新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~ 作:梯子田カハシ
「ふぁ~……んん、寝ちゃってた……」
「すー……すー……」
心地よい睡眠からゆっくりと覚醒した私の視界に薄暗い天井が映る。横を見ると抱き枕のように布団にしがみついたこいちゃんが寝息を立てている。配信が終わって宿に戻ってきた私達は、部屋の布団にダイブしてそのまま眠ってしまったようだ。私もこいちゃんも久々の配信で少し疲れていたのかもしれない。
「えっと、時間は……9時過ぎだから、6時間も寝ちゃってた」
開いたままの窓からは夜空と月明かりが見える。
これが学生時代の休日とかだと割と絶望モノだよねえ。まぶたを擦って部屋の中を見回すとイロハとアッシュも隣の座敷で仲良く一緒に寝ている。……こうやって見るとシルヴァーウルフのアッシュくんと白狐のイロハが兄弟みたいで、なんかほっこりする。
「……どうしよう、やることない」
小さく呟いた私は寝ているみんなを起こさないように忍び足で部屋を出る。
とりあえず1階に行ってみようかな。誰かいるかもしれないし、ちょっぴりお腹もすいた。
▼ △ ▼
木が軋む音を聞きながらゆっくりと階段を降りる。
マサキ村の村長であるユタカさんのご厚意で泊めさせてもらっているこの宿屋は2階建て、全部で9部屋の客室と宴会場がある村では一番大きな宿屋だ。ヤスケ君に聞いたところによると、このマサキ村にお客さんが来ることは滅多にないみたいで、私達の泊っている2階の大きな客室が使われるのは数年に1回の偉い役人さんが来る時くらいのようだった。
「あら、いなほさん。起きたのね」
「あ、ウメさん。こんばんは」
余り物で料理しようかとチラッと台所を覗くとウメさんの姿があった。
お客さんが殆んどいないんだから、当然この宿に常駐する女将さんもいない。普段、お客様が来れば村長さんであるユタカさんが宴会場で歓迎会をしてそのまま泊まってもらうし、そもそも普通はどんなお客様でも1泊が基本で何日もこの宿にいることはないみたいだ。そんな中で既に4泊もしている私達の面倒はヤスケ君とヤヨイちゃんのお母さんであるウメさんが見てくれている。というかヤスケ君とヤヨイちゃんもこの宿の1階で過ごしている。
「お腹空いちゃったかしら? おにぎり食べる?」
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ。そこに座って待っていてね」
……なんか、ほんとのお母さんみたいだ。
優しく微笑んだウメさんに促されて私は台所と繋がった宴会場の端に座る。……ど、どうしよう。手持ち無沙汰になってしまった。……あ、どうせだしステータスでも確認してようかな。
「えっと、ステータスは……」
なんとなくメニュー画面をスクロールしてステータスを確認してみる。
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●基礎情報
〘名前〙稲取いなほ
〘種族〙ヒューマン
〘職業〙稲取稲荷 巫女
〘性別〙♀
〘年齢〙19歳
〘称号〙アストリア/天使殺し/草原の丘の支配者
〘武器〙
〘装備〙
●ステータス
〘LV〙4
〘SP〙45
〘HP〙425/50 :体力×10
〘MP〙75/75 :体力×魔力
〘物攻〙10 :体力+筋力
〘魔攻〙20 :体力+魔力
〘物防〙10 :体力+敏捷
〘魔防〙55 :体力+精神
●基礎パラメーター
〘体力〙5
〘筋力〙5
〘魔力〙15
〘敏捷〙15
〘精神〙50
〘運命〙大吉
振分可能ポイント:25pt
●特殊パラメーター
〘登録者〙1,213,362:登録者数の0.1%をHPに加算
〘同接数〙0 :同接人数の0.1%を攻撃に加算
●職種スキル
〘
〘
〘
●スキル
〘調薬:サブジョブ未開放のため使用不可〙
〘-----:未設定〙
〘-----:未設定〙
〘-----:未設定〙
振分可能ポイント:45pt
●ホーム
〘稲取稲荷神社:未設定〙
●眷属
シルヴァーウルフ:アッシュ
・付与スキル:
・付与スキル:
ウルフ:アッシュ配下32匹
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前に見た時と変わった所は……称号に「草原の丘の支配者」か追加になってるのと、レベルが1から4に上がってる。それに伴って基礎パラメーターに振り分けられるポイントが貯まってる。あとは……なんか登録者が凄く増えている。たしかASTOに巻き込まれたときに90万人強だったから純粋に1回の配信で30万人近く増えたことになる。
「せっかく100万人行ったけど、なんか複雑……」
小さく呟いてから首を振る。ネガティブになっちゃだめだ。
……あとステータスで気になるのはスキルの調薬の部分。サブジョブ未開放ってことは、多分だけど薬師?的な職業を解放すればポーションとかを作れるようになる、ってことなんだと思う。もしかして、この村にもポーションを作れる人とかいるのかな?
「う~ん……」
「いなほさん、おにぎりとお味噌汁できたわよ」
「あ、ありがとうございます。」
台所からウメさんがお新香が添えられたおにぎり2つとお味噌汁を持ってきてくれる。
見た目からして既に美味しそうなお夜食に思わずお腹が鳴ってしまう。
「……聞こえました?」
「食べ盛りなのは良いことよ。それにしても、難しい顔をして何か悩みごと?」
「えっと、ポーションとかって私でも作れるものなのかなって」
「あら、いなほさんは薬師に興味があるのね」
「そうなんです」
「この村の近くにいたのは、それが理由だったのね」
「……と、言うと?」
「だってこの村は薬師の秘術が伝わるという伝説があるじゃない?」
……なんという棚から牡丹餅。
これってかなりの豪運な気がする。こうなったら「乗るしかない、このビックウェーブに」って感じだ。というか、多分この村って日本がコンセプトになっていて、薬師の秘術ってことは……不老不死の薬とか出てくる? でも蓬莱の伝説って島だったから違うのかな。
「薬師について教えて頂けますか?」
「わかったわ。いなほさんはあの子達の命の恩人だし、悪い人じゃないって分かっているしね」
「あ、ありがとうございます!!」
「うふふ。でも、まずはお夜食を食べてからね」
「は、はい!!」
ニコニコと微笑むウメさんに見つめられて私はおにぎりに食いつく。
……美味しい。まず純粋にお米が美味しいくて、さらにちょうどよく感じられる塩加減が絶妙。そしてしっかりと味の付いた具のしゃけが超絶合っている。……なんだか懐かしくて、温かい味だ。
気付けば1個目のおにぎりをペロッと食べてしまった私はパクパクと2個目を食べる。
それを見たウメさんは私の食べっぷりを見て嬉しそうにしている。……な、なんか恥ずかしくなってきた。
「そんなに急がなくても、おにぎりは逃げないわよ」
「は、はい……」
……お、美味しすぎるのがいけないんだからねっ!!
ツンデレっぽい言い訳を心の中でしながら私は2個目のおにぎりとお味噌汁を平らげるのだった。