我は邪王真眼の使い手、めぐみん!   作:桃玉

98 / 127
今日は短めです、申し訳ないです……


23-2 揺蕩う…旅路(オンザロード)

ガタゴトと激しく揺れる荷馬車の御者台。

そこからの眺めは、ある意味では絶景と言えた。

目の前には巨乳のお姉さんが二人がいるからだ。

 

加えて、脇には14歳のロリ、その奥に14歳の非ロリ。

荷台には青いのと黄色いのが座っている。

……客観的に見ればハーレム以外の何物でもないが、当事者である俺の心は、どんよりとした曇天模様だった。

 

俺は腰に下げた剣を引き抜き、その鈍い光を放つ刀身を眺めて溜息をついた。

今の俺の手元にあるのは、アクセルの武器屋で適当に買った、何の変哲もない鉄の短剣だ。

と言っても今まで使っていた短剣とは違う。

実は先日の悪魔との戦いを含め、数々の修羅場を潜り抜けてきた先代の短剣は、いつの間にか修繕不能なほどボロボロになっていた。

 

俺の新しい相棒は銘もなければ、魔法付与もない、どこからどう見てもどこにでもある普通の短剣である。

まあ、前のもそうなんだが。

 

「……はぁ」

「カズマ、先ほどからその(なまくら)を眺めてどうしたのですか? もしや、私の杖の美しさに見惚れて、自分の棒切れが恥ずかしくなったのですか?」

「うるせえよ。俺だって、もう少しマシな武器を新調したかったんだよ。……俺のステータスじゃ武器の性能がそのまま生存率に直結するんだからな」

 

隣に座るめぐみんが勝ち誇ったように自分のマナタイト付きの杖を撫で回している。

俺のレベルは未だ20に届かない程度――このパーティーの中で一番レベルが低い。

中堅冒険者を名乗ってもいいはずなのだが、俺のステータスは伸び悩んでる。

あの仮面のアルバイト店員にも伸びしろが少ないとか言われたばかりだし、体を鍛える気もないので金に物を言わせて新装備を整えたかった……のだが。

 

「はぁ、時間があればこの安っぽい短剣じゃなくて俺専用のKATANAを作ってもらったのに……この先が思いやられる」

「カタナ……? もしかして黒髪黒目のちょっと変な名前をしてる勇者候補の人たちがよく愛用している武器のことですか?」

「変な名前っていうなよ」

 

おっとりとした口調で会話に混ざってきたウィズに突っ込む。

あたかも俺の名前がおかしい風に聞こえるじゃないか。

いや、この世界の人からしたら変わった名前なんだろうけど、紅魔族ほどじゃないはずだ。

 

「って、ウィズは刀のこと知ってるのか!? 鍛冶屋のおっちゃんに聞いたら刀なんて知らないみたいなこと言ってたが……」

「正しい製法による現物は少ないですね。形をそれっぽくした模造品はあるのですが、切れ味が本物とは全く違うらしくて鍛冶職人さんが無理難題を突きつけられたと困っているのをよく聞きますね」

「へぇ……やっぱり希少品なのか」

「ユキノリ――あ、私のかつての冒険者仲間なのですが、あの人もカタナに対するこだわりがもの凄くてカレンによく呆れられてましたよ。懐かしいです、あの時は本気で魔王討伐を考えたりしましたね……」

 

遠い目をするウィズ。

どうやら彼女も、かつては転生者と共に冒険して、伝説を紡ごうとしていたらしい。

しかし、刀がそんなにレアだとは。

そんな俺の落胆を見て、ウォルバクさんが優しく微笑んだ。

 

「大丈夫よ、武器は使い手との縁で育つものよ。今はただの鉄屑だとしても、使い続けていれば手に馴染んで変わるかもしれないわ」

「はは……ウォルバクさんにそう言われると、そんな気がしてくるから不思議ですね」

「その通りですよカズマ。その刀、名をちゅんちゅん丸(仮)としましょうか。その名刀が黒刀として覚醒したらば、ちゅんちゅん丸(仮)マークⅡに進化してカズマの命を救うに違いありません!」

「……めぐみんにそう言われると、中二病の痛い発言にしか聞こえないから不思議だよな――お、おい! 俺の短剣に何をするんだ!」

「これは刀の名を刻む聖なる札です! さあ、カズマの刀を寄越すがいいですよ! それに私自慢の名を刻んであげましょう!」

「何でそんなもん持ってんだよ! そもそもちゅんちゅん丸って何だよ(仮)ってなんだよマークⅡってなんだよ!! 勝手に命名するな! 将来魔王を討伐したら歴史の教科書に『勇者が使っていた刀の名前はちゅんちゅん丸』って変な名前が載ることになるんだぞ! そんな風に書かれたら死んでも死にきれねえよ!」

 

めぐみんに変な名を刻まれまいと短剣を奪われないよう必死に短剣を抱え込む。

そんなことをしていると、ウォルバクさんが不思議そうな顔でこちらを見た。

 

「……ねえカズマくん、もしかしてアナタってウィズみたいに魔王討伐とか考えてたりするのかしら?」

「まったく」

「………………き、聞き違えたかしら? 魔王討伐を考えて――」

「ないですね。これっぽっちも」

 

俺の即答に、ウォルバクさんが絶句した。

 

「さっき『将来魔王を討伐したら』とか言ってたのはどこに行ったの!?」

「あれは方便ってやつですよ。まあ、冒険者始めた最初こそ魔王討伐だーって思ってましたよ? でも現実見えてくるとそんなん無理だろって」

「で、でも、魔王軍の幹部を倒したりして……」

「ウォルバクさん、俺って幸運値高いんですよ」

「そ、そう……」

「……なのにどうしてよくそういう災難に遭遇するんだろうって話ですよ。ホントはぬくぬく過ごしたいだけなのに」

 

確かに俺たちは魔王軍の幹部や大物賞金首を何度も討伐している。

でも、あんなの行き当たりばっりで、災害に遭ったみたいなもんだ。

本当は戦いたくないのに勝手に戦わされて……魔王軍には俺の迷惑も考えてほしい。

 

「そ、そう……じゃあ魔王討伐とかは」

「興味ないですね。じゃんけんに絶対勝つ程度の幸運だけでどう戦えと。今もモンスターに襲われたら嫌だなって心配してるし……うん、魔王討伐なんて無理ムリ」

「えぇ……」(どういう事なの? この子って巷では勇者とか呼ばれてたはずよね……?)

 

(どういう事なの? この子、巷では勇者の再来とか、魔王軍の天敵とか呼ばれてたはずよね……?)

そんな心の声が聞こえてきそうな表情だ。

幻想を壊(イマジンブレイカー)してごめんな、ウォルバクさん。

でもありのままの俺を受け入れてほしいんだ。

ウォルバクさんから困惑の視線を受けているとめぐみんが。

 

「お姉さん、呆れかえってるところ申し訳ないですが、カズマはこう言う男ですので慣れてください。まあ、もし今モンスターが襲ってきたら私の爆裂魔法で無に還してやりますので、外敵の怯えるという心配は無用なのですがね」

「いや、一発しか撃てないし、開けた場所でしか使えないし、使い勝手悪すぎる魔法使いにそんなこと言われても不安しかないんだが」

「私とお姉さんを目の前にして爆裂魔法を愚弄するとは! お姉さん、愚かなカズマに人生とは、爆裂魔法とは何たるかを教えてあげてください!」

「ちょっと何言ってるかわからない……けど、まあ、少なくともめぐみんの言うとおり心配しなくて大丈夫よ、何かあったら私が後ろから守ってあげるから。こう見えて私は凄腕の魔法使いなのよ」

「トゥンク……」

 

その穏やかな、包容力に満ちた表情に、俺の心臓が少しだけ跳ねた。

凄腕の、魔法使い……何だろう……その言葉を聞くとさらに胸が高鳴ってくる。

確かにめぐみんに爆裂魔法を教えたって言ってたし、すごい魔法使いなんだろう。

そんな魔女の魅惑の魔法にかかってしまったのだろうか――

 

「ああああああぁぁああああ!!」

「な、何!? 何事なの!?」

「ウォルバクさんがめぐみんに爆裂魔法を教えたって……めぐみんに爆裂魔法を教えたってことかぁっ!?!?」

「どういうことなの!? そういうことだと思うんだけど!?」

「アンタのせいでめぐみんにどれだけ爆裂魔法で迷惑かけられたことか! 爆裂魔法しか使わない魔法使いに育てやがって! 育て手として責任もって最後まで教育しろよ!!」

「ええっ!? 爆裂魔法しか使わないのこの子!?」

 

俺は御者台から身を乗り出して、ウォルバクさんの肩を掴んで揺さぶった。

今まで色々なことがありすぎて反応し忘れてたが、俺の苦労の元凶なのか!?

デストロイヤーをデストロイできる魔法を毎日のようにポンポンポンポン撃ちまくる戦略兵器を生み出したあげく、初心者の街に解き放った諸悪の根源はアンタなのか!?

ウォルバクさんはまるで初めて知ったかのようにめぐみんに助けを求めるが、そんな頼みの綱はそっぽを向いていた。

 

「ねえ、どうして普通の魔法を習得してないのこの子!? 私が爆裂魔法を教えたのは、まあ、アナタに教えてくださいって頼まれたからっていうのもあるけれど、元はと言えば――」

「そんなのどうだっていいんだよ! アンタのおかげで一日一回の爆裂魔法がアクセルの街の風物詩になったんだぞ!」

「ねえ、本当にどういう事なの!? 初心者の街でどうして爆裂魔法が一日一回も撃たれてるの!?」

 

困惑してるウォルバクさんはめぐみんに助けを求めている。

めぐみんは視線をそらせたままだった。

 

「いい景色ですねぇ」

「……ねえめぐみん」

「……何ですかゆんゆん」

「そろそろ助け船出しなさいよ」

「…………いい景色ですねぇ」

「現実逃避してないでよ! そもそもめぐみんに爆裂魔法を教えたはた迷惑なお姉さんは半分くらいしか悪くないでしょ!」

「この件に関しては誰も何も悪くはないですよ! 運良くお姉さんから爆裂魔法を教えてもらっていなかったら、あのときに私は命を落としていたでしょうし、私が上級魔法を覚えないのも、爆裂魔法に拘るのも私の意思です!」

「じゃあめぐみんが悪いじゃない!」

 

俺がウォルバクさんに詰め寄り、ゆんゆんがめぐみんを問い詰める。

そんなカオスな俺たちに、荷台からの苦情が飛んできた。

 

「るっさいわね! 私のことを荷台に座らせておきながら何をそんなにお喋りしてるのよ! 混ぜなさいよ!」

「というより、いくらモンスターの影がないとはいえこれほど騒いでいたら寄ってくるから止めないか……まあ、私としては敵に囲まれて辱めを受けるのも、それはそれで吝かではないのだが」

「ダクネス、それは問題ありませんよ。何せこの馬車には私を含めて強大な魔力を有する者が4人も乗っているのです。我らが魔力を前にして襲撃を仕掛けるような魔物はいませんとも」

「おい、それフラグじゃ――」

 

俺の言葉が終わるよりも早く。

凄まじい土煙を上げて、それは現れた。

最近忙しいので投稿頻度が減りそうです。原作小説1巻分を1章として、どこまで書こうかという…

  • 第6章(現在の章)
  • 第7章
  • 第8章
  • リメイクしてテンポよく進める
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。