとバニルが声を上げて笑う一方、ウォルバクさんの顔は引きつっていた。

バニルは満足げに頷くと、俺たちの背中を無理やり出口へと押し出した。

 

「それではよろしく頼んだぞ、温泉でむふふな展開がある小僧よ」

「ちょっ、今ものすごく気になること言ってなかったか!? それについてもう少し詳しく!」

「残念ながら我が輩はこれよりこの不良在庫の山を処分するという魔王討伐より困難な事業に取り掛からねばならぬのでな。今から閉店である。さあ、さっさとその粗大ゴミを連れて行け」

 

追い出されるように店の外に出される。

無情にも閉ざされる扉。

俺たちの前には、俺の体力を分けてあげたとはいえ半透明なままのウィズと、顔を真っ赤にしてプルプル震えているウォルバクさんが残された。

 

「……はぁ。癒やしを求めて店に行ったはずなのにどうしてこうなったんだ」

 

旅の仲間が増えれば、普通なら賑やかになるしいいことなのだろうが、ただでさえ喧しい仲間に加えて2人も追加で旅行……

賑やかを通り越して騒がしくなることは間違いない。

俺はため息をつきながら屋敷への道を歩く。

その後ろでは、めぐみんとウォルバクさんが先ほどのやり取りについて話していた。

 

「あの、お姉さん。さっきのあの仮面の男、バニルと言いましたか。あの人はお姉さんのことを知っている口ぶりでしたが……」

「知らない人よ」

「……そう言いたくなる気持ちはわかりますよ。私もカズマの知り合いですかと問われたらそう答えかねません」

 

おいコラ。

どうして俺のことをバニルを同じヤバいやつに分類してるのか聞こうじゃないか。

めぐみんにそんな視線を向けていると、ウォルバクさんが目に見えて動揺して視線を泳がせた。

 

「あの人と知り合いなのですか? それにウィズと同じ名前の知り合いがいるという話も……」

「うぐっ……で、でも、私はそのウィズって人とは直接会ったことがないというか……」

「あれ? もしかしてウォルバクさん? ウォルバクさんじゃないですか!」

「……多分別人です」

 

ウィズがウォルバクさんを知っていた件。

ウォルバクさんは汗を垂らしながら視線をそらせている……が、これは確定で何かを隠しているやつだ。

俺とめぐみんはじっと二人のやりとりを見ることにした。

 

「もしかして忘れちゃいましたか? 私、ウィズですよ! ウォルバクさんが幹部になるときに丁度入れ違いでアクセルの街にやってきたので一目見ただけでしたが、私も同じ幹部ですよ! ……もしかしてバニルさんのことも忘れちゃいましたか? あの見通す悪魔で有名な――」

「わー! 待って! ウィズ待って! お、思い出した、思い出したからちょっとそれ以上変なことを喋らないで!?」

「よかったです。まさか忘れちゃったのかと思って心配しましたよ」

 

半透明なのに意外と元気なウィズに対して、ウォルバクさんは途端にぐったりしていた。

というかこの二人が幹部って……

どんな会社かは知らないがそこの社長は相当俺と趣味が合う気がする。

巨乳の美人が幹部に囲まれて仕事とか、絶対幸せだろう。

そんなくだらないことを考えているとめぐみんが。

 

「どうして隠そうとしていたのですか。別に隠すことないじゃないですかお姉さん」

「ご、ごめんなさいね……でも何というか言い出しにくくて……」

「というかウィズとあのバニルと一緒の職場だったんだな。そう言えばウィズの前職ってなんだ……?」

「私ですか……? 私は――」

「か、彼女は冒険者だったのよ!! 聞いてるでしょ、血気盛んな凄腕の冒険者として活動してたって」

「ウォルバクさん! そんな昔の恥ずかしいことを言わないでくださいよ!」

 

ああ、そう言えばそうだったか。

デストロイヤー討伐のときもそういってたしな。

ウォルバクも、そしてあのバニルも同じ冒険者チーム的な何かなのだろう。

パーティーは基本的に四人前後で来るもがセオリーだが、大規模な冒険者組織になるとそういうこともあると聞くしな。

 

「そう言えばウィズってリッチーだけど、今の年齢って――」

「私は二十歳でリッチーになったので年齢は二十歳ですね」

「えっと……」

「カズマさん。何をし王としているのかわかりませんが、それ以上のことを言えばどうなるか、覚悟してくださいね?」

 

こわっ。

血気盛んな凄腕の冒険者として活動してたって聞いたが、血気盛んなのは変わらずらしい。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
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