新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

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第22話 月夜に見下ろす聖樹と魔樹

 

 

「エルフの里、結構遠い」

 

「そうだね~……あっ、そろそろMP補充しないと」

 

 

巨大化したスイの背中で私はちょうど20本目のMPポーションを飲み干す。

 

口の中に甘ったるいシロップみたいなMPポーションの味が広がって、思わず私は顔をしかめる。スイの巨大化のために仕方はないとはいえ、5時間で20本も飲むと流石に飽きてくる。……最初に美味しいから余裕とか思っていた自分が恨めしい。

 

 

「……うへぇ」

 

「なほちゃん、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だけど……甘ったるい」

 

 

私は空っぽになった20本目のポーション容器をインベントリにしまう。

 

現実でこんなに甘ったるいものばかり飲んでいたら確実に太るだろうから、それだけは良かったのかもしれない。そんなことを考えながら頭上に輝く満月を眺める。……時刻は4時前、だいぶ月の位置が低くなってきた。

 

 

「いなほさん、こいさん。もうすぐで着きますよ~」

 

「フィエリテさん!! エルフの里はどの辺りですか~?」

 

「今ご説明しますね~……えいっ!!」

 

 

スイの横に移動してきたハロルド君に乗っていたフィエリテさんがこちらに飛び移ってきた。え、普通に5メートルくらい距離があったんだけど……運動神経良すぎやしませんか? しかも上空だし、怖くないのかな?

 

 

「……いなほさん? そんなに目を丸めてどうしたんですか?」

 

「いや、すごいジャンプだったなって思って」

 

「いえいえ、あの程度ならエルフはできて当然ですよ。これでも森で生きてきましたから」

 

「そうなんですね……でも、カッコ良かったですよ」

 

「そう言われると照れてしまいますね。ありがとうございます」

 

「むう、フィー褒められてズルい」

 

 

褒められて嬉しかったのか少しはにかむフィエリテさんにこいちゃんがジト目を向ける。いつの間にかこいちゃんの中でフィエリテさんの「フィー」呼びが定着して、フィエリテさんもいつの間にかそれを受け入れていた。

 

……いつの間にかこいちゃんがフィエリテさんと仲良くなってて、こいちゃんこそズルい。

 

 

「それで、エルフの里ですが……目の前に見える一番高い山、その麓に私達の住むエルフの里があります。森林を分断するように川が流れているのが見えますか? あれがシンノ川です」

 

「シンノ川って……もしかしてマサキ村の近くに流れていた川?」

 

「そうです。シンノ川の源流は北の峰々の雪解け水が源流になっていますから。エルフの里のシンノ川に接する場所にあります」

 

「へえ~……ん? ということはシンノ川を使えば空を飛ばないでもエルフの里に辿り着ける?」

 

「それは難しいと思います。マサキ村からみてエルフの里は上流ですから、川の流れに逆らって進む必要があります。それに、シンノ川上流は激流ですから」

 

「そうなんですね~」

 

 

そんな話をしながら目下の森を眺めていると、一箇所だけ明らかに変なエリアが目に付く。

 

月明かりに照らされる森は暗いながらも深みのある緑色をしているが、あるエリアだけは月明かりを反射しない真っ暗になっていて遠くから見るとぽっかり穴が開いているようにも見える。そんな場所がある。

 

 

「フィエリテさん、あそこって……?」

 

「はい、あそこが少しだけお話しした通称"魔樹の森"です」

 

「遭難する人が多いってフィーが言ってたところ?」

 

「そうです。あのエリアは魔樹と呼ばれる大木を中心に黒い木々が生息しています。エルフの里はシンノ川を跨いで魔樹の森の反対側にあります」

 

「なんで“魔樹の森”で遭難しちゃうの?」

 

「それは……あのエリアの木々が絶えず動き続けているからです」

 

「木々が動くって、樹木に足が生えてるの?」

 

「そういう訳ではないと思うのですが、とにかくあのエリアでは定まった道はないですし、木に印をつけたり、目印を地面に残してもすべて無意味となってしまうのです。それに、魔獣も多いです。」

 

「それはヘンゼルとグレーテルも真っ青だあ」

 

「ヘンゼ……なんですか?」

 

「ううん、なんでもないよ、フィエリテさん」

 

「……?」

 

 

慌ててフィエリテさんの誤魔化した私は周囲の景色に目を向ける。

 

ちょうどスイも魔樹の森の上空に差し掛かって真っ黒な木々が目下に広がっている。ざわざわと木々の葉っぱが騒めく音がそこら中から聞こえてきて、なんだか不安感を煽るような音が鳴り響いている。……ここで遭難したら確かにヤバいかもしれない。

 

 

「……あれ?」

 

 

ぼんやりと魔樹の森を眺めていると1本だけ明らかに大きな木の存在が目に入る。

 

もしかしなくても、あれが魔樹ってやつな気がする。チラッとフィエリテさんの方に視線を向けるとフィエリテさんも私の意図が伝わったのか、うんと頷いてくれる。うん、間違いない。あれが魔樹だ。

 

 

「さて、いなほさん、こいさん。エルフの里に着きますよ」

 

 

フィエリテさんに促されてこいちゃんと一緒に前を見ると、シンノ川の流れが見え、ちょうどそこを境目にして魔樹の森の対岸側に灯りが輝いているのが見えてくる。徐々にエルフの里が近づいてくると、これまた1本の大木を中心に構成された村の全容が見える。

 

 

「みなさん、お疲れさまでした。あれがエルフの村です」

 

 

先行するハロルド君に続く形で私達は広場に着陸する。

 

 

MPポーションをがぶ飲みしたから辿り着けたけど、マサキ村を出発してから約5時間通しての飛行だったから相当なMPを消費しないと到達できない、それくらいにはエルフの里は秘境中の秘境なんだと思う。それと、5時間も飛び続けたスイを褒めてあげたい。すごい。えらい。

 

 

「スイ、ナイスファイト」

 

「こ、鯉殿が素直に私を褒めた、ですと……? 明日は地震でしょうか?」

 

「……スイ、やっぱキライ」

 

「鯉殿っ!?」

 

 

あ~あ。そういうこと言うからこいちゃんから扱いが雑になっていくんだよ。

 

そんなことを考えながら私もスキル神降(しんこう)を解除してイロハとの一体化を終わらせる。ポンっという音がして肩に重みを感じる。イロハも5時間近く一緒にスキルを発動していたわけで、疲れているのかもしれない。

 

 

「イロハ、ありがとね」

 

「ご主人、さすがに疲れた」

 

「ふふっ、偉かったよイロハ」

 

 

ポフッと私にもたれかかってくるイロハを撫でてあげる。

結構無理させちゃったと思うし、今度何かお願い事を聞いてあげよう。

 

とにもかくにも、エルフの里、到着ですっ!!

 

 

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