新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

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第20話 橙色の瞳と長い耳

 

月明かりを背にした巨鳥が迫ってくる。

逆光でよく見えないけど、ツノ?みたいなものが生えている。

 

 

「イロハ、行くよ。―—―【神降(しんこう)】!!」

 

「おうよ、ご主人!!」

 

 

スキルでイロハと一体化して私は宇迦太刀を抜く。

急降下してきた巨鳥が鉤爪を前に出して接近してきて、ようやく巨鳥の正体が分かる。

 

 

「フクロウだ!!」

 

 

私を襲った巨鳥の正体はミミズクだった。

 

振り下ろされた鉤爪をギリギリ躱して宇迦太刀を振り抜く。ミミズクは私の攻撃を避けるようにしてそのまま急上昇、相手の橙色の瞳と目が合う。その瞳は決して攻撃的ではなく、どこか理性的な色を湛えている、ような気がした。……もしかして話せばわかってくれるタイプ? フクロウって頭良いって言うし。

 

 

「……【他心通】」

 

《……》

 

「こ、こんばんは~」

 

《……っ!! お主、話ができるのか?》

 

「あ、通じた。……あの、いきなり襲ってこないでもらえます?」

 

《む、むう。こちらだって襲いたくて襲っている訳ではない》

 

「ふーん……」

 

 

ホバリングをするミミズクが少しバツが悪そうな表情を浮かべる。

うん、やっぱり話せる系だったね。それに相手に多少なりとも罪悪感があるならむしろチャンスだ。

 

 

「それじゃ、誰かの指示ですか?」

 

《そ、それは言えん》

 

「やっぱり誰かの指示なんですね。私を倒しても何もないですよ?」

 

《ハナからお主を殺す気などない。それこそ本末転倒だ》

 

「そう言うってことは私を利用したいんですか? 理由は何です?」

 

《言えん。すまないが私に攫われてもらうぞ》

 

「あーあ。教えてくれれば協力することだってできたのにね」

 

 

私はふたたび宇迦太刀を構えてミミズクを睨む。

 

ミミズクの方も覚悟を決めたみたいでその橙色の瞳が真っ直ぐに私を捉える。ミミズクは羽ばたいて急上昇すると、さっきと同様に満月を背にして私めがけて一気に急降下をしてくる。

 

鋭い鉤爪が振り下ろされ、私もそれを摺り上げるように受け止めようとした刹那―—―

 

 

「ハロルド、お止めなさい!!」

 

 

凛とした声が月夜を切り裂いた。

 

 

▼ △ ▼

 

 

「わたくしの眷属が、大変失礼いたしました」

 

 

月明かりに照らされた女性が申し訳なさそうに頭を下げている。

 

頭を上げた女性と目が合う。月光に反射する綺麗な金髪に翡翠色の瞳、透き通った白い肌、整った顔立ち、そして長い耳。私の目の前にいる女性はいわゆる、エルフ、という種族なんだと思う。……スタイル良くて羨ましい。

 

 

「突然襲われたのはビックリしましたけど……」

 

「申し訳ございません。ハロルド、あなたからも」

 

《す、すまなかった》

 

 

ミミズクのハロルドくんが目に見えてシュンとしている。

 

ハロルドくんとエルフのお姉さんは主従関係みたいで、エルフお姉さんの鶴の一声でハロルドくんは私への攻撃を止めて私達はお話しすることになった。正直、展開が急すぎて全然ついていけていない。……丘を散歩していただけなんだけどなあ。

 

 

「そ、それで、お姉さんは……?」

 

「申し遅れました、わたくしエルフの里で巫女をしております、フィエリテと申します」

 

「巫女ってことは……私と同じですねっ!!初めまして、稲取いなほ、です!!」

 

「同じ、ということは……やはりあなたが、紅白の巫女……」

 

「ん? 何か言いましたか?」

 

「何でもありませんわ。それにしても、改めてウチのハロルドが失礼いたしました」

 

「大丈夫です。乗り気だった訳ではないみたいですし、それよりも……」

 

「それよりも?」

 

「フィエリテさん達は何か困りごとがあるんですか? それこそ私を攫わなきゃいけないような困りごとが」

 

 

少し語気を強めてフィエリテさんの目を覗き込む。

 

最初のハロルドくんとの会話もそうだし、フィエリテさんのチラチラと私の様子を伺うような態度から、理由は分からないけど、私、稲取いなほの何かが彼女達に必要なのは間違いない気がする。

 

それなら、個人的には乗っかってみるのも面白い気がした。……つい30分くらい前まで引き籠ろうか迷ってたくらいだから方針はブレブレではあるんだけど、せっかくだし人助けはしたい。何かのクエストかもしれないしね。

 

そんなことを考えながら私はフィエリテさんの瞳を見つめる。少しの沈黙。そしてフィエリテさんが諦めたように肩の力を抜く。

 

 

「……慣れない隠し事はすべきではないみたいですね」

 

「隠し事?」

 

「そうなのです。実は、いなほさんにご協力して欲しいことがあるんです」

 

「協力、ですか?」

 

「はい」

 

 

ピコンという通知音がなって視界にクエスト受注メッセージがポップアップして…すぐにもう1回通知音がなってこいちゃんからのメッセージが表示された。

 

〘ワールドクエスト:聖樹復活クエストを開始します〙

〘水滸鯉∶なほちゃん今どこ?〙

 

 

こいちゃん、起きたんだ……それより、フィエリテさんの協力のお願いを引き受けるか答える前にクエストが始まってしまった。メッセージにはワールドクエスト?しかも「聖樹復活」とかって書いてあるけど、ASTOの世界において結構大切なクエストだったりするのかな?

 

 

〘稲取いなほ:草原の丘にいるんだけど来れたりする?〙

 

〘水滸鯉:今行く〙

 

〘稲取いなほ:場所分かる?〙

 

〘水滸鯉:フレ登録あるから大丈夫。待ってて〙

 

 

軽い気持ちで連絡を返すと速攻でこいちゃんから返信が返ってくる。

 

寝起きなのに悪いことしちゃったかも。すこしだけ罪悪感を感じながらメニュー画面から顔を上げるとフィエリテさんと目が合う。フィエリテさんは緊張した面持ちのまま私を見つめている。……そっか、フィエリテさんにはメニュー画面とか見えていないから急に私が黙って考えているように見えてるのか。

 

 

「フィエリテさん、私で良ければ協力させてください」

 

「本当ですかっ!!」

 

 

ぱあっとフィエリテさんの表情が明るくなった。最初から美形とは思ってたけど、笑うとやっぱり綺麗だなあ、なんて思いながら私はフィエリテさんに微笑みかける。……正直よくわからないまま協力するって言っちゃったけど、何するんだろう。多分だけどエルフの里に行かないといけない流れだよね、これ。

 

 

「なほちゃ~ん!!」

 

「あ、こいちゃ~ん!!」

 

 

呑気にそんなことを考えているとこいちゃんの声が聞こえてくる。振り返ってみれば赤兎馬に跨ったこいちゃんと、それに併走するアッシュくんがこっちに駆けてくるのが見える。手を大きく振ると、こいちゃんも赤兎馬の上で手を振り返してくる。

 

 

「あ、あの……いなほさん?」

 

「ん? どうしました、フィエリテさん?」

 

「あの巨大な狼は襲ってきたりしないですよね? ご友人を追いかけているように見えるのですが……」

 

「大丈夫ですっ!! あの子、私の眷属なので襲ってくることはないですよ?」

 

「そ、そうなのですね……アハハ……」

 

 

フィエリテさんの笑顔が若干引きつっている。

巨大ミミズクのハロルド君も結構大きいと思うけど、そこらへんは感覚の差なのかな?

 

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