新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

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第21話 草原の丘の、北に向かって

 

月明かりの下、こいちゃんが私とフィエリテさんの元に駆け寄ってくる。

 

 

「なほちゃん、いきなりいなくなるからビックリした」

 

「ごめんね、こいちゃん。ちょっとイロハと散歩しようと思って」

 

「むう、それなら仕方ない」

 

 

こいちゃんはキュッと私の手を握って上目遣いにジト目を受けてくる。

前から思っていたけど、この親友あざと過ぎやしないだろうか。何が言いたいかって言うと、かわいくて癒される。

 

そんなことを考えていると、少し気まずそうにしているフィエリテさんと目が合う。

 

 

「あ、そうだった。こいちゃん、紹介するね。こちらエルフ巫女?のフィエリテさんです!!」

 

「初めまして、エルフの里にて神木の巫女をしています。フィエリテと申します」

 

「はじめまして。私は水滸鯉、"こい"って呼んで。……なほちゃん、知り合い?」

 

「ううん。偶然ここで出会って、ちょっとお願い事をされたんだ~」

 

「お願い事? 危なくない?」

 

「それは……分かんないかな?」

 

「ふ~ん」

 

 

あ、マズい。こいちゃんがフィエリテさんをガン見してる。

こいちゃんから疑心に満ちた視線を受けたフィエリテさんが必死に首を振った。

 

 

「決してお二人を危険に晒すようなことはないです!!」

 

「……本当に?」

 

「本当です。私はただ御神木の神託に従って"紅白の巫女"を探していただけなのです!!」

 

「御神木?神託? そもそも偶然じゃなくて、最初からなほちゃん目当てで近づいたってこと?」

 

「そ、それはっ!!」

 

「……あやしい」

 

 

こいちゃんがジリジリと距離を詰めてフィエリテさんが完全に劣勢だ。

とは言っても、〘ワールドクエスト〙って言うからには今後の為にも受けておいた方が良い以来だと思うし……ここは何とかしてこいちゃんを口説き落とすしかない、よね?

 

 

「こ、こいちゃん?」

 

「……どうしたの、なほちゃん?」

 

「えっと、実はフィエリテさんにお願い事された時にね、これが出たの」

 

 

私はメニュー画面を開いてこいちゃんに見せる。

そこには〘ワールドクエスト:聖樹復活クエストを開始します〙という文字列。それを見た瞬間、こいちゃんがピクッと反応して、私の目を見てくる。ちょっと驚いたような表情がかわいい……じゃなくて、何かあったのかな?

 

 

「鯉にもメッセージきた」

 

「へ?」

 

「ほら、ワールドクエスト」

 

 

こいちゃんはそう言ってメニュー画面を見せてくれる。そこには、私と同じ〘ワールドクエスト:聖樹復活クエストを開始します〙という文字列が表示されている。ということは、このクエストはこいちゃんも受注要件を満たしているクエストってことなのかな?

 

 

「あの~いなほさん? こいさん?」

 

「あっ、フィエリテさん、ごめんなさい。すこし2人で相談していて」

 

「そ、それは構わないのですが……お願い事は……?」

 

「あ、はい。大丈夫です!! こいちゃんも協力してくれるみたいなのでっ!!」

 

「なほちゃんが言うなら仕方ない。クエスト、がんばる」

 

 

不安そうな表情を浮かべるフィエリテさんを安心させて私達は頷きあう。予想外過ぎる展開だけど、せっかく乗り掛かった舟だしやれるだけ頑張ってみよう。

 

意気込む私とこいちゃんを見てフィエリテさんがペコリと頭を下げる。

 

 

「いなほさん、こいさん。私のお願いにご協力頂けるとのこと、ありがとうございます。実は我々のエルフの里には御神木と呼ばれる聖樹があるのですが……弱ってしまっているのです」

 

「弱るってことは枯れちゃいそう、みたいなことですか?」

 

「そうです。具体的には果実がならず、冬でもないのに既に葉が枯れ落ちてしまいました。そんなことは、これまでの少なくとも200年間は無かったことです」

 

「そうなんですね……でも、なんでフィエリテさんは私を探していたんですか? 私、特に木を育てた経験とかないですけど」

 

「こいもそれ気になる」

 

「ええっと……自己紹介した通り私は巫女として御神木の世話をしているのですが、御神木から“紅白の衣を纏った巫女を連れてくるように”という神託がありまして。それで眷属のハロルドにそのような身なりの方を探させていたのです」

 

「それで偶然丘の上に居た私を見つけた、と」

 

「はい」

 

チラリと巨大ミミズクのハロルド君を見るとそうだと頷いている。……いや、探すだけの指示なのに最初は私のこと攫おうとしてたよね、キミ。

 

そんな意図を込めてハロルド君にジト目を送ると視線を逸らされた。

 

 

「分かりました。まずはエルフの里に行かないと、ってことですね……とは言っても、私もこいちゃんもこの辺りの地理に詳しくなくて」

 

「エルフの里、どこにあるの?」

 

「この丘の北に広がる森林の先にエルフの里があります。ハロルドの翼であれば5時間ほどで着くのですが……歩いて向かうとかなり大変かと」

 

「そうなの?」

 

「はい。森には魔物も多くいますし、それに、我々の里の手前に魔樹の統べる森があって、空を飛べない多くの者はそこで道を見失ってしまいます」

 

「飛べないとダメ。なほちゃん、どうする?」

 

「そうだね…………あっ、良いこと思いついたっ!!」

 

 

▲ ▽ ▲

 

 

「ひゃあああああああ〜良い景色いいいい〜」

 

「なほちゃん、テンション高い」

 

「こ、これは凄いですね……」

 

「鯉殿っ!! このスイ、初めて皆様のお役に立てて感無量でございますっ!!」

 

「スイ、少しうるさい」

 

「辛辣っ!! あまりにも辛辣ですぞっ!!」

 

 

数分後、私達は夜空を舞っていた。

 

どうやって空を飛んでいるのかというと、スキル神降(しんこう)でイロハと一体化した私の能力でこいちゃんの眷属であるミニドラのスイを巨大化したのです。そして私達はその背中に乗っている。

 

 

「なほちゃん、MP大丈夫?」

 

「うん、フィエリテさんがくれた分で足りそうかな〜」

 

「なら良かった。墜落したらお陀仏」

 

「あはは、ホントにそうだね……あっ、ヤスケくん達だ!!」

 

 

スイの背中に乗ってマサキ村の上空を飛行してると私達に気が付いた人達が家から出てきた。村人の皆さんから見ると普通に龍が空を飛んでいるように見えているから、結構な騒ぎになっちゃうかもしれない。

 

 

「お〜い!! ヤスケく〜ん、ウメさ〜ん!!」

 

「きつねのねーちゃーん!!」

 

「ちょっと行かなきゃいけないところが出来ちゃったので、しばらくしたら戻ってきま〜す!!」

 

 

目下に見えるウメさんとヤスケくんに手を振って思いっきり声を張る。何となく声が伝わったっぽいのを確認して、私達はそのまま草原の丘の北側へと飛翔する。

 

前を見るとハロルド君の背中に乗ったフィエリテさんが先導して道案内してくれる。……いざエルフの里へ、張り切って行きましょう!!

 

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