世界救うのも四回目。 作:名も無き一人の望み
たのしいおちゃかい(わら)。
P3主人公=結城理、P4主人公=鳴上悠、P5主人公=雨宮蓮。遅ればせながら。
ハム子がいないのでテオドアは北原白雪に宛がっています。
北原は結城の2歳下でP3当時は高2と中3の関係性だったので先輩呼びしてます。
ただし敬語は今になってガラガラと音を立てて崩れ落ちているものとする。
自分に与えられた質素な部屋。
ベッドと簡易的な机を視界に収めながら、私は目を閉じる。
「…私は狭間の客人、認知世界の存在を知る者」
青い扉が、薄っすらと部屋の中央に浮かぶ。
「……お邪魔するよ」
ドアノブを引っ掴んで扉を開く。
そのままするりと、ベルベットルームに入った。
「お帰り、北原。どうだった?バレたか?」
「まさか。本物の白雪姫の霊基だって貰ったんだ、バレるわけが無いだろう?」
「他のサーヴァントの霊基も貰ったのか?」
「ああ。…スノーホワイトの他にヒュギエイア、ヤタガラス、ヒノカグツチ、イヴ、カイン、ユダだ。
アスクレピオスは来てくれなかったし、ヒュギエイアに“あのお方は放っておいた方が宜しいかと”なんて言われて止められたよ。カグツチはヒノカグツチに統合してくれたらしい。あとエドモン及び巌窟王は来なかった」
「…俺なら伊邪那岐大神、ということか……」
「僕だったらオルフェウスとタナトスとメサイアだね。」
「俺はアルセーヌとラウール…あとはサタナエルになるんだろうな」
「だろうね。」
椅子を引いて、四人で一つの小さな丸机を囲む。
用意されていたティーカップを手に取って一口紅茶を飲んだ。
「来てくれなかったアスクレピオスについて、ヒュギエイアからあまり情報を引き出せないのだけれど。
恐らくはサーヴァントとして、どこかで召喚される可能性があるんじゃないかな。私達が召喚されるサーヴァントと同じ霊基を持っていれば、こちらとしてもあちらとしても不都合だ。巌窟王も同じくね。」
「…ああ、確かに。限りなく同一人物に近い別人とは言え……か。」
「因みにどんな感じなの?自分の中に他人が居るって感覚は」
無遠慮にも踏み込んできた結城先輩を、じろりと睨み付けて。
この感覚を言語化しようと、空中をじっと見る。
埃一つ浮かばないこの空間で、見るものなんて天井か照明くらいしかないのだけれど。
「特に変わったところはないよ。強いて言えば、欲しいと思った情報が融合した他人の知っている範囲で分かるだけ。思考にノイズが入る感覚も、自分が自分でなくなる感覚も何も無い。」
「ラヴェンツァから聞いた話だが、英霊とはあくまで死んだ人間だ。
生きている人間…まあ、俺達にはそう干渉しないようにしてくれているんじゃないか?」
「…確かに、そうかもしれないな。」
「それは何とも、有難いね。だから今までの危機も救ってくれなかったのかな」
「場が凍るブラックジョークを言わないでおくれよ、結城先輩。」
人類が滅亡(ざっくり言うとそう)した今の状況なら力を貸すが、人類が生きている今は今を生きる人間でなんとかしろ、とでも?
そう言いたげに、結城先輩が嘲るように笑った。気持ちは分かる、分かるのだけれど。
一瞬でこのワイルド円卓(数名不在)が凍り付く発言は自重して欲しい、本当に。
ちゃんと考えてみれば、今まで起こった世界の危機は全て認知世界での事件だ。
英霊が認知世界に干渉できない、あるいは知覚していないのであれば、救えないのも当たり前。
むしろ何故私達が知覚し、干渉し、救えたか。こちらの方が可笑しい。
…まあ、それを理解した上で結城先輩は言葉を放ったのだろうけど。
私はともかく、案外直情的な蓮と全体的に鈍い悠には、場を和ませるジョークにはならなかった。
「というか、蓮。本気でやるのかい?」
「何をだ?」
「“円卓の愚者”だよ。アーサー王に怒られてしまえ。」
「俺は良いと思うんだが…」
「悠、君の所感は聞いていないんだよ」
結城先輩は我関せずと言わんばかりに肩を竦めた。でも君もノリノリだったこと、私忘れてないからな。
円卓名乗れるほど人数も居ないし、そもそもアーサー王ポジションをどうするんだ。
「俺、悠、理、白雪。あと明智を入れるか入れないかだな」
「アイツ居た?私 まだこのベルベットルームで見てないのだけれど」
「明智吾郎で合ってるなら、居るよ。居心地悪そうにしてた」
「だろうね……これでケロッとしてるなら、正直、精神の異常を疑うよ。」
まあ表面上ケロッとしていそうなのも、明智吾郎という人間ではあるのだけれど。
私は明智吾郎に対して無駄に解像度が高い。理由は不明。
アイギスもワイルド持ってなかった?と結城先輩に聞くと、「もうないよ」と返ってきた。何があったんだか知らないが、きっと何かがあったんだろう。
「……次からこの謎の会議、明智を招くのかい?」
「俺はそうしようと思っているが?」
「君のライオンハートと私のガラスメンタルを一緒くたにしないで欲しいね、全く!」
不敵に悪役の笑みを浮かべた蓮から目を逸らして、冷めた紅茶を一息に飲み干した。
「で……ああ、ペルソナの話だったかな。」
「クー・フーリン、世話になったな、本当……」
「わかる……」
「俺もだ……」
誰もが一回は通った道、ペルソナ:クー・フーリン。
物理攻撃辺りを得意とするペルソナだったか。私はあまり使ってないので覚えていないけれど。
「マハタルカジャからチャージしてミリオンシュートかマッドアサルトやるの、凄く強かったんだよなあ…………」
「疾風ハイブースタにコンセントレイトでガル系の威力上げられるのが、有難かったなあ…………」
「卓越した暗示力で補助のターン伸ばせたの、強かったなあ…………」
「思い出に浸るのは自由だけれど、過去の栄光を求めないでおくれよ」
ペルソナ合体しまくって、金が底を尽きた…とか笑えないからね。いや、割と冗談抜きで本当に。
「メディアは………チドリのペルソナって、メディアじゃなかったっけ、白雪。」
「……ああ、確かに。正確にはメーディアだったけどね。大方別表記か何かだろう…英雄譚には日本語の表記ゆれが付き纏うものだから。」
「エミヤ……エミヤって、聞いたことないな。」
「佐々木小次郎はいなかったな。あと、メドゥーサも。」
今回は事故らずに済んだ。良かった。
使用しているペルソナと、召喚されるサーヴァントが被ることを(円卓の愚者内で)(勝手に)“事故”と呼んでいる。
合体事故のノリで名付けるなとは思うが。
被った場合、カルデアにサーヴァントとして出向くことは不可能。
因みに、“ワイルド”持ちの場合は、その本人だけが扱えるペルソナ__例えば私だとヒュギエイアやスノーホワイト、蓮はアルセーヌやサタナエルが参照される。
進化前と後が同一存在であれば、たとえ名が違っても片方が事故るだけで一発アウト。
ヒュギエイアとアスクレピオスは娘と父の関係性なので、どうやらセーフだったらしい。なんだかんだ言いつつ私も結構な綱渡り召喚をされたようだ。
「…メーディア、もといメディアってギリシャ神話だよね?」
「そうだね。ヒュギエイアとアスクレピオスもそうだよ。
君のオルフェウスとタナトスもそうだ。メサイアは…どうだったかな」
「
「日本神話は大丈夫だろうか……」
メディアとメドゥーサはギリシャ神話。
私の霊基状態から、恐らくはアスクレピオスもどこかで出向いているのだろう。あとエドモンと巌窟王もいないのでこちらもどっかで出向く。
月光館学園__というか、活動部の時に出会ったペルソナ使いのペルソナは、大抵がギリシャ神話の登場人物の名を冠している。
……うーん、事故りそう。というか事故ってそう。
「…カルデアの物資も心配だな。」
「このベルベットルーム、焼却されていない世界に繋げられるだろ?
何かを通貨代わりにして、ここであっちの世界の通貨と両替すれば、俺達で買って来れるさ。」
「何度来て、何度見ても、底を尽きないポテトチップスがあると思ったら……それで入手してたのかい」
「新作ゲームも手に入るぞ」
「悠、流れるようにニート自慢をしないでくれるかい」
しかし、カルデア物資問題か。
私を召喚したときも、林檎は無い、カステラの材料は無い。無いものだらけでごめんと頭を下げられた記憶がある。
林檎はセルフで何故か持って来れるから別に気にしていないし、必ずしも好物を供えて呼べとは言っていないのだけれど。
「……オルガマリー・アニムスフィア辺りに、一回掛け合ってみようか」
「それがいいな。」
「この部屋のことは…まあ、秘密にしとくか。説明も面倒だろうから」
「部屋に入るのは君だけで頼みたいな」
注文が多いんだよ、と悪態をつきながら。
大きな丸机を囲んだ円卓の愚者のお茶会は、静かに過ぎて行った。
○ 円卓の愚者
提案は蓮、ノリノリで乗っかったのは悠と理。
巻き込まれる形で白雪、本人の預かり知らぬところで明智が巻き込まれた。
但しそう何人もいないし王ポジも居ない。
自分達の宝具を拘束したりするかもしれない。
○ 召喚事故
合体事故のノリで新しく出来た事故用語。
本人の英霊が存在し、本人に出向く意向がある場合、その英霊と同じ名を持つペルソナを持つペルソナ使いはサーヴァントとして召喚されないし、できない。
○ 『巌窟王』
本来の名はエドモン・ダンテス。認知世界(P5の頃)にて白雪の扱っていたペルソナの一体。
第二の固有ペルソナみたいなもの。進化してモンテ・クリストになっていた。
呪怨系と火炎系、物理スキルを主な攻撃手段とする。