「──はははは!それにしても、お前がここまで飲めるようになってるとはな!」
「まぁ、トレーナー同士で飲み会とか普通にあるからね。鍛えられたんだよ」
「あら、そうなの。そういう所は普通なのね」
久しぶりの帰省。すっかり出来上がった親父に背中を叩かれながら、俺は杯を傾けていた。
親父は、少し白髪が増えただろうか。
お袋は、あまり記憶と変わらない。思い出と同じように笑みを浮かべている。
──帰ってきて良かった
改めて、そう思った。
キタサンとダイヤには感謝しなければ……
親父の声。お袋の声。バラエティー番組の賑やかな音。いつもとは違う、騒がしさ。
少しセンチメンタルな気分に浸りながら、杯を呷った。
それから、しばらくして。
途中から水に切り替えた俺は何ともなかったが、親父は完全に潰れてしまい、そろそろ片付けるかというところでお袋から声をかけられる。
「あんた片付けはいいから、もう寝ときなさい」
「いや、片付けくらいするよ」
「いーのいーの、あんたは明日もやることあるんだから」
「……やること?」
確かに明日昼過ぎには帰ろうと思っていたが、別に今はそこまで遅い時間というわけでもないのだが……
まぁ、お言葉に甘えようか。
お袋にお休み、と告げてリビングから出る。
かつての自分の部屋には既に布団が敷いてあり、後は横になり微睡に身を任せるだけ。
家事する音を聞きながら寝るのも、久しぶりだな……
……なんだ、眩しい?……というかめちゃくちゃうるさい……
掃除機の音なんかじゃない、これは……?
「トレーナーさん!ハッピーニューイヤー!」
「ハ、ハッピーニューイヤー……!」
この声は、ダイヤとキタサン?なんで?
ダイヤから差し出された眼鏡をかけると、ぼんやりとしていた輪郭が定まった。
──やはり二人。だが、どうしてここに?
というか、なんでこんなにうるさいんだ……
夢か?夢の中なのか?
「トレーナーさん!ここがどこかお分かりですか!」
「……俺の実家では……なさそうですね」
「はい!」
満面の笑みを浮かべるダイヤ。
その横で、申し訳なさそうな顔をしているキタサンに視線を向けると、これまた申し訳なさそうに布団から体を起こされた。
「トレーナーさん!窓の外をご覧ください!」
ダイヤに促されて外を見ると、そこには巨大な山が悠々と聳えていた。
……は?
「これは……」
どういうことだ……?
俺は背後へと視線を向ける。変わらない表情の二人が見える。
今さら気付いたのだが、二人のその恰好はなんだ……?
恐らく、この音はヘリのプロペラ音。
二人の表情から察するに、発案はダイヤなのだろう──基本的にいつもそうなのだが──
目的が分からない……一体何のために?
「キタサン、これはいったい──」
何ですかと続けようとしたところで、二人がそろって立ち上がる。
喜色に満ちたダイヤと打って変わり、キタサンは今にも弾けそうな顔色だ。
「『富士!』」
「鷹!」
「茄子!」
……なるほど。
鷹の着ぐるみを着て、鷹のぬいぐるみを抱えるキタサン。
茄子の着ぐるみを着て、茄子を両手に持っているダイヤ。
そして今、窓から見える富士山。
──一富士二鷹三茄子
「しかし、それは初夢で見ると縁起の良いものでは?」
「大丈夫です!どんなジンクスも破って見せます!」
「それは、ジンクスではないでしょう……」
ため息が一つ出た。
恐らく、お袋も協力していたのだろう。
決して強引に話を進める子ではない。恥ずかしそうにしているキタサンも、本気で嫌がっているのならダイヤは決して実行には移さない。
──このくらいのサプライズ、よくあることだ。
俺達の、当たり前の日常が帰ってきたのを感じる。
「それで、これからどうするんです?二人も俺の実家に来ます?」
「それも魅力的な提案なのですが……」
「トレーナーさん!実は、もうトレセン学園の近くに来てるんです!」
「え?」
本当だ。巨大なトレーニングコースが確認できる。
このまま直接トレセン学園に降りるのだろうか。
「それじゃあ、インストラクターさん!トレーナーさんのことよろしくお願いしますね!」
「はい。インストラクターです」
失礼します、とインストラクターを名乗る謎の男性はガチャガチャと謎の器具を俺に着ける。
まるでついていけない展開に、俺の脳内は疑問符が飛び交う。
先程まで恥ずかしそうにしていたキタサンも、何のことはないと言わんばかりに謎の器具を着用し始めた。
「あ、あの。これはいったい……?」
「トレーナーさん!あたし、先に行きますね!」
そう言って、キタサンは何の躊躇いもなくヘリから飛び出していった。
突然のことに完全に呆気にとられていると、ダイヤがキタサンへと続くように空への入り口に立つ。
「トレーナーさんも、楽しんでくださいね!」
キタサンと同じく、何の躊躇いもない。
残された俺は、自分でも驚くほどに震える声を発した。
「あの……これって……」
「はい。スカイダイビングのインストラクターでございます」
そうですよね。
見ればわかる。子供でも分かる。
そして、今の俺の状況。
「それでは、行きますよ」
インストラクターさんの簡潔な説明が終わる。
俺も跳ぶ、ということだ。
「Ready, Set, Go!!」
「うおあああああああああ!!!???」
──明け方の冷たい空気のおかげだろうか
──冴える頭の中で、どうしようもなく下らない記憶が蘇った
「先輩、どうしたんですか話って」
「あぁ、風速六十キロはDカップのおっぱいの感触って噂。あれ、マジなんだってよ」
「知りませんよ」
──あぁ、本当に
「なんだと!Dカップだぞ!Dカップ!」
「どうでもいいです」
──本当に
「どうでもいいわああああああ!!!!」
ということで、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
ちなみにスカイダイビングは時速二百キロとかいくらしいですよ。はっや。
それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
貴方がこの小説に求めるものは?
-
おっぱい
-
トレーナーの奇行
-
ウマ娘の奇行
-
トレ×ウマ
-
ラブコメ
-
コメディ
-
突然の怪しい展開
-
物語性
-
貧乳こそステータスだ!
-
トレーナーの尻