ウマ娘の発育と、トレーナーについて   作:hk33

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一富士二鷹三茄子

 

 

 

「──はははは!それにしても、お前がここまで飲めるようになってるとはな!」

 

「まぁ、トレーナー同士で飲み会とか普通にあるからね。鍛えられたんだよ」

 

「あら、そうなの。そういう所は普通なのね」

 

 久しぶりの帰省。すっかり出来上がった親父に背中を叩かれながら、俺は杯を傾けていた。

 親父は、少し白髪が増えただろうか。

 お袋は、あまり記憶と変わらない。思い出と同じように笑みを浮かべている。

 

 ──帰ってきて良かった

 改めて、そう思った。

 キタサンとダイヤには感謝しなければ……

 

 親父の声。お袋の声。バラエティー番組の賑やかな音。いつもとは違う、騒がしさ。

 少しセンチメンタルな気分に浸りながら、杯を呷った。

 

 

 

 それから、しばらくして。

 途中から水に切り替えた俺は何ともなかったが、親父は完全に潰れてしまい、そろそろ片付けるかというところでお袋から声をかけられる。

 

「あんた片付けはいいから、もう寝ときなさい」

 

「いや、片付けくらいするよ」

 

「いーのいーの、あんたは明日もやることあるんだから」

 

「……やること?」

 

 確かに明日昼過ぎには帰ろうと思っていたが、別に今はそこまで遅い時間というわけでもないのだが……

 まぁ、お言葉に甘えようか。

 

 お袋にお休み、と告げてリビングから出る。

 かつての自分の部屋には既に布団が敷いてあり、後は横になり微睡に身を任せるだけ。

 

 家事する音を聞きながら寝るのも、久しぶりだな……

 

 

 

 

 

 ……なんだ、眩しい?……というかめちゃくちゃうるさい……

 掃除機の音なんかじゃない、これは……? 

 

「トレーナーさん!ハッピーニューイヤー!」

 

「ハ、ハッピーニューイヤー……!」

 

 この声は、ダイヤとキタサン?なんで? 

 ダイヤから差し出された眼鏡をかけると、ぼんやりとしていた輪郭が定まった。

 

 ──やはり二人。だが、どうしてここに? 

 というか、なんでこんなにうるさいんだ……

 夢か?夢の中なのか? 

 

「トレーナーさん!ここがどこかお分かりですか!」

 

「……俺の実家では……なさそうですね」

 

「はい!」

 

 満面の笑みを浮かべるダイヤ。

 その横で、申し訳なさそうな顔をしているキタサンに視線を向けると、これまた申し訳なさそうに布団から体を起こされた。

 

「トレーナーさん!窓の外をご覧ください!」

 

 ダイヤに促されて外を見ると、そこには巨大な山が悠々と聳えていた。

 ……は?

 

「これは……」

 

 どういうことだ……? 

 俺は背後へと視線を向ける。変わらない表情の二人が見える。

 今さら気付いたのだが、二人のその恰好はなんだ……? 

 

 恐らく、この音はヘリのプロペラ音。

 二人の表情から察するに、発案はダイヤなのだろう──基本的にいつもそうなのだが──

 目的が分からない……一体何のために?

 

「キタサン、これはいったい──」

 

 何ですかと続けようとしたところで、二人がそろって立ち上がる。

 喜色に満ちたダイヤと打って変わり、キタサンは今にも弾けそうな顔色だ。

 

「『富士!』」

 

「鷹!」

 

「茄子!」

 

 ……なるほど。

 鷹の着ぐるみを着て、鷹のぬいぐるみを抱えるキタサン。

 茄子の着ぐるみを着て、茄子を両手に持っているダイヤ。

 そして今、窓から見える富士山。

 

 ──一富士二鷹三茄子

 

「しかし、それは初夢で見ると縁起の良いものでは?」

 

「大丈夫です!どんなジンクスも破って見せます!」

 

「それは、ジンクスではないでしょう……」

 

 ため息が一つ出た。

 恐らく、お袋も協力していたのだろう。

 決して強引に話を進める子ではない。恥ずかしそうにしているキタサンも、本気で嫌がっているのならダイヤは決して実行には移さない。

 

 ──このくらいのサプライズ、よくあることだ。

 俺達の、当たり前の日常が帰ってきたのを感じる。

 

「それで、これからどうするんです?二人も俺の実家に来ます?」

 

「それも魅力的な提案なのですが……」

 

「トレーナーさん!実は、もうトレセン学園の近くに来てるんです!」

 

「え?」

 

 本当だ。巨大なトレーニングコースが確認できる。

 このまま直接トレセン学園に降りるのだろうか。

 

「それじゃあ、インストラクターさん!トレーナーさんのことよろしくお願いしますね!」

 

「はい。インストラクターです」

 

 失礼します、とインストラクターを名乗る謎の男性はガチャガチャと謎の器具を俺に着ける。

 まるでついていけない展開に、俺の脳内は疑問符が飛び交う。

 先程まで恥ずかしそうにしていたキタサンも、何のことはないと言わんばかりに謎の器具を着用し始めた。

 

「あ、あの。これはいったい……?」

 

「トレーナーさん!あたし、先に行きますね!」

 

 そう言って、キタサンは何の躊躇いもなくヘリから飛び出していった。

 突然のことに完全に呆気にとられていると、ダイヤがキタサンへと続くように空への入り口に立つ。

 

「トレーナーさんも、楽しんでくださいね!」

 

 キタサンと同じく、何の躊躇いもない。

 残された俺は、自分でも驚くほどに震える声を発した。

 

「あの……これって……」

 

「はい。スカイダイビングのインストラクターでございます」

 

 そうですよね。

 見ればわかる。子供でも分かる。

 そして、今の俺の状況。

 

「それでは、行きますよ」

 

 インストラクターさんの簡潔な説明が終わる。

 俺も跳ぶ、ということだ。

 

「Ready, Set, Go!!」

 

「うおあああああああああ!!!???」

 

 ──明け方の冷たい空気のおかげだろうか

 ──冴える頭の中で、どうしようもなく下らない記憶が蘇った

 

「先輩、どうしたんですか話って」

 

「あぁ、風速六十キロはDカップのおっぱいの感触って噂。あれ、マジなんだってよ」

 

「知りませんよ」

 

 ──あぁ、本当に

 

「なんだと!Dカップだぞ!Dカップ!」

 

「どうでもいいです」

 

 ──本当に

 

「どうでもいいわああああああ!!!!」

 

 

 





 ということで、明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。

 ちなみにスカイダイビングは時速二百キロとかいくらしいですよ。はっや。

 それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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