ウマ娘の発育と、トレーナーについて   作:hk33

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 少し表現を足しました。


貴方の傍に

 

 

 

 ぽつぽつと、コンクリートを叩く音。

 閑散とした下駄箱で靴を履き替え、昇降口から空を覗くと、鼻腔を抜ける金木犀の香り。

 一筋の青も見えない空は今朝の予報の通りで、気落ちすることもなく、鞄の中にある折りたたみ傘の感触を確かめる。

 

 華麗なる一族として刹那も無駄にしない為、逡巡する必要など無く早々に帰宅すべきなのでしょう。

 しかし、今の私にはこの時間を──ただ、貴方が訪れるのを待ち焦がれる時間を──無駄と断じることは出来ない。

 ミラクルさんか、ヘリオスさんか、それとも貴方か。あるいは、私自身が望んだ変化でしょうか。

 スタスタと聞き馴染みのある足音を耳にするだけで、意識すること無く口角が上がる。

 鼓動が、響く。

 耳が、貴方を捉える。

 

「──雨、止みませんね」

 

「そうだね。──傘、入ってく?」

 

「──ええ、そうしていただけると。少し、肌寒く感じていたので」

 

 トレーナーさんが差し出して下さった傘の中へ。

 ふわり、とコーヒーと少しの汗の香り。

 

 ──いけない、と

 

 少しの遠慮が、私と貴方との間に空間を生む。

 けれど、貴方は何食わぬ顔で間を埋めて、私へと微笑みかける。

 

 ──暖かい

 

 貴方のその行動に、私は──

 微笑みを返す。貴方への感謝と愛慕を込めて。

 

 

 雨足は弱まることもなく、強まることもなく。

 雨音に包まれ、貴方と共に歩む時間は決して永くはない。

 それでもと、卑しく願ってしまう私は心の内を溢してしまう。

 

「この雨が──」

 

 続いたら──などと

 

「どうした?ルビー」

 

「いえ。──止みませんね」

 

「そうだね~。しばらく天気悪いらしいよ」

 

 明日もこうして──と思ってしまう私は甘えているのでしょう。

 言わずとも、私の為にと行動する貴方へと。

 

「明日も一緒に帰れるな!」

 

 そう言い笑みを向ける貴方は、何の悪気もなく。

 私は思わず、トレーナーさんの腿に尻尾を触れてしまう。

 少し、冷たい。

 

 スカーレットさん程の身長があれば、尻尾で貴方の腰を引き寄せられたのでしょう。貴方が私の歩幅に合わせる必要もなく、貴方が肩を濡らすこともなかった。

 カレンさん程の積極性を持ち合わせていたのなら、貴方に促される前に貴方の懐へと入り込んでいたでしょう。

 

 お二人にこのような羨望を懐くだなんて──

「愕き──ですね」

 

「なにが?」

 

「いえ、お気になさらず。それよりも歩きづらくはありませんか?」

 

「んー、多少は歩きにくいけど気にするほどじゃないかな。それに尻尾を絡ませるって信頼の証みたいなものなんでしょ?平気平気」

 

 信頼などと軽いものではありませんが。

 貴方のその言葉が、私の浅ましい心を満たす。

 

「それじゃあ、ここでお別れだな」

 

 その言葉に、尻尾へ込める力を強めてしまう。

 貴方と、まだ──

 

「ルビー。手、貸して」

 

「──?はい」

 

 私の手を、トレーナーさんの大きな手が包む。

 体温が上昇するのを感じる。

 頬が熱い。耳が熱い。

 手汗は掻いていないでしょうか。

 

「俺に尻尾は無いけどさ、手なら繋げるだろ?」

 

 貴方の顔を見ることが出来ない。

 けれど、浅ましい私は自ら指を絡める。

 

「ルビーの手は温かいな。安心するよ」

 

「ウマ娘ですから」

 

 それもそうかと言う貴方は、何度目と分からぬ笑顔。

 貴方に釣られる。

 

 二人、傘の中。互いの笑みを見詰めて。

 世界から隔絶されたかのようで……

 

「ルビー、フジキセキがこっち見てるからそろそろ」

 

「……そうですね」

 

 名残惜しい。そのような言葉しか出て来ない。

 せめてもの抵抗に、一本ずつ指を解いていく。

 トレーナーさんの困惑を感じるけれど、関係ありません。

 

「……ルビー?尻尾も腿から解いてくれると嬉しいんだけど……」

 

「はい」

 

 とは言え、トレーナーさんの要望を無視することは出来ません。

 尻尾も少しずつ力を緩めていく。

 

 

 数分後、全ての繋がりが解かれてしまった。

 貴方の熱が、香りが、霧散していく。

 

 これがヘリオスさんの仰っていたぴえんと言うものでしょうか。

 耳が力無く垂れるのを感じる。

 

「じゃあ最後に、ハイタッチでもするか?」

 

「……はい」

 

 私の様子を見て、困ったように貴方は笑う。

 貴方の温情が私を救ってくれる。

 構えられた貴方の右手へ、私の右手を伸ばす。それと同時に左手は貴方のお尻へ──

 パンッと同時に音が鳴る。私は即座に寮の昇降口へ。

 

「いたっ、こら!ルビー!」

 

 申し訳ありません、トレーナーさん。

 私の麗しき玉条──それが、眼前にあったのです。

 

 どうか御許し下さい──







 行動力があるのか無いのかどっちなんだい!
 ということで、ルビー回でした。
 今まで書いてきた話の中で一番時間がかかりました。その割には文字数が二千文字いかないという悲しい結果に。
 純文学的恋愛みたいなのを書きたかったけど無理でしたね。むずかしい。
 最終的にはギャグ作品なのでギャグオチに。

 前回もたくさんの感想・お気に入り等々、ありがとうございました。
 とても嬉しいです。

 それでは、今回も最後まで読んでくれてありがとうございました。

貴方がこの小説に求めるものは?

  • おっぱい
  • トレーナーの奇行
  • ウマ娘の奇行
  • トレ×ウマ
  • ラブコメ
  • コメディ
  • 突然の怪しい展開
  • 物語性
  • 貧乳こそステータスだ!
  • トレーナーの尻
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