私のトレーナーさんが、はしたないにも程がある
本日もトレセン学園での業務が終了し、紅い空の下、一人帰路に着く。
担当ウマ娘──スティルインラブが予定があるとのことで、今日は早めの帰宅。
たまには、こんな日があっても良いだろう。トレーニングは順調で、心配することはない。
商店街を進み、もう抜けようかと言うところで、呼び止められた。
小学生らしきウマ娘。
お兄さん、この子誰か知ってる?と指差すその先には、スティル──のぱかプチ。
──もう出来ていたのか。
話が来ていたのは、最近だったはず。商品化がここまで早いとは。
たった一つ残されたそれと、目があった。
────。
取らねばなるまい。スティルの担当トレーナーとして。
スティルのことと、僕のことを簡潔に少女に伝える。
すると少女は微笑み、僕の背中を押してくれた。
よし!頑張るぞ!
ありったけを注ぎ込む……!
取れない……。
そりゃクレーンゲームの経験なんて、ほとんど無いけれど……。
もう少し容赦してくれたっていいじゃないか。
こちとらほぼ初心者だぞ……もう……。
せめて、写真だけでも撮って帰ろう。
スティルにも教えてあげなくちゃいけない。
電話──は予定があるって言ってたし、LANEで写真を送ろうか。
レンズ越しに目が合う彼女は、なんだか恨めしそうにこちらを見ている気がした。
「また、来るからね」
言葉など伝わらないぬいぐるみ。
それでも、声をかけてあげたかった。
──スティルにも送信出来たし、そろそろ帰ろう。
空はすっかり暗闇の中。まだ夕飯の支度も出来てないな。
「──そういえば」
少女は、いつの間にか居なくなっていた。
あまりの下手さに、見ていられなくて帰ってしまったのだろうか。
まあ、しょうがないね。
一人、苦笑がこぼれた。
──もう、スティルは寮に帰ったかな。
再びの帰り道。担当を思う。
彼女は予定があるとしか教えてくれなかったけれど。無事に済んだのだろうか。
赤信号。通知を眺めるけれど、君からの返信はまだ。
「……ん?」
ふと、違和感を感じて周囲を見渡す。
気のせい?いや──
まあ、いいか。
家に着き、夕飯と風呂を済ませ、スティルからの連絡を待つ。
ほぼ毎日この時間、一時間きっかりの習慣。
いつから、どちらから始めたのか。覚えていないけれど、楽しみで笑みがこぼれる。
待つ。
待つ。
待つ。
──待つ。
────待つ。
──────待、つ。
────────。
「──はっ」
窓から射し込む光。
空には、日が顔を出していた。
慌ててLANEを見るけれど、そこには既読が着いているだけ。
──なにか、気に触ることでもしてしまったかな?
もしかして、スティルのぱかプチを手に入れられなかったから……?
ショックを受けてしまったのかもしれない……。
急いで支度を済ませ、家を飛び出す。
担当を悲しませるなんて、あってはならないんだ……!
「──そりゃ、そう……だよね……」
店は閉まっていた。こんな早朝からやっていることなんてないよね……。
スティルのぱかプチが残っているのかも確認できず。
謝ろう。そして今日の放課後にまた──
「──スティル?」
気配がした。
振り返るけれど、そこには誰もいない。
ただ、在った。
「ぱか、プチ……?」
何故?
道にポツンと置かれた、スティルのぱかプチ。
僕がここに着いたときには、何も置かれていなかったはず。
誰かの落とし物?でも、誰ともこの場所ですれ違っていないはず……。
──スティル……なのか?
分からないけれど、置いていくわけにはいかないだろう。
ぱかプチを大事に抱え、学園へ向かう。
思ってたより、軽いんだな。
あれから学園に着き、スティルと会うことが出来た。
けれど、彼女は興奮したような様子で、まともに会話することも叶わなかった。
「あぁ……トレーナーさん──そんな……私は、ワタシは、いや……ダメっ──そんなの、はシタない……っ」
スティルの様子は正しく鬼気迫るようだった。
それからというもの、彼女はトレーナー室に来ていない。
電話をかけても出てくれない。
彼女のクラスの教官やクラスメイトが言うには、いつもと様子は変わらなかったらしいけれど。
やはり、僕が原因なのだろうか。
昼休み、僕はスティルが居ない寂しさを紛らすため、めにしゅきのライブ映像を観ていた。
──スティルは本当にかわいいな。
もちろん皆かわいいけれど、スティルが一番だ。
膝に乗せていたぱかプチも一緒に踊らせてみる。
本人とはまた違ったかわいさがあるな。ぱかプチにハマるのも分かるかもしれない。
──そういえば、メインの四人でめにしゅきのダンス動画を出してたな。
スティルは確か、ラブズオンリーユーと──
「あった」
ダンス初心者のためか、ゆっくりとしたテンポで振り付けを声に出しているそれは、非常にわかりやすい。
踊ってみようかな……。
このトレーナー室には滅多に人が来ない。来たとしてもスティルだけだ。
一応、廊下に出て周囲を確認する。
──誰も、いない……かな?
トレーナー室へ戻り、もう一度動画を流す。
「……ゆっくりとは言え難しいな」
何度も最初から、出来ないところは重点的に。
そうして、繰り返すこと数十分。ある程度形になってきた。
──スティルに見てほしいな
LANEを送ってみよう。
じんわりと汗がにじむ額を腕で拭い、スマホを手に取る。
すると、トレーナー室の扉が開いた。
「──スティル!」
「あ、あの。トレーナーさん、先ほどは失礼致しました……話もせずに出ていってしまい──」
目を伏せ、耳を垂らしたしょんぼりスティルが現れた。
「そんなこと、気にしないで。なにか理由があったんでしょ?」
「理由は──確かにありましたが……そんな高尚なものではありません……!私は、私が恥ずかしくて──」
「どんな理由でもいいんだよ。理由が無くたっていい」
スティルを抱き締める。
僕は大して身体が大きくないけれど、それでも包めてしまうほどに、スティルは華奢だ。
「僕は、君の全てを受け入れるんだから」
「トレーナーさん──」
スティルの、悲しみとも怒りともとれる叫びは収まった。
首もとで、スンスンと鼻を鳴らす音が聞こえる。
「トレーナーさん、この──香りは……」
「香り……?あっ、そうだ」
すっかり忘れていた。自分は今、結構な汗をかいていることを。
「ごめんね臭かったでしょ、さっきまでダンスしてたんだ」
「いえ……決してそのようなことは──ダンス、ですか?」
「うん」
「ど、どのような?」
「それはもちろん、めにしゅきだよ」
「めにしゅきを……トレーナーさんが……」
「そう!ちょっと見てて!」
さっきまで見てた動画を思い出す。
頭の中には、ダンスの先生スティルがハッキリと存在している。
「こんなに大きくなりました」
「あぁ……!トレーナーさん……!」
「えっと……しー、ぱっ、ぎゅ、約束」
「そんな……ダメぇ──ワタシ、私が……!」
「トントン、ぷり~ず」
「喰らわせてぇ!!」
「うわぁ!?」
突然飛び込んできたスティルの勢いそのままに、床に倒れてしまう。
少し痛む背中を無視して、頭を上げスティルの様子を確かめる。
「スティル、だいじょう──?」
これは紅──?いや……スティルなのか?
「ふふフフふ、トレーナーさん。コんなに大キクなリまシタ♥️」
スティルは見ているよ……
ということで、めにしゅきスティルかわいいね回でした。
早めに投稿するかも、とか言っておいて結局大して早くないのはすみませんでした。お許しくださいませ。
スティルとめにしゅきいいですよね。
いろいろやりたい要素を混ぜた結果なんかよくわからない話になってしまった気もしますが、まあいいでしょう。
深く考えるな!感じろ!と言うことで。
前回、お気に入り・ここすき・感想をくださった方々ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
本日もここまで読んでくださりありがとうございました。
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