わかっちゃった
夜のトレセン学園栗東寮。
マヤノトップガンはキラキラな大人のオンナになるために、今日も同室のトウカイテイオーと共にベッドに並んで腰かけ、とある雑誌を読んでいた。
「ほら!マヤノ見てみなよ!『ウマ娘流!好きな人をオトす10のテクニック❤️』だって!」
「うーん……でもトレーナーちゃん、もうマヤにむちゅーだよ?」
「わかってないな~、マヤノ」
テイオーは雑誌をベッドへと置き、ちっちっちと人差し指を振りながら立ち上がると、おもむろに自らの身体を抱きしめながら唇を突き出した。
「……テイオーちゃん、何やってるの?」
「本当にむちゅーなら、こうやって身体を抱きしめ合いながら唇をぶちゅーってするんだよ」
ひとしきり「ちゅっちゅっ」とやった後、満足そうにベッドへと再び腰かけ雑誌を読み直すテイオー。
そんなテイオーの動きを見たマヤノは、もちろん恋人同士がそういったことをするのは知っていたが、友人から改めて突きつけられると中々に恥ずかしいと感じてしまう。
トレーナーからプレゼントされたぬいぐるみを抱きしめて、壁際まで寝転がり想像する。
(トレーナーちゃんと、キス……)
やっぱりまだ恥ずかしい。マヤノはぬいぐるみに顔を埋めた。
出来るなら、キスは大人のオンナになってからしたい……しかしトレーナーからの愛も確かめたい……。
ワガママな乙女心と、マヤノの発想力はぶつかり合って混ざり合って──
今日もオレは朝から絶好調。
珍しくマヤノがモーニングコールした時に起きてたし!
トレセン学園への道すがらおばあちゃんを助けたら、おはぎを貰えたし!
まだ、たづなさんに怒られてないし!
るんるん気分で我がトレーナー室のトビラを開けると、そこには既にマヤノの姿。
珍しい、朝の時間はだいたい友達と教室にいるのに。
「おっはよー!マヤノ、おはぎ食べる?」
カバンからごそごそとおはぎを取り出し、二つある内の一つをマヤノへと差し出す。
……?
「マヤノ?」
少しうつむき気味で表情がわからない。
友達となにかあったのだろうか?
「どーした~?マヤノ?話し聞こうか~?」
「トレーナーちゃん……」
「ん?」
「トレーナーちゃんは、マヤのこと好きだよね!?」
「好きだぞ。マジラブ」
オレはもちゃもちゃともう一つのおはぎを食べる。
うん。普通だな。
「ほら、マヤノも食べな。普通のおはぎだ」
「だったら服脱いで!!!」
「──!?!?──ゲッ」
な、なん?服?っていうか喉に詰まって──
「トレーナーちゃん!?えっ、えっと──えい!!」
「ぐべっ」
マヤノに背中を叩かれ、なんとか助かった。
死ぬかと思った。ガチで。
口に手を突っ込んでたお陰で、おはぎをぶちまけなかったのが救いか。
まだギリギリ絶好調だな!
「げほっげほっ……ウェッ……そ、それでどうしたんだ?急に」
心配そうにこちらを見つめるマヤノを安心させるため、話題をふる。
手持ちの水を飲んで一息つけば、もう調子は元通り。
「ご、ごめんね……トレーナーちゃん……マヤが急に変なコト──」
「大丈夫大丈夫。もう治ったから、もーまんたいもーまんたい」
グッとサムズアップして、今度は少しずつよく噛んでおはぎを食べる。
オレを見たマヤノは微笑んで、ありがとうと言うと少し頬を赤らめた。
「それじゃあ、言うね。マヤがなんであんなコトを言ったのか」
そんな真剣な顔で見つめられるとドキドキしちゃうぜ……。
「マヤね、昨日テイオーちゃんにこんなこと言われたの──」
マヤノの言う理由は、実に思春期らしい可愛らしい内容で、オレにもそんな時期があったな……なんてしみじみとしてしまうモノだった。
ただ、オレの服を脱がすなんて発想に繋がる理由がわからないのだが……?
「──それでね、マヤ思ったの。マヤはちゃんとトレーナーちゃんをスキって想うけど、トレーナーちゃんは本当なのかな?って」
そう言うマヤノの瞳は、今までに見たことのない色を見せていて。
オレは、黙って話を聞いてることしか出来ない。
「トレーナーちゃんを疑ってるわけじゃないの。でもね?マヤもっとわかりたいの、トレーナーちゃんのこと。だから──」
──服、脱いで?
………………?
「いや!!なんでやねん!!!」
オレ人生史上、最高のツッコミかもしれない。
「え~!ぶーぶー、トレーナーちゃんのケチ~」
「ケチじゃありません!脱がんわ!」
唇を尖らせ、ぶーぶー文句を言うマヤノから顔を背ける。
どんなにマヤノに甘いオレでも、こればっかりは許可せんぞ!
「じゃあ、もういいもん!勝手にやっちゃうから!」
「な、なにを!?」
急いでマヤノの方を向くが、時既に遅し。
飛び上がったマヤノは、オレの背中にピッタリと張り付き、なにやら胸をさわっている。
……?
「マヤちんやい、何をしとるんだい?」
「トレーナーちゃんの胸を──大きくしようと思って」
んしょんしょと、一生懸命にやっている横顔はかわいいのだが、そのやっているコトが成人男性の胸を揉むことなのが救えない。
「何故?」
「テイオーちゃんの読んでた本に書いてあったの、好きな人から胸を揉まれたら大きくなるって」
つまり?
テイオーに好きあってる大人は、もっとヤバいんだぜと言われ。
自分は好きだけど、そういうことをしてこないトレーナーはどうなんだろうと不安になって。
でもキスは恥ずかしいから他の方法を考えてたら──
「これに行き着いたと言うわけか」
なるほどね。
なるほどか?
「マヤノ。残念だけどその方法はなかなか時間がかかるし、なにより男には多分効果ないぞ」
「え」
今までずっと動いていたマヤノの手が止まった。
どうやら、完全にフリーズしてしまったようだ。稀によくあることだ。このまま放っておこう。
幸いまだHRまで時間はあるし。
そうして、マヤノを背負ったまま仕事を始めて十分くらい。
ズルズルとマヤノがずり落ちた。
「──もしかしてマヤ、スゴく恥ずかしいことしてた?」
「まあ、部分的にはそうかも」
マヤノは真っ赤になった顔を両手で覆い、床に座り込んでしまった。
尻尾もべちんべちんと床を打っている。
「まあ、マヤノ。オレもそういう勘違いしてたことあるからさ」
気にするなと、頭を撫でてあげようと出した手がマヤノにガッシリと掴まれた。
「ちょい!マヤノサン!?」
「トレーナーちゃんだけズルい!トレーナーちゃんもマヤのこと触って!」
まだマヤノの顔は真っ赤っかだ。
羞恥心から正常な判断が出来ていないんだろう。
ってかズルいってなんだよ。なんにもしてないわい!
「ぐぐぐぐっ……ちょっガチで!マヤノっ、オレは捕まっちゃうから!」
「大丈夫だよっ!同意がっ……てっ!……ドラマで観たもんっ……!」
クソ!なんてややこしいドラマを観てるんだ!
オレも詳しくないから、その辺の説明が出来ねえ!
しょうがない……最後の手段だ!
「助けて!たづなえも~ん!」
「誰がたづなえもんですか?」
「『ヒエッ』」
名前を呼ぶより早く、その人は立っていた。
「はあ……まったく。お二人とも、朝くらい静かに過ごしてください!」
「『ごめんなさい』」
マヤノと並んで正座して、一緒に謝る。
これで取り敢えず、マヤノも落ち着いてくれただろう。
オレもムショ行きを防げたし、結果オーライ。
まだギリギリのギリギリ絶好調だな!
「トレーナーさんは、後でお話がありますから」
…………絶好調だよな!
マヤわかっちゃった!
ということで、マヤノとマヤノトレーナーのお話です。
お餅の食べ方には皆さんお気をつけください。
唐突にこんなに投稿が空いてしまい申し訳ないです。
今更ながらAIを使った遊びにハマってしまい、ウイポの所有馬をウマ娘化させてたりしてたら思ってるより時間が経ってました本当に申し訳ない。
正直、今後もこのくらい間隔が空く可能性が高いです。
それと、今回みたいな感じで新しいウマ娘とトレーナーの組み合わせで投稿する可能性も高いので、チーム「アンタレス」のメンバーが増えるのを楽しみにしてくれていた方には申し訳ないです。作者の力量的にウマ娘三人がおそらく限界だと思うので、こういった形にさせていただきました。(アンタレスの方を投稿しない訳ではありません)
だらだらと後書きが長くなってしまいましたが、今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
そして前回お気に入り・評価・コメントなど下さった方もありがとうございます。
また次回もよろしくお願いします。
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