ウマ娘の発育と、トレーナーについて   作:hk33

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ヒミツのティータイム

 

 

 

 

 トレセン学園の入学式から二ヶ月ほどの時間が経って、学園生活にすっかり慣れてきたころ。

 

 アタシ──ダイワスカーレット──は、同じチームのダイイチルビー先輩からティータイムの誘いを受け、空き教室へと向かっていた。

 

「大丈夫かしら……」

 

 昨日の夜、先輩から誘いを受けてから大急ぎで作法などを調べたけど……。

 ティータイムに誘われるのが初めてというわけではないけれど、一対一でというのは初めて。

 普段はアイツも一緒だったし……。

 

「この教室よね……」

 

 大丈夫よ、アタシ。ルビー先輩は作法を間違えたりする程度で怒るような人じゃない。

 ただ、ちょっとだけ華麗なる一族としてのオーラがにじみ出てるだけ。

 

 引手に手をかけて、少し深呼吸。

 ようやく決心して、扉を開けた。

 

「失礼します。こんにちは、ルビー先輩」

 

「こんにちは、スカーレットさん」

 

 ルビー先輩のいつもと変わらなさそうな様子に、少し安心する。

 相談があります。なんて誘われたからどんな話かと身構えていたけれど、そんな重い話でもなさそうね。

 

 席に着き乾杯をして、アイツには内緒のティータイムが始まる。

 

 スコーンやケーキなどに舌鼓を打ちつつ、なんてことはない雑談を交わす。

 ルビー先輩が話すことはあまり多くはなかったけれど、時おり微笑んでアタシの話に相づちをする様は、まるで姉でも出来たかのように思えて、ルビー先輩の新たな一面を感じられた。

 

 

 そんな穏やかな時間も刻々と過ぎて、お昼休みもあと少しとなったころ。

 

 さっきまで楽し気だったルビー先輩の顔から一切の表情が消え、とてつもないプレッシャーが放たれた。

 

「──本題に入りましょうか」

 

 なななななに!? 

 やっぱり重い話だったの!? 

 アタシだけじゃ耐えられないわよ!?この空気!? 

 

 なにかの間違いで、アイツが教室に入ってきてくれないかしら……。

 

「お誘いする時にも伝えた通り、相談があるのです」

 

「その……アタシじゃなくて、トレーナーさんに伝えた方が良いんじゃないですか?」

 

「いえ、スカーレットさんでなければなりません」

 

 アタシじゃなきゃならないって、レース関係は絶対に違うだろうし、プライベートな話もルビー先輩にだって友達はいるし……。

 

「…………胸を、大きくしたいのです」

 

 へ?む、むね? 

 頬を染めて、伏し目がちにそんなことを言うルビー先輩に、アタシは完全に呆気にとられた。

 まさか、あんな重々しいプレッシャーからこんなにカワイイ悩みが出てくるなんて──。

 

「あの、どうしてアタシ何ですか?ヘリオス先輩も大きいですし……」

 

「ヘリオスさんは……」

 

 微妙そうな顔のルビー先輩。

 あのヘリオス先輩にルビー先輩が身体のことで悩んでる、なんて話したらスゴいことになりそうではある。

 

「それに、後輩である貴女と交情を結びたいという想いもありました」

 

「ルビー先輩……!」

 

 ルビー先輩がこんな風に思ってくれていたなんて。

 アタシも精一杯応えたい!

 けど……。

 

「胸を大きくしたい理由って、聞いてもいいですか?」

 

「……」

 

 さっきから紅い顔がさらに紅くなった。

 やっぱり、これは恋バナ!

 そして、ルビー先輩が好きなのは恐らくアイツ──。

 アタシは協力するべき?でも、アタシだって……。

 

「お願いします」

 

 ルビー先輩は頭を下げた。

 

「スカーレットさん、貴女もトレーナーさんに好意を懐いている……私はそう認識しております。そのような方に不躾なお願いであることは重々承知しているのですが、是非教えていただきたいのです。理想へと近づく方法を」

 

 多分アイツは、普段から言葉にしている通り、アタシのこともルビー先輩のことも好きなんだと思う。

 ただ、それは親愛とか友愛と呼べるもので、そこに恋愛感情は多分ない。

 アタシの胸だから目をそらすんじゃなくて、大きい胸だから目をそらしているんだ。

 

 なんだかムカついてきたわね……。

 

「分かりました。ルビー先輩、一緒にもっと大きくなってトレーナーさんを困らせましょう!」

 

「!──ええ」

 

 とは言ったものの、アタシは特別努力してこのサイズになった訳じゃない。

 ルビー先輩と二人、椅子に座りムムムと唸る様はまさしく考えるウマ娘。

 

「そうだ!ネットで調べてみましょう!」

 

「なるほど、そうですね」

 

 早速スマホを取り出し「女性 胸を大きくする方法」で検索。

 

「ルビー先輩!これ見てください、いろいろ出てきましたよ!」

 

「筋トレ、マッサージ、食事、睡眠ですか……」

 

「ど、どうしました?」

 

 少しテンションが下がったような。

 

「いえ、既に全て行っているような内容でしたので」

 

「ああー、確かに……」

 

 ウマ娘は身体が資本。

 特にルビー先輩のような名家に産まれたウマ娘は、トレーニングも、食事も、身体のケアも幼い頃から徹底されているだろう。

 ここに書いてある内容なんて今さら過ぎる。

 

 どうしよう、また振り出しだ。

 

「これは──」

 

 スマホを片手に息をのむルビー先輩。

 それほどまでに画期的な方法が見つかったの……?

 

「なにかありましたか?ルビー先輩」

 

「しかし──いえ、背に腹は代えられません」

 

「あのー?ルビー先輩?」

 

 こちらに目を合わせたルビー先輩は、すみませんと一言告げとんでもない速さで教室から出ていった。

 

「ルビー先輩!?スマホが──っ!?」

 

 ルビー先輩のスマホを片手に走る。

 まだ本格化を迎えていないアタシじゃ、確実に追い付けない。けど、関係ない。

 ルビー先輩──それだけは、それだけは──!! 

 

 

 

 ようやくたどり着いたトレーナー室。

 中から二人の声と、格闘しているのだろう激しいもの音。

 ガラリと扉を開ければ、少しはだけたルビー先輩と、押し倒されるトレーナーがいた。

 

「スカーレット!?──なんでもいいから助けてくれ!」

 

「抵抗なさらないで下さい、トレーナーさん。スカーレットさんも、私の後にならなさっていただいて結構です」

 

 その言葉にちょっと揺らぐけれど、流石にダメ。

 アタシは相談を受けた身として、ルビー先輩の乙女としての尊厳を守らなきゃならない。

 

「ルビー先輩。その……ルビー先輩が見つけたのって迷信なんですよ……有名な……」

 

 ピタッと、ルビー先輩の動きが止まった。

 耳が忙しなく動き、尻尾が逆立ち、頬がどんどんと染まっていく。

 しばらくアタシとアイツの顔を交互に見て、目をグルグルと回し、気を失ってしまった。

 

「ルビー!?──スカーレット、ルビーはいったいどうしたんだ!?」

 

「あはははは……ちょっと、ね」

 

 ルビー先輩、大丈夫です。きっと、悩める乙女なら誰しもが想ったことがあると思います。

 

 ──好きな人に胸を揉んでもらえたら、大きくなるんじゃないか──って。

 

 

 

 






 なんだか、ルビーがアホの子っぽくなってしまっている今日この頃。
 ということで、ルビー暴走の回でした。
 ルビーは精神的ダメージを負いましたが、目覚めたときにはショックで全てを忘れているでしょう。多分。


 前話から、また沢山のお気に入りや、評価、コメントなどをいただきました。本当に嬉しいです。ありがとうございます。

 今後も、ネタが尽きない限りは、定期的に更新できるように頑張ります。
 今回も読んでいただきありがとうございました。

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