Hellbound Echoes   作:ゲット虚無

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「Loona」の日本語表記って「ルーナ」と「ルナ」のどっちなんでしょう?



留守番組の二人

 

 オスカーは、いつものようにデスクに向かい、帳簿の整理に没頭していた。

 

 I.M.P.の経理担当になって数年が経つが、未だにこの仕事は「戦場」のようなものだった。ブリッツの無駄遣い、モクシーとミリーの予想外の経費、そして謎の追加請求書——そのすべてを管理し、数字の辻褄を合わせなければならない。

 

「……んで、今月もマイナスか」

 

 オスカーは冷めかけたコーヒーを一口啜りながら、深々とため息をついた。

 

 どれだけ節約を呼びかけようと、ブリッツの「経営センス皆無」は変わらない。

 

「馬鹿野郎!!モクシー!!! ◎△$♪ ×¥●&%#?!」

 

 ブリッツの叫び声が別室から聞こえるがオスカーはそれをガン無視していた。

 

(……クソッ、もうちょい削れる経費は……)

 

 そう思案していると、ふと鼻をつく異様な臭いを感じた。

 

「……ん?」

 

 焦げ臭い。

 

 微かにではあるが、明らかに何かが燃えている臭いがする。書類から顔を上げ、周囲を見渡す。

 

 その瞬間——

 

「オスカー!! 大変です!! 火事です!!」

 

 唐突にモクシーが部屋の扉を開け、そう叫んだ。

 

 オスカーの思考が止まる。

 

 振り向くと、煙が部屋中を包み込んでいた。

 

「……は?」

 

 ほんの数秒前まで、平穏(と言ってもI.M.P.の基準での話だが)だったオフィスが、今や地獄の業火に包まれようとしている。

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 

「………………なんで依頼者と話してただけでこうなるんだよ」

 

 外へ避難しながら、オスカーは頭を抱えた。

 

 何がどうなったら、依頼人との会話がオフィス全焼に繋がるのか。地獄の論理は理解できても、I.M.P.のトラブル頻度だけは理解不能だった。

 

 とりあえず、駆け付けた消防隊のおかげでビル全体が燃え尽きることは避けられたものの、オフィス内部は全焼。

 

 しかし、これは、どう考えても最悪である。

 

「失敗したら初回無料だなんていつ始めてんです?」

 

 モクシーがブリッツに尋ねる。

 

「HAHA、お前がクライアントの前で火をつけた時に決まってんだろうがクソが!!!」

 

 ブリッツがモクシーにブチ切れるが、それ以上に——

 

「こ”っ”ち”は”そ”れ”以”上”に”大”事”な”書”類”や”パ”ソ”コ”ン”が燃えちまったんだよ!!!!!!!」

 

 オスカーの怒声が響き渡る。

 

 ブリッツの胸倉をつかみ、ぐわんぐわんと振り回す。

 

 結局、魔導書自体はルーナが回収していたため、ブリッツ達はそのまま魔導書により展開されたポータルをくぐり、仕事へと向かった。

 

 オスカーとルーナだけが、その場に残る。

 

「……どうする?」

 

 ルーナがスマホを弄りながら尋ねる。

 

「……アンタにやれることは何もないんでしょ? 今?」

 

「おかげさまでな!!!!」

 

 オスカーは叫びながら、再び頭を抱えた。

 仕事ができない経理担当ほど、無意味な存在はない。

 

 ブリッツが帰ってくるまで、何をして過ごせばいいのか.

 

「……ハァ、とりあえず暇潰しに行くしかないでしょ」

 

 ルーナがスマホをポケットに突っ込み、歩き出した。

 

「行くって、どこに?」

 

「さぁ.喫茶店とか?」

 

 オスカーはしばし考え、ため息をつきながらルーナの後を追った。

 

 △▼△▼△▼△▼

 

 — 地獄のとある喫茶店の午後 — 

 

 オスカーはルーナに連れられ、いつものオフィスとは違う静かな空間にいた。

 

 地獄の喧騒とは無縁の、落ち着いた雰囲気を持つこの喫茶店。常に混沌とした世界にいるオスカーにとっては、異質なほど静かだった。

 罪人たちも、この店では騒ぐことなく、ただ飲み物を楽しんでいる。

 

 ルーナはスマホを弄りながら、適当に席を選ぶ。

 

 オスカーはその向かいの席に座った。

 

「……お前、こんなとこに来るのか?」

 

「別に。たまに、ね。ブリッツのバカに付き合ってると、うるさくて頭痛くなるし」

 

 オスカーはコーヒーを頼み、ルーナはアイスティーを注文した。店内に流れるジャズのような音楽と、時折響くカップの音だけが耳に残る。

 

 しばらくの沈黙の後、オスカーはぼんやりと窓の外を眺めながら、カップの縁を指でなぞる。

 

「……なんか、こうやってゆっくりしてるのも悪くはないな」

 

「……アンタって、意外と落ち着いた時間好きだよね」

 

「好きっていうか、仕事が常に戦場みたいなもんだからな。たまにはこういう時間も必要だろうよ」

 

 ルーナはスマホの画面から視線を外し、オスカーをじっと見た。

 

「……まあ、確かにね」

 

 そして、ふと.

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「……しばらく休めば?」

 

「……は?」

 

 オスカーはルーナの言葉に思わず聞き返した。

 

「いや、だから。ブリッツ達が帰ってくるまで、どうせ仕事できないんでしょ? だったら、少しくらい休めば?」

 

「……休みねぇ」

 

 オスカーはカップを回しながら、少し考え込んだ。

 

「……お前、珍しくまともなこと言うな」

 

「はぁ?」

 

「いや、お前は普段『うるさい』か『邪魔』とかしか言わないだろ」

 

 ルーナは呆れたようにため息をついた。

 

「……それじゃあ、今は素直に受け取れば?」

 

 オスカーは少し笑いながら、コーヒーを一口飲む。

「……そうするよ」

 

 地獄の喫茶店の午後。仕事も、怒鳴り声も、ブリッツのバカな言動もない静かな時間。

 

 たまには、こんな時間があってもいいのかもしれない。

 

 一方、地上《人間界》では.

 

『ケガしてるわね~~小悪魔?』

 

『約束するわ~~痛いのは一瞬だけ! マーサに姿を見せて~』

 

 実は今回の依頼された標的である人間、マーサは猟奇殺人鬼一家の一員であり

 

 つまりブリッツ達はピンチとなっていたのだった。

 

「ファック!!!!!!!!」

 

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