最近の俺はもっぱら料理をしてばかり。
理由はと言えば簡単で、実家から送られてきた大量のサツマイモを消費するためだ。
サツマイモ自体は毎年のことなのだが、担当ウマ娘が増えたなんて話を母親に伝えたからか今年はやけに量が多い。
勿論ありがたいとは思うが、トレセン学園に通うウマ娘はただの学生ではなくアスリートやアイドルとしての側面も大きい。
いくら健啖家が多いと言えども、ほいほい食べさせるわけにはいかないのだ。
とは言え、腐らせるわけにもいかず。
どうするかと悩んだ結果思い付いたのが、しばらくの間食後のデザートやトレーニング後の糖分補給などで自分で調理したものを担当ウマ娘の三人──ルビー、スカーレット、カレン──に食べてもらおうという安直な発想。
味だけでなく、カロリーなども計算して飽きないように毎日レシピとにらめっこしていたお陰か三人からとても好評で、カレンがウマスタにそれらを食べている写真を投稿してからは欲しいと言ってくれる中央トレセンの人たちの分も作っている。
お陰で消費スピードも上がり、腐らせることもなく食べきることが出来そうだ。
早朝のトレーナー室で一人、鼻唄を歌う。
まだしばらく誰も来ないだろうし、レース映像でも見ようか──
「おはよう!!トレーナー!!」
「おわっ!?お、おはようスカーレット」
勢いよく扉を開き、肩で息をしながら入室してきたスカーレット。
耳は絞られていないが、顔を見るに若干不機嫌そうな様子。
「どうしたんだ?スカーレット。そんなに急いで」
「……って言われたの」
「──?もう一回言ってくれるか?」
「だから!ウオッカに『お前最近太ったんじゃないか』って言われたの!!」
怒りからか恥ずかしさからか、顔を真っ赤にしたスカーレットは両手を握りしめ歯を食い縛っている。
俺の目からみたら変わりはないように見えるんだが、やはりライバルからしたら少しの違いでも分かるのだろうか。
「原因はきっと俺のサツマイモだよな……。申し訳ない、完璧に計算できてたつもりだった」
「違うのよ……。アタシが食べ過ぎたのよ……」
手で顔を覆い、小さな声で喋るスカーレットはより一層顔を赤くしている。
言われてみれば、確かにルビーやカレンは自分たちでも量の調節をしていたような。しかし、ぱくぱくと美味しそうに食べるスカーレットに俺が椀子蕎麦の如くサツマイモを与えてしまった日があったのも事実。
「いや、美味しそうに食べるスカーレットが可愛くて沢山あげてしまった俺にも責任がある。一緒にどうするか考えよう」
「……んんっ、良いわ今回はお互い様ってことで。それでどうするの?」
まだ顔は赤いが、気を取り直すように髪を払うスカーレット。
表情もいつもの自信に溢れたものになってきた。
「じゃあ、まずは体重を──」
「じ、自分で量ったから!」
「なら、どれくらい増えたのか教えてくれるか?」
「……い、いや!とりあえず増えてたの!それでいいでしょ!?」
「……そこまで言うなら分かったよ」
思春期の女の子なのだ、しょうがない。
体重が増えたことを相談しに来てくれたんだから良しとしよう。
「それじゃあ身長とスリーサイズは測った?」
「測ってないけど……普通にダイエットすればいいじゃない」
「いやいや、君たちは成長期なんだから体重が増えたと言ってもいろいろな理由が考えられるんだよ」
「……それもそうね」
とは言ったものの、俺がスリーサイズを測るわけにはいかない。特にバストに関しては。
保健室に行くしかないか──
「おはよう☆お兄ちゃん♪スカーレットちゃん♪」
「御二人とも、御早う御座います」
「おはよう二人とも。良いタイミングで来てくれたよ」
「何かあったの?」
「実は──」
俺は二人に説明を始める。
途中からスカーレットがまた顔を赤くしてしまったが無事説明を終え、そう言うことならと納得してくれた二人にスカーレットを任せ、俺はトレーナー室から退室した。
正直少し体重が増えた程度なら、トレーニング量を少し増やしてデザートを食べるのをしばらく控えればウマ娘の代謝ならすぐに適正体重に戻せると思うけど……。
スカーレットの様子だと少しでは無かったんだろうなあ。俺も反省しなくては。
一人反省会をしながら待つこと数分。カレンに呼ばれトレーナー室へと戻ると、スカーレットはルビーに頭を撫でられながらソファに座っていた。
「結果はどうだったんだ?」
「それがね~」
「スカーレットさんの身長、ウエストは共に大きな変化はありませんでした」
「そっか……ん?じゃあ、体重が増えた原因は」
「はい、バストとヒップのサイズが──」
「言わないで下さい~!!」
しっぽをソファに叩きつけながら言葉を遮るスカーレット。
またもや顔を赤くして、今日のスカーレットの血流は忙しない。
「良かったじゃないかスカーレット。太ったわけじゃなかったんだろ?」
「そうだけど!早とちりして皆に心配かけたのが恥ずかしいのよ!!」
「そんなこと気にしなくて良いのに」
「ええ、私達は一蓮托生──チームなのですから」
ルビーとカレンに慰められ、落ち着いてソファに座り直すスカーレット。
なんにせよ、これで一件落着か。
一息ついて、時計を確認する。今日は朝から大騒ぎだったな。
「──ところで~カレンもちょっと体重が増えた気がするな~」
「え?でも、カレンは自分で──」
「スカーレットちゃんは疲れてるだろうし~、ルビー先輩にやって貰うのも悪いからお兄ちゃんに測って欲しいな☆」
「いやいやいや、あのなカレン」
「──ルビー先輩はどうです?」
「そうですね。担当するウマ娘の身体を自らの手と眼を用い把握する事は、トレーナーにとって肝心な事と私は考えます。ですので──」
ジリジリとにじり寄ってくるルビーとカレン。
スカーレットに助けを求めようとソファを見るが、いつのまにか横になって眠ってしまっている。
──万事休すか。薄着になったカレンを見て堪えられる自信が俺にはない。
ハッ!こ、これだ!これしか道はない!
「よし、二人の言い分はわかった。ただし条件がある」
「条件?」
「これに乗ってもらう」
俺はトレーナー室の段ボールから一つの薄い板を取り出す。
そう……ウマ娘の天敵であるこれを──
「この体重計に俺の前で乗るのが条件だ!」
ピタッと二人の動きが止まる。
思春期の女の子に対して嫌なことを言っている自覚はあるが、こちらも尊厳がかかっているのだ。これ以上気絶するような真似は避けたい……!
「今日はやっぱりやめておこうかな~。ホームルームも始まっちゃうし」
「ええ。華麗なる一族として、遅刻などあってはならない行為です」
そのまま話ながらトレーナー室から出ていく二人に、俺は勝利を確信した。
──勝った!ついに勝ったんだ!
果たして何に勝ったのか、俺自身分からないまま両手でガッツポーズ。
秋の朝、スカーレットの寝息だけが聞こえていた。
ダイワスカーレット誕生日おめでとう!(遅)
ということで、トレーナー初勝利の回でした。めでたいなあ。
前回早めに投稿出来るようにとか言っておいて、結局遅くて申し訳ない。ネタは思い付くけどオチが思い付かない現象に陥ってました。毎日のように投稿してる人たちは凄いですね。改めて思いました。
前回もたくさんのお気に入り・感想・ここすきをありがとうございます。
いつも楽しみに見させてもらっています。
それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
ヴィルシーナの胸、数字より大きく感じるのは気のせいか……?
貴方がこの小説に求めるものは?
-
おっぱい
-
トレーナーの奇行
-
ウマ娘の奇行
-
トレ×ウマ
-
ラブコメ
-
コメディ
-
突然の怪しい展開
-
物語性
-
貧乳こそステータスだ!
-
トレーナーの尻