新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

17 / 33
第16話 配信:戦闘服お披露目

草原の丘を私とこいちゃんが爆走する。

追いかけっこを始めてから10分以上経ってるけど、一向にこいちゃんを掴まえられない。

 

 

「こ、これがステータスの差ってやつなんだね……」

 

「なほちゃん、遅い」

 

「くっ、絶対に掴まえるっ……!!」

 

「こっちおいで~」

 

「うにゃああああ!!」

 

 

完全にこいちゃんに手玉に取られながらも私は必死に走る。

最初はじゃれあい位のつもりだったけど、こうなっては後に引けない。

 

 

【仲良しやなあ】

 

【かれこれ15分くらい追いかけっこしとるww】

 

【チャイナ服の娘は余裕そうだね】

 

【いなほちゃん、おちょくられとるww】

 

【猫みたいな声出しててカワイイ】

 

【てかステータスに差があるなら一生捕まえられないだろ】

 

【それはそう】

 

【我々はこの鬼ごっこを一生眺めるのか……】

 

【まあそのうち諦めるやろ】

 

【というかこの子達だけホントにASTOとは別ゲーやってるんじゃないかって感じだよな】

 

【他のミディメンはちゃんと異世界冒険者っぽい事しとるからなあ……】

 

【デスゲームなのによくダンジョンアタックとかできるよな】

 

【さすがミディメン、狂人の集いやでえ】

 

 

コメント欄に目も向けず私がこいちゃんを追いかけていると、私の肩に掴まっているイロハがひょこッと顔を近づけてくる。イロハの何か言いたげな視線を感じた私は小さく首を傾げて見せる。

 

 

「ご主人、こうなったら本気を出そう」

 

「本気? もうマックスで走ってるけどっ」

 

「ご主人、スキルだ。あのスキルなら追いつける」

 

「……イロハ、ナイスアイディア!! それじゃあ……スキル発動:神降(しんこう)!!」

 

 

私が声を張り上げると、肩に乗っていたイロハと一体化するような感覚に襲われる。次の瞬間には走っている速度が一気に加速してこいちゃんの背中が近くなってくる。……これなら追いつけるっ!!

 

 

「なほちゃん、きつねみみ」

 

「つかまえ……って、うわあっ!!」

 

「……かわいい」

 

 

追いつける、と思った刹那、こいちゃんは急に立ち止まってこちらを向く。

 

突然の予想外な行動に、私は走っていた勢いそのままに何故か腕を広げて待ち構えるこいちゃんへと突っ込んでいく。衝撃とともに私はこいちゃんに抱きとめられる形で草原に倒れ……そしてケモミミを撫でられる。

 

 

【へ?】

 

【ふぁ!?】

 

【かわいい】

 

【いなほちゃんから……ケモミミと尻尾が……】

 

【なんか生えてきたwww】

 

【かわいい】

 

【こいちゃんwww】

 

【もはや捕まりにいっとるやん】

 

【というより抱きつきにいってモフモフしとる】

 

【裏山けしからん】

 

【百合って、いいよね】

 

【女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思うの】

 

【でたな百合厨どもww】

 

 

コメントから察するに、カメラには私から生えた狐耳も狐尻尾もばっちり映っているんだろう。私の視界の端は歓喜のコメントで溢れている……は、恥ずかしい。とにかく、こいちゃんの腕から逃れなければ。

 

 

「きゅ、急に立ち止まらないでよっ!!」

 

「もふもふ、したい」

 

「怪我したら危ないでしょ!!」

 

「それを言うなら追いかけてきたなほちゃんが悪い」

 

「それは……そうなのかもだけどっ!!」

 

「でも、たしかに危なかった。なほちゃん、ごめん」

 

「う、うん。分かってくれたら、それで……って、なんで追いかけてたんだっけ?」

 

「わすれた……それより、視聴者さん、なほちゃんのケモミミにビックリしてる」

 

「あ、そうだよね……皆さん、どうですか?」

 

「なほちゃん、バージョン2」

 

「というよりはイロハ一体化バージョン?」

 

「とりあえずモフモフしたい」

 

 

立ち上がってカメラに視線を向けると、こいちゃんが後ろからハグしてくる。

 

その場の勢いでスキルを発動しちゃったけど、視聴者さん的には突然私から耳と尻尾が生えてきたってことだもんね。稲取いなほのVtuberアバター差分でケモミミはあったけど、その時はネコミミとかだったから、新衣装って程ではないけど、イロハ一体化バージョンはお披露目ってことになる……のかな?

 

 

【かわいいです!!】

 

【イロハくんと一体化してるのか】

 

【尻尾モッフモフしとる】

 

【こいちゃんまた抱きついてるww】

 

【百合は世界を救うのです……】

 

【同期の愛……これはてぇてぇですわ】

 

【ケモミミかわいいね!!】

 

【めっちゃ良いと思います!!】

 

 

うん。ちょっと恥ずかしかったけど、反応が良い感じだから結果オーライってことにしよう。

 

……よくよく考えたら、さっきから私ばっかりでこいちゃんが武器の紹介とかをしていない気がする。私の視聴者さんにスイ君や赤兎君の紹介もできてないし……。もうすぐ配信始めて3時間くらい経ってるから、ちょうどいいタイミングかもしれない。

 

 

「こ、こいちゃん離して~!! 私のことはたっぷり紹介できたから、こいちゃんの武器とか見せてあげよ? 視聴者さん達も見たいって言ってたよ。―—―スキル解除、イロハ戻っておいで」

 

「ケモミミ、無くなっちゃった。……じゃあ、スイ」

 

「合点承知ですぞ、鯉殿っ!!」

 

「—―—―武装展開」

 

 

少し名残惜しそうな表情を浮かべたこいちゃんがようやく私を離してくれる。

 

こいちゃんに呼ばれて流れるように滑空した小龍(ミニドラ)のスイ君が飛んできたかと思えば、その場で宙を一回転する。次の瞬間、こいちゃんの手にはお馴染みの小龍偃月刀が握られていた。気づけば近くに赤兎君も寄ってきていて、もう完全に三國無双の世界観が完成していた。……私の幼馴染、格好良すぎません?

 

 

【なにそれカッコいい】

 

【これは惚れる】

 

【これって青龍偃月刀だよね】

 

【だとすると赤毛の馬は赤兎馬ってことか】

 

【これは三國無双で見たことあるやつ】

 

【めっちゃ強そうやなww】

 

【こいちゃんのアバターが中華風だから色々想像してたけど、この武器は解釈一致すぎる】

 

【和風&中華コンビいいね】

 

【女だけど惚れました】

 

【こいちゃんは女子校でモテるタイプだよね】

 

【こいちゃんはいなほちゃんしか見てなさそうww】

 

【やはり世界の真理はいなこいなのである】

 

【全ての道はいなこいに通ず】

 

【結局その結論になるのね笑】

 

 

コメントもこいちゃんへの反応で盛り上がっている。

 

もはや同接の視聴者数は桁数が多くて把握できていないけど、とにかく普段の配信よりも遥かに多い事だけは分かる。デビュー配信以来の注目度だと思うし、少しでも私とこいちゃんのチャンネル登録者数の増加に繋がるといいなあ。……そのためにも、もう少しだけ配信を頑張ろう。

 

 

「せっかくだしモンスターとか探して戦って見たりする?」

 

「……?」

 

「はあ、ご主人……」

 

「……私なんか変なこと言っちゃった?」

 

「なほちゃん、この辺に敵はいない」

 

「え、なんで?」

 

「ご主人、このエリアを支配してるのは誰だ?」

 

「……あっ」

 

「なほちゃん、この丘の覇者」

 

「そ、そうだったね……」

 

 

こいちゃんとイロハに呆れたような視線を向けられた私がっくりと肩を落とす。今の今まで自分がこの丘の支配者になってたのすっかり忘れていた。そりゃ戦闘なんてある訳ないよね。

 

視界の端では既にこいちゃんの「丘の覇者」発言に喰いついた視聴者さん達のコメントが流れている。……どうしよう、今から経緯を説明するのが面倒くさい。

 

 

「あはは……その話はまた次の機会にお話ししようかな。もう配信を初めて3時間半くらい経ってるし、今回はこの辺にしようかな~と思いますっ!!」

 

「……なほちゃんが終わるなら私も配信終わる」

 

「そ、それでは、ここまで私達の配信にお付き合い頂きありがとうございましたっ!! 私 稲取いなほとこいちゃんのチャンネル登録もよろしくお願いします!! それでは、おつコンでした~」

 

「おつコイでした~」

 

「あっ、真似したっ!!」

 

 

こいちゃんの締めにツッコミながらメニューの配信終了ボタンを押す。

 

……そのタイミングで緊張が一気にほどけて、全身にドッと疲労感が押し寄せる。配信中は分からなかったけど、自分が思っている以上に体力を使っていたのかもしれない。思わず大の字になって草原に仰向けに倒れる。

 

 

「……丘の支配者のこと話さなくて良かったの?」

 

「うん。こうすれば次の配信も見に来てくれるかもしれないし」

 

「そうかも。なほちゃん、策士」

 

「あはは、ありがと。それじゃ、配信終わったし村に戻る?」

 

「そうする。結構疲れた」

 

「そうだね~。緊張もしたし、久々だったし。……それじゃアッシュくん、お願いしていい?」

 

《承った。配信、とやらも見ていて意外と面白かったぞ》

 

「そう? そう思ってくれたなら良かったよ」

 

「赤兎、私達も行こう」

 

 

私が立ち上がってアッシュくんに跨ると、それに続いてこいちゃんも赤兎君に跨る。

 

まだまだ太陽は高いけど気分は完全に一仕事終えた感覚になってる。アッシュくんの背中で揺られながら私は大きく伸びをする。……村に帰ったら宿で休憩しようかな。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。