Hellbound Echoes   作:ゲット虚無

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話が進むにつれてブリッツに対するヴェロシカの物言いに「まぁ、そりゃ言われてもしゃーないわ」と思う感情とブリッツお前もうちょい、他人に対して正直になりなよと心配してしまう心が二つある~~~


元カノ軍団との対決 中編

 

あの後、オスカーはテックスと別れて早々オフィスに入り仕事を始めた、モクシーの安否を心配しつつも、いつものように自分の業務をこなしていた。

 静かに書類の束を整理していたオスカーは、デスクに肘をつきながらため息をついた。

 

(……やっぱりな)

 

 そもそも、モクシーの「説得」がうまくいくわけがないのは最初から分かっていた。

 

 相手はサキュバス。話し合いで解決できるほど理性的な連中ではない。

 

 その結果——モクシーは逆に襲われかけた(性的な意味で)。

 

 当然、彼自身はそんな気は微塵もなかっただろうが、相手にとっては「説得」という言葉を「誘惑されに来た」と解釈したのだろう。

 

……まぁ、オスカーはそこまでの顛末を直接見たわけではないが、帰ってきたモクシーの疲れ切ったキスまみれの顔を見れば、大体のことは察せた。

 

「……で、どうなったんだ?」

 

 書類を整理しながらオスカーが尋ねると、一緒に帰ってきたルーナが呆れたような顔で答えた。

 

「ボスが決闘を申し込んだ」

 

「……決闘?」

 

「ええ、ヴェロシカ達に」

 

 オスカーは無言のまま、こめかみを押さえた。

 

(あのバカは……)

 

 結局、モクシーの交渉はまったく通じず、事態は決闘へと発展したらしい。

 

 ……いや、そもそも、駐車場の問題で決闘ってなんだ?

 

「くだらねぇ……」

 

 オスカーは大きくため息をつき、カップのコーヒーを口に運ぶ。

 

 そもそも、ヴェロシカ達は正式な契約のもとでこのビルを使っている。

 

 駐車場くらい譲ってやれよと、オスカーは思った。

 

 とはいえ、それをブリッツに直接言っても——

 

「絶対断る!!!!!! 嫌だね!!!!!」

 

 案の定、彼はまったく首を縦に振らなかった。

 

 頑固だ。バカみたいに頑固だ。

 

 オスカーは呆れた表情を浮かべながら、書類をデスクに置いた。

 

「お前な……1週間くらい我慢すればいいだろ?」

 

「無理!!!!!! 俺のプライドが許さないね!!!!!」

 

「はぁ……」

 

 またしても深いため息が漏れる。

 

 だが、すでに決闘は決まった後だった。

 

 問題は、その内容である。

 

 オスカーは興味なさげに尋ねた。

 

「で、その決闘とやらの内容は?」

 

 それに対し、ルーナはどこか面倒くさそうに説明した。

 

「地上が春休みになると、ヴェロシカ達は人間に化けてビーチに行って、乱交パーティーを起こさせてヤリまくるの。で、それ以上に人間を殺るのがI.M.P」

 

 オスカーはしばし沈黙した。

 

 そして、低く呟いた。

 

「……くっっだらねぇ」

 

 心の底からくだらないとオスカーは思った

 

(そもそも、サキュバスのやることなんてそんなもんだろう。いちいち防ぐ必要があるのか?)

 

「いや、普通に考えてみろよ」

 

 オスカーはこめかみを押さえながら言う。

 

「人間界のビーチでどれだけ人間をヤルか殺るか競い合うって?」

 

「決まっちゃったもんは仕方ないでしょ」

 

 ルーナが真顔で言う。

 

 オスカーはブリッツの方を見た。

 

「……本気なのか?」

 

「本気も本気よ!!!!!」

 

「……バカじゃねぇのか?」

 

「うっせぇ!!!」

 

 もはや話にならない。

 

 オスカーはもう何も言う気がなくなった。

 

 地獄の仕事に比べたら、人間の乱交パーティーなんてどうでもいい。

 

 だが、ブリッツはまったく譲らない。

 

▼△▼△▼▼▼

 

「よしケツ穴閉じろよお前ら、これが作戦だ。」

 

今、オフィスのホワイトボードの前に立っているブリッツの姿を見れば、それがどれほど無意味なものなのかは一目瞭然だった。

 

 ブリッツは勢いよくホワイトボードを叩いた。

 

 そのボードには、簡略化されすぎて意味を成していないブリッツ含む我々の絵と数字が並んでいる。

 

 "1. 大量の客を探す" —— そこには、適当に描かれた棒人間の群れ。

 

 "2. ポータルを開く" —— ルーナが魔導書でポータルを開いている絵

 

 "3. いつも通り殺す" —— 血まみれの棒人間が倒れている絵。

 

 "4. 死体をカヌーに積み込み、水上に押し出し火を着け死体をサメやガチョウに食わせる" —— 死体の周りに"サメ"と"ガチョウ"がカヌーを囲んでいる図。

 

 "5. あのビッチ(ヴェロシカ)にファッキューサインを見せつける" —— ヴェロシカの絵の横に、全員が立てた中指とブリッツの描いた大きな"F◯CK YOU"の文字。

 

「それじゃ、質問は?」

 

 ブリッツは得意げにボードを指しながら、腕を組んだ。

 

 しかし、オフィスの面々は誰も言葉を発しなかった。

 

 ……いや、むしろ "言葉を失った" という方が正しいかもしれない。

 

 最初に沈黙を破ったのは、モクシーだった。

 

「アッハイ。では、それは作戦じゃない」

 

「それは質問じゃない」

 

とブリッツは顔をしかめる。

 

 オスカーはと言うと顔を引きつらせながら、しばしボードを凝視し、ブリッツへ向き直った。

 

「そもそも...いやホントに、そのお粗末な作戦が成功するって? おいブリッツ、お前チェスとかやったことないだろ?」

 

 オスカーの指摘に、ブリッツは一瞬ムッとしたような表情を浮かべる。

 

「はぁ!? これが最高に理論的な作戦だろ!? なんだよオスカー、お前のチビった脳ミソじゃ理解できねぇのか!?それと言っとくがチェスなら毎回王手を出してるよ!!!」

 

 オスカーはこめかみに指を押し当て、深々と息を吐く。

 

「...そりゃ将棋だじゃない、こう色々と曖昧すぎるんだよ.....お前、ただの思いつきだろそれ?」

 

「……はぁ?」

 

「1. 客を探す? 2. ポータルを開く? 3. 殺す? おい、作戦の大部分が"いつもの仕事"じゃねぇか」

 

 ブリッツはぐっと言葉に詰まりながら、口を開いた。

 

「いや、でもな!! その後が大事なんだよ!!! 4と5が重要なフェーズなんだよ!!!」

 

「"4. 死体をカヌーに積み込み、水上に押し出し、サメやガチョウに食わせる"……?」

 

 オスカーは目を細める。

 

「そうだ!!!!」

 

「なんでガチョウ?」

 

「強ぇだろ!!??」

 

「……………」

 

 もう、何も言えなかった。

 

 モクシーもオスカーも、ブリッツの"作戦"がどれだけ滅茶苦茶かを理解した上で、それでもなお、どうツッコめばいいのか分からなくなっていた。

 

 すると、奥でスマホをいじっていたルーナが、やや興味なさげに口を開く。

 

「……てかさ、"5. あのビッチの顔にファッキューサインを見せつける"ってさ……これ必要?」

 

「必要だろ!!!???」

 

 ブリッツが即答する。

 

「これが一番の重要ポイントだ!!!!!」

 

 オスカーは静かに机に肘をつきながら、もう一度ため息をついた。

 

「……で、結局何がしたいんだお前は?」

 

「だから言ってんだろ!? ヴェロシカをギャフンと言わせるんだよ!!!」

 

「くだらねぇ……」

 

 オスカーは再びボードを見た後、ブリッツをじっと睨みつけた。

 

「なぁ……俺は言ったよな? 一週間くらい我慢しろって」

 

「絶対ヤダ!!!!!」

 

「……ハァ」

 

「ああ、そうだ。今回は私も行っていい?」

 

ルーナがブリッツにそう告げた。

 

「絶対にダメだ、無理、悪いが許可できない。春休みは乙女には危険だ!分かるだろ!!!変態共がヨダレを垂らして見てるんだ!!!!絶対!!!!」

 

その瞬間、オスカー含むI.M.Pの全員が我々(読者)を凝視した。

 

ハッキリ言って滅茶苦茶、心外である。

 

「ハァ...私は人に紛れるのは得意よ?同行させて?」

 

「は?待て、スマンもう一度言ってくれ?」

 

「私 は 紛 れ 込 め る」

 

ミリーがその言葉に反応する。

 

「人間に変身できるの?」

 

「えぇ、貴方達は?」

 

ブリッツ、モクシー、ミリーはその言葉に押し黙る。

 

「じゃあ何? 三人とも、いつも無茶してた訳?人間に変身もせずに!?」

 

ルーナはその事実にキレる。

 

ちなみにオスカーはその事を薄々分かっていたが改めて考えるとかなりの無茶である。

 

「よし、じゃあ新しい計画だ。ルーニーが人間を誘い、俺達が始末する。これでどうだ」

 

「そうね、あとオスカー。アンタもついて来なさい」

 

ルーナはオスカーにそう告げた。

 

「は?なんで」

 

「アンタ、仮にも上級悪魔なら人間に変身するなんて簡単なことでしょ?作業ももっと効率的になるじゃない。だからよ」

 

「いや、行かねぇよ.....そもそも俺には仕事が」

 

とパソコンの画面を見せるオスカーに対して

 

「い・い・わ・ね?」

 

とルーナは歯を剥きだしにしてオスカーの顔ギリギリまで詰め寄った。

 

「アッ....ハイ」

 

(こいつ、テックスに惚れてた様子あったけど、まさかそれ狙いじゃねぇだろうな?うわ、じゃあなんだ? 俺は友人に同僚を紹介するハメになんのか? 勘弁してくれよ)

 

——結果、ルーナとオスカーが人間を誘い、ブリッツ達がそれを始末する という作戦となった。

 

だがしかし、それでもまだ見落としはある。

 

そう、大量の客の殺害 である。

無差別に人間を皆殺しなんてできる訳がない。

 

流石にバレればオスカーの持つ権力でもどうにもならない。

 

「俺に良い考えがある」

 

「おい、それ良い考えじゃない時に言う台詞だろ、知ってるぞ」

 

ブリッツが出した案とは……。

 

『50%半額セール!!!皆来てね!!!』という張り紙をビルの入り口に張ることだった

 

— 結果。—

 

会社の前に大勢の罪人たちが依頼の為に賑わっていた。

 

オスカーは思った。

 

(やっぱり終わってるわここ……)

 

▼▼▼▼▼

 

 そこにいるのは、普段の彼とはまるで異なる姿のオスカーだった。

 

 鏡に映るのは、まるで地獄の業をすべて削ぎ落としたかのような人間の青年。

 

 黒髪はやや短くなり、適度なクセがつき、肌は青白さを失い、健康的な色を帯びていた。

 服装も地獄での暗く重厚なスタイルとは違い、白のボタンシャツを無造作にまくり上げ、開いた襟元から適度に肌を見せている。

 

 だが——

 

 唯一、変わらないものがある。

 

 燃えるような紅い瞳。

 それは、まるで血の色を宿したかのような不気味さを秘めながらも、"禍々しさ"は和らいでいる。

 

 瞳の奥にあるのは、かつての記憶の名残か、それとも悪魔の狡猾さか。

 それすらもオスカー自身、定かではなかった。

 

 指先で口元を撫でる。

 

 右目に縦に刻まれた傷跡は、奇妙にも消えていた。

 

 まるで"普通の人間" にしか見えない姿——

 

 彼は一瞬、自分を懐かしむように目を細めた。

 

(……これが、生前の俺か?)

 

 ぼんやりとした記憶の奥底に、何かが霞んでいる。

 だが、それを掘り起こそうとはしなかった。

 

「……久々に変身したな」

 

 呟きながら、軽く笑ってみる。

 

 まるで人間のような微笑み。

 

 だが、それは仮初めのものに過ぎない。

 

 オスカーは肩をすくめると、軽く襟を整え、サングラスをかけた。

 

「……行くか」

 

 冷めたように、だがどこか面倒そうに言い放ち、

 彼はゆっくりとビーチへ向かって歩き出した。

 

 灼けつくような日差しが、白い砂浜を照らす。

 波が打ち寄せ、カモメが鳴き、人間たちの笑い声があちこちから聞こえてくる。

 

 —— 地獄の喧騒とは違う。

 

 —— 血の匂いも、死の気配もない。

 

 オスカーは人混みの中を歩く。

 

 "普通の人間"として。

 

 ボタンシャツの袖を無造作にまくり、日差しを浴びる肌を見せる。

 腕には無数の傷跡が走っているが、それもまた"ワイルドな男"といった印象にしかならない。

 

 周囲の視線を感じた。

 

 何人かの女たちが、興味ありげにこちらを見ている。

 —— いつものことだった。

 

「ヘイ、君、見ない顔ね?」

 

 オスカーの足を止めたのは、金髪の女だった。

 隣には、ポニーテールの女と、少し酔ったような赤い顔の女。

 

「……ああ、ちょっと観光でな」

 

 オスカーは気怠げに返しながら、軽くサングラスをずらした。

 

 その瞬間、"紅い瞳" がちらりと覗く。

 

「へぇ……アンタ、雰囲気あるわね」

 

 ポニーテールの女が、指先でオスカーの腕の傷をなぞる。

 彼は微かに笑い、適当に流す。

 

 まるで地獄の住人とは思えない自然な動き——

 

 だが、それは"誘い"だった。

 

「なぁ、君たち、もう少し静かなところに行かないか?」

 

 オスカーの言葉に、女たちは顔を見合わせる。

 

「……ふふっ、アンタ、意外と大胆なのね?」

 

「さぁ……どうだろうな」

 

 オスカーは薄く微笑み、さりげなく歩き出す。

 そして、彼女たちを人気のない岩場へと誘った。

 

 その時——

 

「ようこそ!!!! 尻軽ビッチ共!!!!!」

 

 不意に、影の中から ブリッツの声が響いた。

 

「え?」

 

 次の瞬間——銃声が鳴り響く。

 

 一瞬のうちに、 "ターゲット達" は倒れた。

 

「ヘッ、楽勝じゃねぇか!!」

 

 ブリッツが楽しげに銃を回す。

 

「……やれやれ」

 

 オスカーは肩をすくめながら、その光景を眺める。

 自身の手は一切汚さず、ただ"狩りのための餌"を用意しただけ。

 

 彼は一瞬、薄く笑う。

 

(……人間の皮をかぶった悪魔が、人間を狩る ってのも皮肉な話だな)

 

 そう思いながら、彼は振り返ると 静かにその場を後にした。

 

「よし!!いい調子だな.....にしても」

 

「あっ、なんだよ?」

 

「オスカー、お前、その姿でルーナに言い寄るんじゃねぇぞ?」

 

オスカーは呆れたように鼻で笑う。

 

「アホか、そもそもルーナはテックスに惚れてる.....あっ、やべ」

 

しまった、口を滑らせた。

 

 ブリッツの表情が一瞬で変わる。

 

「なんだって?ウチの娘が?ウチの可愛いルーニー♡があのゴリラ犬に惚れただぁ!!!!!!!!!!!???????」

 

すぐさま、ブリッツはオスカーの胸倉を掴み、激しく揺らした。

 

「だぁーー落ち着けって」

 

「これが落ち着いていられくぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

「お前が心配するようなことは起きねぇから安心しろっての.....」

 

オスカーは懐から煙草を取り出し、火を点ける。

 

「なんでだ!!!!!!!!!」

 

「ハァ....アイツ(テックス)には恋人がいるからだよ。しかも相手は原初の悪魔だ」

 

「あ.....なんだって?」

 

ブリッツはその言葉にポカンとした表情になる。

 

「本当だっての.....昔アイツに紹介されたんだよ。ほら、彼女は七つの大罪の暴食の悪魔、名前はクイーン・ビー ゼブブ。良いやつだったよ」

 

オスカーはスマホを取り出し、画像を見せる。そこにはオスカー、テックス、クイーンビーがにこやかに笑い合ってる写真が写っていた。

 

「ほっ、そうか......」

 

「どうせ後でルーナにテックスの事を紹介しろって言われると思ってたしな。元々あいつに説明する気だったんだよ」

 

そのオスカーの言葉にブリッツは安堵する。

 

「ハァ.....そもそもだ。アイツはもう22だ...別に恋人が出来ても構わねぇんじゃ.....」

 

「絶対に許さん!!!!!!!どこの馬の骨とも分からんやつなら尚更、許すか!!!!お父さんは絶対に許しませんからね!!!!!!!」

 

「この親バカインプが.......」

 

オスカーはブリッツの言動に困惑するしかなかった。

 

 

▼▼▼▼▼

 

 順調かと思われた、この勝負。

 

 しかし、それは束の間の幻想に過ぎなかった。

 

 ヴェロシカの甘い歌声がビーチの空気を支配し、男たちは彼女に魅了され、まるで催眠にかかったかのように理性を失いかけていた。

 

 彼女の声に含まれた"サキュバスの力"が観客の精神にじわじわと染み込み、今にも"おっぱじめよう"とする男たちの群れがそこかしこに生まれていた。

 

「あー……そうだった。ヴェロシカは、歌姫だった」

 

 オスカーは軽く頭を掻きながら、遠くのステージで妖艶に踊るヴェロシカを見やった。

 

 正直、どうでもいい。

 

 いや、"どうでもいい"わけではないが、"自分が動くほどの事態ではない"というのが正直な感想だった。

 

 なぜなら——

 

 こんな小手先の催眠程度、オスカーなら"指を鳴らすだけ"で解除できるのだ。

 

 当然だった。

 

 サキュバスの力など、オーバーロードの力とは比べるまでもない。

 

 例えるなら、人間とアリのような差。

 どれだけ群れても、"強者"の前では無力。

 

 それでも、オスカーはそれをしなかった。

 

 いや—— する気がなかった。

 

 (まぁ……公平じゃねぇよな)

 

 彼は軽くため息をつき、ポケットから煙草を取り出す。

 

 上級悪魔としての力を使えば、この戦いなど"瞬殺"できる。

 サキュバスの影響など、一瞬で打ち消せるのだ。

 

 しかし、それでは"ゲーム"にならない。

 

 これはブリッツたちの勝負だ。

 彼らがどこまでやれるのかを見守るのもまた、一興。

 

 オスカーはゆっくりと煙を吐き出しながら、少しだけ微笑んだ。

 

 現在のブリッツはその事に憤慨し、標的の人間狩りをモクシー達と勤しんでいる。

 

『おいオスカー!!!』

 

『アイツ(ボルテックス)が安全なのは分かったが!!"万が一"ってのがある!!二股する可能性がねぇか、お前見張ってろよ!!!』

 

『てめぇ、俺の友人をなんだと思ってんだ。いい加減怒るぞ?』

 

『……だってよぉ……あんなムキムキで、イケメンで、完璧なヤツ……信用できねぇだろ!!!』

 

『この親バカは......』

 

 

.....そして現在。

 

「……あーテックス、彼女はルーナだ。ルーナ、ボルテックスだ」

 

 ビーチの片隅で、オスカーは適当に二人を引き合わせた。

 テックスは落ち着いた雰囲気を持ちながら、穏やかに微笑んだ。

 

「ボスの元カレの部下の子だったよな? やぁルーナ、俺はボルテックス。友人は俺をテックスって呼んでる」

 

「えぇ……うん。えっと……ハァイ私はルーナ」

 

 明らかにぎこちない。

 

 ルーナはわざとらしく髪をかき上げ、微妙な笑顔を浮かべた。

 

「その……えっと……私たち、会うのは今朝ぶりよね!!HAHAHA!! それにしても今日はいい天気ね!!!」

 

これは酷い

 

場違いなまでの異様なテンションと話の振り方にオスカーはこめかみを押さえながら、軽く頭を振った。

 

(マジか……ルーナの奴)

 

 ちらりとボルテックスを見る。

 彼は困惑しつつも、なんとかリアクションを取ろうとしていた。

 目が明らかに「え? 俺、どう反応すればいいの?」と言っている。

 

(見ろよテックスの顔……完全に戸惑ってるだろ、アレ。おいテックスこっちを見ないでくれ。俺もどうすればいいか分からねぇよ。)

 

 心の中で叫びながら、オスカーはもう一度ため息をついた。

 

 今ここで、オスカーの中の"天使"と"悪魔"が口論していた。

 

天使は言う

「ここは男として、ルーナにテックスには彼女がいることを伝えるべきだろう」

 

悪魔は言う

「いや待て、それを言ったら絶対に場が気まずくなるだろ?。面白いから黙ってろ」

 

 結論——どう転んでも面倒くさい。

 

 オスカーは数秒悩んだ後、ゆっくりと煙を吐きながら静かに思考をまとめた。

 

「あー……なぁ、ルーナ」

 

「な、なによ?」

 

 オスカーはゆっくりと目を細め、口角を少しだけ上げた。

 

彼が出来る最大限の慈しみを持った眼差しと笑顔を作りルーナに見せる

 

「……お前、テックスには彼女がいるって知ってるよな?」

 

 —— 静寂。

 

 ルーナの笑顔が、ピシッと固まった。

 テックスは「おいおい……」という顔でオスカーを見ている。

 

「……」

 

 数秒の沈黙の後——

 

「はぁぁぁぁぁ!!!!????????」

 

 ルーナの叫びが、ビーチ中に響き渡った。

 

 こうして、オスカーのちょっとした"気遣い"は、余計な混乱を引き起こしたのだった。

 




 
......こいつも人の事言えないくらいのバカ野郎である
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