転生悪役令嬢の異世界サバイバル   作:アールグルト

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チート能力で断罪回避ですわ!

「はぁ…はぁ…」

 

豪華に装飾された宮殿の一室で、エリシア・フォンブルームは荒い息を整えながら鏡の前に立っていた。鏡に映るのは、漆黒の長髪と赤い瞳を持つ美しい少女。十六歳の貴族令嬢の姿だ。

 

(これが私…本当に転生したんだ…)

 

数日前まで、彼女は日本の一般的なOL、篠崎麗子だった。ブラック企業での過酷な残業の末、過労で倒れ、気がつけば乙女ゲーム「クリスタルプリンセス」の世界に転生していた。しかも、ゲームでは主人公の恋路を邪魔する悪役令嬢エリシア・フォンブルームとして。

 

「まさか本当に転生するなんて…でも、これはチャンスよ!」

 

麗子は熱心なゲーマーだった。このゲームも何度もクリアし、全てのルートを把握していた。そして彼女は知っていた—このまま何もしなければ、エリシアはレオン王子との婚約を破棄され、国外追放、そして悲惨な最期を迎えるということを。

 

「原作通りになんてならない。私には現代知識と、ゲームの展開予測があるんだから!」

 

そして何より、彼女には転生者の特権、「チート能力」があった。転生後すぐに気づいた二つの力—「真実視」と「魔力変換」。嘘を見抜き、魔力を吸収して自分のものにできる能力。これさえあれば、どんな状況も覆せるはず。

 

「完璧よ。これで破滅フラグを回避して、逆転勝利は間違いなし!」

 

***

 

宮廷での婚約破棄の儀式。大広間には王族、貴族たちが集まり、重苦しい空気が流れていた。予想通り、レオン王子が平民の娘と恋に落ち、エリシアとの婚約を破棄するという。

 

(原作通りね…でも今日は違う結末になるわ)

 

エリシアは自信に満ちた表情で大広間に入った。華麗なドレスに身を包み、高く顎を上げ、視線の集まる中を堂々と歩く。

 

「何も恐れることはない。チート能力で真実を暴き、このイベントを乗り切るだけ」

 

レオン王子とその隣に立つ平民の娘を見つめながら、エリシアは内心の計算を続けた。王子が口を開く瞬間を待つ。

 

「本日、私レオン・クリスタリアはここに宣言する」王子は厳かな声で言った。「エリシア・フォンブルームとの婚約を解消する。理由は、私の心が既に別の人物に向いているからだ」

 

会場からはざわめきが広がった。エリシアは冷静を装いながらも、内心では焦りが広がっていた。

 

(今よ!真実視、発動!)

 

エリシアの視界が変わった。人々から放たれる感情や意図が色とりどりのオーラとなって見えてくる。特に王子の隣に立つ少女から、濃密な緑色のオーラが渦巻いていた。明らかな嘘と欺瞞の色だ。

 

「ふふ、やはりね...」

 

しかし次の瞬間、予想外のことが起きた。

 

「ピカーッ!」

 

エリシアの両目から強烈な光が放射された。まるでサーチライトのように、大広間全体を照らし出す。

 

「な、何事だ!?」

「魔法?攻撃か?」

「護衛、王子様を守れ!」

 

一瞬で広間は騒然となった。

 

「ち、違うの!これは—」

 

パニックに陥ったエリシアは慌てて目を押さえるが、光は指の隙間からも漏れ出る。

 

騒ぎの中、王子の新しい婚約者が声を上げた。「私は王子様だけを愛しております!このような魔女の妨害があっても、私の愛は変わりません!」

 

その瞬間、エリシアの体が勝手に反応した。

 

「ウソつけーーーっ!」

 

大広間に響き渡る声。自分でも信じられない大声だった。

 

「!?」

 

驚愕の表情を浮かべる貴族たち。エリシアは内心で絶望した。

 

(何これ!?こんなはずじゃ…ゲームにはなかった展開よ!)

 

さらに悪いことに、彼女の体が王子の婚約相手から魔力を吸い取り始めた。緑色のオーラが少女から抜け出し、エリシアの体内に流れ込む。

 

「うっ…こんなに多い魔力…制御できない…」

 

体内で魔力が暴れ始め、鼻がムズムズしてきた。

 

「は、はっ…はっくしょーんっ!」

 

大きなくしゃみと共に、制御不能な魔力が放出された。青白い光が広間を包み、一瞬の閃光。

 

光が収まると、広間は凍りついていた。床は氷の層で覆われ、柱には氷柱が形成され、最も悲惨なのはレオン王子だった。彼の髪は一瞬で凍り、バリバリと砕け落ちた。そして残ったのは、完璧な坊主頭。

 

「私の髪が…!」王子の絶叫。

 

そして王子の婚約相手のドレスも、なぜか透明になっていた。

 

「きゃああああ!」悲鳴と共に彼女は床に座り込む。

 

「魔女だ!」「悪魔の力を使った!」「エリシア様に呪われた!」

 

貴族たちの非難の声が広間に響き渡る。

 

エリシアは膝から崩れ落ちた。

 

(何よこれ…チートのはずなのに…全然制御できないじゃない…)

 

***

 

翌日、王宮での裁判。

 

「エリシア・フォンブルーム、貴様は王子殿下への攻撃と、禁忌の黒魔術使用の罪で、ここに国外追放を言い渡す」

 

王国の大臣が厳かな声で宣告した。

 

「な…攻撃なんてしていません!あれは事故で—」エリシアの弁明も空しく、裁決は覆らなかった。

 

フォンブルーム公爵家の名誉は地に落ち、彼女の父は激怒していた。

 

「恥知らずな娘め!お前はもはやフォンブルーム家の人間ではない。今日限り勘当だ」

 

(なんで…なんでこうなるの?チート能力で逆転するはずだったのに…)

 

荷物をまとめる間もなく、エリシアは護衛に連れられて国境へと向かった。持ち物は着の身着のままのドレスだけ。所持金はわずかなポケットマネー。過酷な条件だったが、それでも彼女は生きる決意を固めていた。

 

国境の検問所で、エリシアは最後に王国の土を踏んだ。

 

「これより、エリシア・フォンブルーム、お前は永遠にクリスタリア王国から追放される。二度と足を踏み入れれば、それは死罪」

 

護衛の言葉と共に、彼女の貴族証明書は引き裂かれた。

 

***

 

辺境の小さな村で、エリシアは宿の一室で鏡を見つめていた。彼女は迷わず長い黒髪をハサミで切り落とした。短いボブヘアが彼女の新しい姿。

 

「もう『エリシア・フォンブルーム』は存在しない。これからは『エリー』として生きていく」

 

彼女はわずかな所持金で冒険者のための簡素な服を購入し、身につけた。

 

「冒険者ギルドか…異世界転生者なら定番の職業よね」

 

 

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