少女☆歌劇レヴュースタァライト-obbligato-   作:RNKI

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第3話「クラスメイト」

小さな星を摘んだなら、あなたは小さな幸せを手に入れる。

大きな星を摘んだなら、あなたは大きな富を手に入れる。

その両方を摘んだなら、あなたは永遠の願いを手に入れる。

星摘みは罪の赦し、星摘みは夜の奇跡。

 

お持ちなさい あなたの望んだその星を。

 

 

 

「私は、1人でもスタァだ!!!」

天堂真矢と愛城華恋のレヴューは、思えばあっという間の決着だった。

常に他者を圧倒する天堂さんが持つ純粋な強さ、それが彼女自身の人生を体現しているのだろう。

99期生の主席であり、両親共に超エリートの所謂サラブレッド。

「This is 天堂真矢。頂に煌めく星は一つ」

次の瞬間、カーテンの幕が降りた。

 

 

 

選ばれた少女だけが参加出来るオーディション。

そのオーディション、つまりレヴューに勝ち抜くと星のティアラが手に入り、トップスタァになれる。

ただし負けてしまった場合、その人の一番大切な物を失ってしまう...

一通り見聞きした情報を整理し、ノートに書き込んでいく。

ちらりと横を見れば、静かに寝息を立てるひかりちゃんの姿があった、

1人しかトップスタァになれないのなら、いつかひかりちゃんと華恋ちゃんは戦う事になってしまう。

お互いの一番大切な物を賭けて。

ーーそれにしても...

 

『星見さん!!』

『えっ?冬咲さん?!』

 

一度負けたらそれで終わりかと思っていたが、この3日を見る限り複数回行われる様だ。

ーー明日はまた華恋ちゃんと純那ちゃんが?それとも天堂さん?いやでも...

他にもこのオーディションに参加している人が居る可能性もあるし、華恋ちゃんの様に飛び入りしてくる可能性だってある。

そして誰がオーディションに参加しているか確かめる為にも、結局またあの観客席に行かなければならない。

このオーディションの事を忘れ、平凡な毎日を過ごすのは簡単だ。

実際そっちの方が観客席に向かう手間も無くなり、この悩みからも解放される。

でも、今更そうする訳にはいかないのだ。

これは少しの意地もあるが、大半はひかりちゃん達への心配が占めている。

一番大切な物を奪われる、そんな理不尽な出来事が彼女達の身に起こってしまったら。

知っていて無視した自分を一生恨むだろう。

だからこそこんな私でも役に立てるのなら立ちたい、そう思ったのだ。

ーー....まだまだ情報が足りないな...

私はボタンを押して机の電気を消すと、そのまま自分のベッドに入る。

完全に温もりが消えてしまっている為、それ程長く考え込んでしまったのだという事が分かる。

そうして眠そうとすると、隣のベッドから小さく布の擦れる音がした。

ーーひかりちゃん...?

「....雪乃?」

私はひかりちゃんのベッドに全身を向け、彼女の様子を確かめようとする。

「ごめん、起こしちゃった?」

「....違う、偶然目が覚めただけ」

それが気を遣っての事か本当の事かは私には判断出来ないが、声色は柔らかいので平気そうだ。

ひかりちゃんは1度寝返りを打ち、横たわった状態でこちらに顔を向けてくる。

そのままお互い目を合わせる事数十秒...

「....」

「....」

ーーえ?何これ?

ついにひかりちゃんの視線に我慢出来なくなってしまい、私は目を逸らしつつ疑問を投げ掛ける。

「...寝ないの?」

「今寝たら、起きられなくなる」

そう言われ時計に目をやると、短い針は5を刺していた。

そこから自分の睡眠時間を計算して少し気が重くなるが、今は気にしない事にする。

ーー今日は休みだからゆっくりしても...まあひかりちゃんストイックそうだし、起きる時間も決めてるのかな。

「私は起きられると思うから、起こそうか?」

「大丈夫、出掛けるから」

「そっか」

出掛ける。

一瞬スルーしたその言葉に引っ掛かり、私はそこに具体性を求める。

"大丈夫、迷惑だから"ではなく"大丈夫、出掛けるから"という返事。

私の考え過ぎかもしれないが、一応聞いてみる事にした。

「出掛けるってもしかして....今から?」

「今から」

ーーですよねー!!

恰も当然の様に返事をした彼女は、ベッドから起き上がりそのままゆっくりと歩き出す。

最初は荷物の準備かと思ったものの、その直線的な進路取りに段々と焦りが強くなっていく。

ーーえっ?えっ?!

「雪乃、ちょっと空けて」

「ほえっ」

当然の様に私のベッドに入ってきて、そのまま抱き着いてくるひかりちゃん。

勿論心の中で散々褒め称えていた彼女が至近距離に来て冷静で居られる訳もなく。

「ひひひひ、ひかりちゃん?!」

私は焦りの声を上げ、バタバタと両手足を動かす。

が、その僅か1秒後に視界が暗転した。

「へ?あ、え?」

ーー良い匂い...じゃなくてヤバい...この状況って...まさかっ...!

「雪乃」

「ひゃうっ!」

吐息と共に囁かれ、身体中が熱くなるのを感じる。

「...ふーっ」

ーーあっーーーー

次の瞬間、私は意識を手放した。

 

 

 

私の目の前には、すやすやと寝息を立てた雪乃が眠っている。

少しでも顔を近付ければ彼女の唇とくっついてしまう、それくらいの距離。

あの夜と殆ど同じ光景だが、今回は明確に私から仕掛けた結果の光景だ。

あのまま雪乃が起きていると、きっと私はすぐに出掛けられなかっただろう。

何故か失敗を危惧する感情は私の頭の中には無く、こうすればいけるという自信もあった。

彼女の好意をこういう形で利用したのは申し訳ないが、この際割り切るしかない。

私はベッドから静かに出ると、そのまま自身のキャリーケースに目を向ける。

ーー....華恋。

 

『駄目よッ!華恋!!』

 

『私、行かなきゃ!』

 

オーディションから降りて欲しいとあれだけ言ったのに、倉庫に閉じ込めまでしたのに、それでも彼女は参加し負けてしまった。

私の為にオーディションに参加したのなら、今すぐ私の為にオーディションから降りて欲しい。

このままだと、2人でスタァには...

「....バッ華恋」

そう呟いて、私は出掛ける準備を進める事にした。

 

 

 

「やっぱり居なーい!!」

「うひゃああああ!!!!」

突然の大声と扉を開ける音により、一瞬にして夢の世界から醒まされてしまう。

慌てて飛び起きると、正面の扉から華恋ちゃんとまひるちゃんがこちらを覗いていた。

「ちょっと華恋ちゃん!雪乃ちゃん起こしちゃったよ!!」

「あーっ!ごめんね雪乃ちゃん!!」

ーーその声で余計に頭が痛いんですけど...

華恋ちゃんはそのまま慌てて部屋の中に入ってくると、そのまま私の隣まで駆け寄ってきた。

「ひかりちゃんが居ないの!!」

「ひかりちゃんが?」

「うん、それで華恋ちゃん朝から...え?」

遅れてやってきたまひるちゃんの言葉が、突如として止まる。

そして数回私の周りの匂いを嗅ぐと、何故か突然抱き着いてきた。

「ちょっ?!」

「....どうして」

「え?」

「どうして雪乃ちゃんから神楽さんのッ!」

「おーい華恋、神楽は見つかったのか?」

まひるちゃんの危機迫った声を遮る様に、廊下から少し声の低いボーイッシュな声が聞こえてきた。

ーーこの声確か...石動双葉さんだったっけ?

「居なーい!あーもう!」

「あっ、華恋ちゃん!」

ドタバタと足音を立てて、2人はものの数秒で部屋から立ち去っていった。

ーーな、何だったんだ一体...

 

『大丈夫、出掛けるから』

 

「あっ」

一変して静かになった室内で、私は今朝の出来事を思い出す。

「...やっぱり」

そうしてキャリーケースが無くなっている事を確認し、悲しみを含んだ言葉を吐き出した。

 

『大丈夫、出掛けるから』

 

ひかりちゃんの行方は分からないが、少なくともあの言葉と室内の様子を見る限り自分の意志で出掛けたのは確かだろう。

ーーなんでひかりちゃんはあんなに朝早くから...それに誰にも伝えてないみたいだし...

もしかしたら、私が起きているとすぐに出掛けられないと判断した為あんな行動をしたのかもしれない。

ーー...ショック。

朝から更に気分を落としてしまい、私は惰性でゆっくりと身支度を始める事にした。

 

 

 

「あっ雪乃ちゃん、おはよう」

リビングに着くと、ななちゃんが真っ先に挨拶をしてきた。

ーーッ!...服....!薄い...!ヤバッ...!

私の落ち込んでいた気分、戻るどころか突き抜けた。

ーーいやいやいやいや、何考えてるんだ私!

同性の幼馴染に邪な気持ちを持ちそうになってしまったが、寸前で何とか頭を切り替える。

「おはよう、今日も可愛くてえっ...」

切り替えられてなかった。

「へっ?!?!」

先程と打って変わって顔を真っ赤にしたななちゃんは、そのまま私から顔を背けてカウンターに置いてあったコーヒーを口にした。

「相変わらずお熱おすなぁ」

特徴的な京都弁の声の主は、ソファーで石動さんの膝を枕にしているーー

「花柳香子さん...でしたよね、そっちもそっちでお熱い様な...」

「こらご褒美どす、双葉はんはうちの重みを感じてへんと不安になってしまうから」

「おい、そんな事言ってたら降ろすぞ〜」

「えーっ、まだ眠いわぁ!」

ーーお熱いですね...

そんな2人のイチャイチャを立って見ていると、純那ちゃんが自身の隣の椅子に手をかざした。

「座ったら?」

特に断る理由も無いので隣の椅子に座り、そのままソファー側へ体を向ける。

リビングには私の他にななちゃんと純那ちゃんがカウンター側、ソファー側には石動さんと花柳さん、そして西條さんと天堂さんがそれぞれ若干困った様な顔をしながら座っている。

そして恐らくその表情の原因は...

「ダメェ〜...ひかりちゃん、屋上にも食堂にもボイラー室にも居ない...」

十中八九、たった今息を切らして入ってきた彼女だろう。

ーーやっぱり出掛けたって事は誰も知らないのかな?なら...

「ひかりちゃんなら今朝、出掛けるって言ってたけど」

「えっ?それ本当?!」

私が小さく呟いた瞬間、一瞬で華恋ちゃんが私の両手を掴んで顔を近付けてきた。

ーーち、近っ!...顔良!!

思わぬ接触に焦っていると、大きな足音を立ててまひるちゃんが間に割り込んできた。

「ふ、2人とも!」

「ふぇっ?どうしたのまひるちゃん」

「えっ?あ、いやその...」

不思議そうに首を傾げる華恋ちゃんは、数秒リビング内を歩くとそのまま全身を使って大きく溜め息を吐いた。

「はぁーー」

「でも出掛けてるんだとしたら...」

「電話、掛ければ良いんじゃない?」

「あ!!!」

ーーまだ電話してなかったの?!

「ばななナイス!ばなないす!!」

「...ばなないす」

華恋ちゃんはななちゃんの髪を数回持ち上げた後、すぐにポケットからスマホを取り出し操作し始める。

そして華恋ちゃんの言葉を反復させたななちゃんは妙に嬉しそうな声で先程の言葉を呟きながら自身の髪を何度か触っていた。

「あっ、ひかりちゃん?!もしもし!」

どうやら電話はしっかりと繋がった様で、一先ず若干の不安感が取り除かれる。

がしかし、華恋ちゃんが心配からか矢継ぎ早に言葉を重ねていく最中にその電話は切られてしまった。

慌てて華恋ちゃんが電話を掛け直すも、無言でスマホに耳を傾ける姿を見るに機械音以外は流れていないらしい。

「キーッ!何考えてるのー!!」

スマホに小言をぶつけて何処かへ走り去っていく華恋ちゃんを見て、思わず笑みが溢れてしまう。

「どうしたの?雪乃」

「何だか元気だなぁって....ていうかそういう純那ちゃんも笑ってるよ?」

「えっ、本当?」

「.....ねえ」

純那ちゃんの少しびっくりした声の後、声のトーンが低いななちゃんの声が入ってきた。

「どうしたのなな?」

「2人って、いつから下の名前で呼び合ってるの?」

「いつからって、それは...」

 

『ただしこのオーディションは極秘につき郊外無用、誰かに話せば罰金です』

 

キリンの言葉を思い出し、すんでの所で何とか言い留まる。

ーーなんて言おう...

ちらりと純那ちゃんを見ると、どうやら彼女も同じ考えでこちらに目線を向けてきていた。

「...昨日から、かな」

「昨日?どうして?何がきっかけで?」

「な、なな?」

何かオーディション以外で....

 

『まあ同室だから仲は良いわね』

『ねーっ、純那』

 

ーーそうだ!保健室!

 

「あの...保健室で純那ちゃんとななちゃんが仲良さそうだったから、羨ましくて...」

実際これは嘘では無い、あの時羨ましいと思った事は紛れもない事実だ。

「......なんで...」

「え?」

「ごめん、ちょっと用事思い出したから」

そう言って立ち上がり、先程華恋ちゃんが出て行った方向に歩いていくななちゃん。

「...どうしたんだろ、ななちゃん」

「分からないけど...やらかしたのは確かね...」

どうしようもない怒らせたという事実に対しての対処方法を持ち合わせていないので、私達はただお互いに会話を重ねるしかなかった。

 

 

 

「大丈夫、絶対一緒に帰ってくるから!」

ひかりちゃんを探しに玄関を飛び出して行った華恋ちゃんを見送り、漸くそれぞれの休日が始まった。

そうして私も何となくお昼の予定を考えながらリビングでゆっくりしていると、体操服に着替えた西條さんが近付いてきた。

「今良いかしら?」

「はい、大丈夫ですけど...」

顔を合わせるのは昨日の廊下と合わせて2度目になるが、あの時は天堂さんとだけ話していたので実質初対面と言っても良いだろう。

西條さんに連れられ庭に出ると、彼女はこちらに背中を向けたまま口を開いた。

「天堂真矢とはどういう関係なの?」

ーー....え?

「天堂さん、ですか?」

私が疑問を投げ返した瞬間、彼女は顔を限界まで近付いてきた。

「Dis donc!あの天堂真矢が...っ!」

ーー何か事情がありそうだけどお顔が良過ぎて集中出来ません!!

「あ、あの私さっぱり...」

「あの天堂真矢が、なんであんたに興味を持ってるのかって聞いてるのよ!」

「...えっと、ご本人にお聞きすれば...」

「それじゃあ負けたみたいじゃない!!」

ーー何の勝負をしてるんですか?!

とにかく昨日のお風呂の件が誤解を生んでいる事は確かなので、ここは素直に弁明する。

「た、多分ですけど....多分天堂さんが気にしてるのは私じゃないと思います」

「なら誰だって言うの?」

「ひかりちゃん...神楽ひかりだと思います」

「神楽....ひかり...やっぱりあの時の...」

「あの...あのー?」

すっかり考え込んでしまった西條さんに対してどうする事も出来ないで居ると、背後から話題の人物の声が聞こえてきた。

「何の話をされているんですか?冬咲さん」

「あっ」

最悪は免れたものの、それでもあまり嬉しくないタイミングで天堂さんがやってきた。

ーー気まずい....!

誤解を解く為とはいえ、天堂さんと2人でした会話を西條さんに話してしまったのは事実。

ーー...そうだ、もう西條さんに丸投げしちゃおう...!

元を辿れば西條さんが直接聞かないのが悪いと判断した私は、即座に天堂さんと目を合わせた。

「さ、西條さんが天堂さんに話したい事があるみたいで...ごめん遊ばせー!!」

突如現れたお嬢様言葉と共に、私は逃亡を選択した。

 

 

 

「って事は....ッ天堂真矢?!いつからそこに!」

「ぷぷっ....ごめんあそばせ....ぷっ....」

「天堂真矢...?」

 

 

 

「はぁ...どっと疲れた...」

誰も居ないリビングに戻ってきた私は、思わずソファーに倒れ込んだ。

ーー皆何処に行ったんだろう...

今朝の様に大抵リビングに居るものだと思っていたが、どうやらその予想は外れてしまったらしい。

先程までの忙しさが若干恋しくなる程の静けさが室内を支配し、私は仰向けに姿勢を変える。

そうしてやる事が無くなった私は、いつの間にかあのオーディションの事を考え始めていた。

ーーそういえばあのキリン、オーディション3日目とか言ってたっけ。

流石に休日の今日4日目のオーディションがあるとは考え難いので、恐らく来週の月曜日だろう。

オーディションが何日あるのかは分からないが、少なくとも私は決着するその時までそこに立ち会わなければならない。

「あ、雪乃ちゃんっ!」

「まひるちゃん?」

ソファーに寝転がりながら考え込んでいると、リビングにまひるちゃんが入ってきた。

彼女を見ると無性に安心感を覚えるのは、その人柄もあるだろう。

まひるちゃんはそのまま私の側まで歩いてきて、しゃがむ様な格好を取った。

ーー顔近い...!かっこよ可愛い過ぎて目がっ...!

「ど、どうしたの?」

動揺を悟られない様に何とか誤魔化そうとしたが、彼女の返事によってその想いは吹き飛んでしまった。

「...雪乃ちゃんは私を置いていかないよね」

「えっ?」

不安感を露わにしてこちらを覗き込んでくる彼女を見た瞬間、その言葉に対する答えは既に浮かび上がっていた。

ーーそんなの、答えは一つに決まっている。

「当たり前でしょ、やっと再会出来たんだから」

「っ!そうだよね!えへへ」

ーー良く分からないけど喜んでくれた、可愛い。

「入学してからこうしてちゃんと話すのって、意外に初めてだよね?」

「う、うん!そうだね」

「ずっと華恋ちゃんばっかり構ってたから、寂しかったんだよ〜?」

「ほえっ?!」

「いや〜それにしてもまひるちゃん、久しぶりに会ったらカッコよくて可愛くて...」

「へっ?!」

「ドキドキが止まらない〜!みたいな?」

冗談を交えながら本音をぶつけると、まひるちゃんは驚いた顔のまま固まってしまった。

「まひるちゃん?」

「....う」

「う?」

「うひゃああああああああああああ」

「ぐぇっ!.....」

 

 

 

「あっ」

自らがやらかした事に気付いたのは、雪乃ちゃんにクッションを投げ付けた直後だった。

「ご、ごめんね雪乃ちゃん!!」

急いでクッションを退かすと、そこには静かに息を立てて倒れている雪乃ちゃんの姿があった。

ーーや、やっちゃった....!

罪悪感が襲ってくるが、すぐに別の事に意識が持っていかれる。

「...ふふっ」

あの頃から勿論成長を遂げた彼女の顔は、相変わらず可愛らしく大好きだ。

ーーそう、大好き...

「....」

耳を澄まして辺りの音を聞き、物音の一つもしない事を確認する。

どうやら本格的にあの2人は帰って来ない様だ。

でも、もう大丈夫。

「....っ...」

だって私には。

顔を近付けていくにつれ、心臓の鼓動が速くなっていく。

あと1cm....あと....

 

 

 

ーー雪乃ちゃんと純那ちゃんが、名前で呼び合ってた。

雪乃ちゃんのあの表情からして、何か大きな出来事があったのは事実。

「...間違えた?いや、まだ...」

まだ対等になっただけ。そう、呼び方に関しては。

純那ちゃんに対して雪乃ちゃんは嫉妬しない、嫉妬してくれるのは私だけの特権だ。

「幼馴染の、私だけ...」

 

『ほ、ほんとにまひるちゃんなの?!嘘じゃないよね?!』

『うん!うんっ!雪乃ちゃん!!!』

 

ーー本当に?

窓の外の良い天気とは裏腹に、私の心は曇ったままだった。

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