件名  Re:特定希望美少女   作:さかな

3 / 4
件名  Re:始まり

 

『あ』

 

祭りの準備期間は死ぬ程愉しい。何かを妄想する事が楽しい事は随分前から学んだ事だ。結局、何かを実行するよりもあんな事良いな、出来たら良いなって考えてた方が楽しいと大人は言う。

 

声優になるなんて言う幻なんか見ないで、安定で安心した公務員になれ。それがアンタの為になるんだからと、口を酸っぱくして親はまるでゲームのNPCの様に繰り返す。

 

それでも人間は愚かな生き物だから。少しの可能性があれば深追いするし、なんでもしてしまう。

 

「アンタなんか産むんじゃなかった。死んで仕舞えば良い!」

 

『ふふっ』

 

一人暮らしする為のお金を少し出して欲しいと言っただけでそれだ。自分のパチンコ代が減るのがよっぽど嫌だったんだろう。お望み通り、貴方の娘は死んだ。これからは──。

 

『特定希望美少女としての人生が始まる……んだけど』

 

まぁ、これからか。取り敢えず、もう一人は来る予定だし。

 

こうして、私はネットの世界で生きていく。名前を持たない私は誰かに見て欲しくて、誰かに名前を知って欲しくて。そして、私が誰だか君達に教えて欲しくて。

 

『まずは自己紹介と行こうか。私、いやボク?まぁ、どっちでも良いか。私は特定希望美少女。これからよろしくね』

 

空に向かって病的に白く長い手を伸ばす。そしてそれは、何かを掴む前に空を切り。

 

まるで現実を思い出したかの様に。そしてそれは現実を否定するかの様に。

 

そこで"特定希望美少女の紹介PV"は終わった。

 

 

 

 

 


 

328:暇なオタクの速報

突然現れた特定希望美少女ちゃん可愛くね?

 

329:暇なオタクの速報

パチンカスな家庭って子供より自分を優先するクソ親って言うリアルな設定を入れつつ、整った顔面でまた現実離れさせるの好き

 

330:暇なオタクの速報

この事務所聞いた事も無いけど大丈夫か?

 

331:暇なオタクの速報

調べたけど、結構小さい事務所っぽい。配信者は今のところ特定希望美少女ちゃんだけっぽい?だけど、紹介PVで言ってた通りメンバーの所に意味深に???って書いてあるからもう一人入れるっぽいな。最初は二人体制でやって行く感じかな?

 

332:暇なオタクの速報

事務所の名前は?

 

333:暇なオタクの速報

disqualification

 

334:暇なオタクの速報

正直、闇に手を伸ばす仕草は俺の厨二心に琴線がかかった。あの演出考えた奴は絶対オタク

 

335:暇なオタクの速報

また推しが増えるのか

 

336:暇なオタクの速報

生活に彩りが出来て良いじゃないか

 

337:暇なオタクの速報

そう言われればそうなんだだけどさ、お金がねえ

 

338:暇なオタクの速報

 

339:暇なオタクの速報

そう言う訳じゃなかったのに

 

340:暇なオタクの速報

 

341:暇なオタクの速報

そんな君にア●ム

 

342:暇なオタクの速報

まだ分からないし、先の事は先回し

 

343:暇なオタクの速報

お、あの漫画アニメ化するってさ

 

344:暇なオタクの速報

うわ、制作会社あそこかぁ。PVは良さげだけど、担当しているもれなく延期、制作中止だもんなぁ。出来は良いんだけどね

 

345:暇なオタクの速報

ガチで特定しそうな行動力があるバカが出ないか心配

 

346:暇なオタクの速報

凸待ち誕生日記念枠でリア凸する奴が見える見える

 

347:暇なオタクの速報

見えちゃダメなんだよなぁ

 

348:暇なオタクの速報

まぁ、そこは運営とかがしっかり守ってくれる事を期待するしか無いな

 

349:暇なオタクの速報

その為の事務所だもんな

 

350:暇なオタクの速報

にしても、デビューいつなんだろう。書いてなかったよね?

 

351:暇なオタクの速報

近日公開って書いてあったから多分近い内とは思われる

 

352:暇なオタクの速報

その日まで生きてますか、クソッタレな現実ですけど

 

353:暇なオタクの速報

はぁ、仕事嫌だあ

 

354:暇なオタクの速報

そろそろ寝ますかね

 

355:暇なオタクの速報

紹介PVが十万再生ってどうなの?

 

356:暇なオタクの速報

充分成功だと思う。これが大手の事務所だったら話は違うけど、此処は違うからな

 

357:暇なオタクの速報

成程

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

深夜に電話が鳴る。目を擦りながら、チラッと見えた名前に無意識に出てくる舌打ちを押し込み。テンションを上げる。

 

『はいはい。シャチョーさんじゃないですかー。どうしたんですか?こんな時間に。遂にザギンでシースー?ですか?いやそれどころじゃないって分かってますって』

 

『テンション高い?そりゃあそうですよ。だって、これから特定ちゃん(わたし)がデビューするでしょ?それにもう一人の子も。それってつまり友達が出来るって事でしょ!しかも、聞いた話と同年代!』

 

コミュ障インキャな私でも仲良くなれますかねと話を続ける。そんな私にシャチョーはその必要は無い、と言った。

 

『え、その話は無かった事に?いやいや、そんな事言われても近日公開って言っちゃってますし、匂わせもしてますよ?どうすんですか?』

 

『はい、はい?いやいや、分かりませんよ。分かりましたって言う訳ないでしょう?そんな事。いや、ちょっと待ってください!おやすみなさいじゃないですよ。ねぇ!』

 

こうして、私はネットの世界に生きる事になった。それは決して簡単な事では無い事は分かっていた筈だった。

 

でも、デビュー前に同期が消えて。

 

『私が二人分やれ(演じろ)とかイカれてない?あのシャチョー』

 

日にちズラしてでも雇えよ。なんで私が一人二役でやらなきゃいけないんですか!?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。