北風と太陽
「行くよー!キタちゃん!」
「オッケー!ダイヤちゃん!」
「『せーの!』」
キタサンブラックとサトノダイヤモンド。
共に俺の担当ウマ娘であり、苦楽を共にした戦友と呼べる存在。
そんな二人が今行っているのは、互いの身体測定の結果比べ。
身長・体重・スリーサイズなどを比べて優劣を決める遊びだ。
毎度のごとくトレーナー室で行うのでもう慣れてはいるが、トレーナー相手とはいえあけっぴろげ過ぎやしないだろうか。
メガネを直しながら、誰に向けるわけでもなくため息を一つ吐き、二人の方を見やる。
どうやら今回の勝負も引き分けで終わったらしい。
二人はソファに並んで座り、互いの結果を見ながら談笑していた。
この三年間、欠かさず行われてきたこの勝負。
幾度となく引き分けてきたこの勝負は、いつからかお決まりの流れが出来上がってしまっていた。
それは──
「トレーナーさん、私とキタちゃんどちらの胸の方が大きいと思います?」
デスクの前に立ち堂々とした態度で胸を張るダイヤと対照的に、恥ずかしそうに頬を染め少しうつむき気味のキタサン。
そう、お決まりの流れとはこれ。
クイズと言うか、セクハラと言うべきか。
ダイヤがやり始めたそれは、正直キタサンも俺も未だについていけていない。
「……ダイヤじゃないんですか」
「ピンポーン!正解です!流石トレーナーさん!」
嬉しそうにピョンと跳ねたダイヤ。
……目の毒だ。
「ではでは、お尻が大きいのはどちらだと思いますか?」
今にも爆発しそうなキタサンには申し訳ないが、俺も外すわけにはいかない。
……なにをされるかわからないからな。
「……キタサン」
「ピンポンピンポーン!またまた正解です!」
本当に嬉しそうにするダイヤと、とても恥ずかしそうなキタサン。
下ネタと言うほどでもないのだが、この手の話題は彼女にはまだ早いのだろう。
可哀想だし、別の話題に──
「トレーナーさん!トレーナーさんはどちらの方が好きなんですか?」
「……どちらとは?」
「胸かお尻かです!」
「ダイヤちゃん!?」
……困った。今までに無い展開だ。
いつもなら俺が別の話題を振って終了するのだが……。
デスクに身を乗り出し、爛々とした目をこちらに向けるダイヤを見る限り、そう簡単に逃がしてはくれないだろう。
「特別どちらが好きというのはありません。強いて言うなら愛する女性の全てと答えておきます」
「ではでは、私とキタちゃんの全てが好きということですか!」
「ダイヤちゃん!?」
…………なぜだ。
確かに押しの強い娘ではあるが、ここまで踏み込んでくるのは初めてだ。
終始驚いているキタサンを見る限り、二人で計画して何かをやっているわけでは無さそうだし……。
「確かに俺は二人に愛を抱いていますが、色恋的な感情では無いです」
「そうですか……」
「ダイヤちゃん……」
ウマ耳が垂れ、俯いてしまう二人。
二人がなんとなく俺に好意を向けているのは把握している。だからこそハッキリと否定しなければならないのだ。
たとえ、今までのように親しい仲でいられなくなったとしても。
「なぜですか!こんなに可愛くて、胸もお尻も大きいのに!」
「ダイヤちゃん!?」
………………??????
今の流れは多少なりともショックを受ける流れでは?
「あの、ダイヤ?なぜ今日はそんなに──」
「──私、知ってしまったんです。在学中に教師と生徒が結ばれるのは難しいということを。ですから──」
握りこぶしを掲げ、ダイヤは宣誓する。
「そのジンクスを──」
「それはジンクスではありません」
「むー!」
ダイヤは頬を膨らませ、こちらを睨み付けてくる。
そんな顔をしても可愛いだけだぞ。
「あはは……ダイヤちゃん、流石にそれはジンクスとは言えないよ」
「でもでも!キタちゃんはいいの!?トレーナーさんと一緒になろうって──」
「良いんだよ、ダイヤちゃん。トレーナーさんから見たらまだまだ子供なんだよ」
困ったような顔をして笑うキタサン。
お辞儀している耳が、彼女の感情を教えてくれる。
眼鏡を直し、ため息を吐く。
……甘い。
「俺は、そこまで器用な人間ではないので」
椅子から立ち上がり、二人の頭を撫でる。
「ですから安心してください。貴女たち以外のことを考えていられる余裕なんかありませんから」
少し気恥ずかしくなって、二人の頭をわしゃわしゃと撫でてしまう。
ボサボサになった二人は、顔を見合せて笑顔を見せてくれた。
これで一件落着か……。
「嬉しいね!キタちゃん!」
「そうだね!ダイヤちゃん!」
「それじゃあ、キタちゃん!計画通りに行こう!」
「う、うん!ちょっと恥ずかしいけど……」
計画?と疑問に思った次の瞬間、俺はキタサンにおんぶされていた。
……は?
「キタサン?なにをやって──」
「えい!」
ズシンと衝撃。
柔らかな感触が背中を襲う。
どうやら、ダイヤが飛び乗ってきたらしい。
……は??
「二人とも?なにをやって──」
「それじゃあキタちゃん!On y va!」
「オー!」
「いやちょっ」
そうして、二人にサンドイッチされた俺は全ての抵抗を諦め、二人に胸と尻をまさぐられながら、どことも知れぬ場所へ連れていかれるのだった──
ということで、キタサン(太陽)とダイヤ(北風)のお話でした。
押してダメなら引いた後にもう一度押せ!
トレーナーがどうなったのかは、神のみぞ知る──
前回もお気に入り・評価・ここすき・感想をありがとうございました。とても嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。
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