世界救うのも四回目。 作:名も無き一人の望み
次に目を開いたとき、私はまたその場所に居た。
音を立てて椅子に座る。行儀が悪い、だとかの指摘は、正直知ったこっちゃない。
元から態度も行儀も何もかも、取り繕うことを諦めれば悪い方なのだ。
人生十数年で取り繕うことを覚えたという事実。むしろ褒めてくれても罰は当たらない。
「で…終わったのかい?」
「ああ、なんとか」
僅かに笑って珈琲を飲む蓮。
一先ず、この大仕事を終わらせてくれたことに感謝するべきか。
「有難う、三人とも」
「いやいや。此方こそ有難う、出られない俺達の代わりに動いてくれて」
「半分は仕方なくさ。…それじゃ 会議だ。疑問が多すぎる」
そう言えば、どこからか現れたテオドア……と、見知らぬ女性たち。
理が「エリザベス」悠が「マーガレット」蓮が「ラヴェンツァ」と、それぞれ呟いた。
ベルベットルームにはワイルドの持ち主が招かれる。そう考えると、テオドアのようなポジションの…イゴールの従者は、もしかすると各ベルベットルームごとに居るのかもしれない。
そして私のベルベットルームでの従者がテオドアだった。…の、かも。
「ご質問には私達から答えさせて頂きます。
はじめまして チェイサー、トリックスター、トラベラー。
理様のベルベットルームにて我が主の従者を勤めております、エリザベスでございます」
「あー……端的に言うと理不尽な強さの裏ボス」
「理解」
「把握」
「了解」
エリザベスの自己紹介後に理………結城先輩が補足をしたが、その内容にはとても心当たりがある。
特にメギドラオン、お前は駄目だ。これは力を司る者共通の鬼畜さらしい。
私も何度か食らったことがある。そして現在進行形で苦しめられている。
おのれテオドアとベルゼブブ、許さんぞ。
そして悠のベルベットルームのマーガレット、蓮のベルベットルームのラヴェンツァ、最後にテオドアが自己紹介をして質問タイムに移る。
真っ先に手を挙げた。今回一番頑張ったのは私だ、これくらいの権利は与えられて当然だろう。
「私のペルソナが初期の初期に戻っていたね。あれは?」
「確かに、ヒノカグツチがカグツチだったな」
「あー…そういえば、アスクレピオスがヒュギエイアになってたね」
「…俺が知ってる白雪のペルソナが出されてないから全く分からないんだが」
カグツチを見て確認した悠、ヒュギエイアを確認した結城先輩はそれぞれ分かっているようだが、蓮は分からなかったようだ。
それもそうか、イヴは出していなかったから。
「…人理が焼却された、というのは知識として持っていますよね。端的に言ってしまえばそれの影響です」
ちらちらと目を合わせるベルベットルーム従者'sの中で、ラヴェンツァが口を開いた。
人理焼却。雰囲気だけでなんとなーく人類滅亡だと解釈しているが、それとペルソナが一体どんな関係を持つのだろう。
「ペルソナが“人との関わり”によって強化されることは、御存じですね?」
「ああ……“
「へえ、蓮の方だとそんな風に言うんだ。僕の時は普通に
「俺も
私は、活動部と捜査隊の時は
怪盗団の時は急にイゴールが「
「トリックスターの場合は
「…人理焼却は…まあ説明すると長くなるので、今まで通り人類滅亡と捉えていただいて構いません。
皆様方は、そして皆様方がこれまで築いた人との関わりは、人理焼却によって消え去りました」
「……うわ、最悪だ…」
「あれをもう一回…?」
「ピンポイントでペルソナ使い専用の弱体化機能ついてきているのか……」
「ははは……控えめに言っても最悪だねえ」
控え目に言っても終わってる。最悪のうちの最悪を引いている。
どうしてよりにもよって人理焼却でアルカナのコープやらコミュやらがリセットされるんだ。コープとかコミュを築くの、結構大変なんだぞ……!!
「つまりは…また該当者と、関わりを築かねばならないのかい?」
「はい。正確には、該当するクラスのサーヴァント、或いは該当する人物になりますが」
「……はー…白雪、頼めるか?」
「ふざけるのも大概にしておくれ…!」
元々人と関わることが好きじゃない、なんてことは十分すぎるほど知っているだろうに。 このコミュ力カンスト野郎どもが。
「……まあ、善処はしてみる。各アルカナに対応するクラスは教えて…貰えないか、流石に」
「相変わらず厳しい絆づくりだなぁ…」
静かに首を振ったテオドアに、こちらも首を振る。流石にちょっとくらいなら教えてくれてもいいじゃないか。
理不尽に弱体化されたのこっちだぞ。
「ええ、まあ…この程度しかお話できませんが。“愚者”のアルカナに対応するサーヴァントであれば、クラス
「……このメンバーの間で絆を?」
なるほど、愚者のアルカナに関してはここに残るメンバーに任せておけばいいのか。
しかし全く面倒だ。なんでよりにもよって私が、神話やら伝説やらに名を残した英雄たちと一対一で向き合って関係を築かなきゃいけないんだ。
蓮ほど面の皮は厚くない。悠ほど人誑しでもない。理ほど人の心に取り入る巧みさはない。
全ては__きっと、私が主人公でもなんでもない位置に甘んじてきた故のこと。分かっていても、それはそれとして嫌なのだ。
「…旅人。お時間です」
差し示された扉は、ほのかに青白く輝いている。ああ、お呼ばれか。
行きたくはないが、行くしかないだろう。林檎もカステラも無いだろうけど、行ってやろうじゃないか。
「…全く嫌だね、使いっ走りってのは。目玉が飛び出る程高い林檎で手を打とうか」
「ええ、勿論です。マイ・トラベラー」
できるだけ後ろは振り向かないようにして、扉を押した。
自分のサーヴァントとしてのデータは把握している。
呪いにも似たものを背負ったままで、何をどう救えと?
それだけが、唯一の気がかりだった。