新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

24 / 33
第23話 エルフの里長と先輩の影

 

「こいちゃ~ん!! おきて~!!」

 

「やだ。寝る子は育つ」

 

「ほら、フィエリテさんに笑われてるよ~?」

 

「寝ながら人を笑顔に出来るなら本望」

 

「変なこと言ってないで、お~き~て~!!」

 

「せっかくのエルフの里、しっかり寝なきゃ」

 

「もう、こいちゃん……」

 

 

エルフの里。

 

人間(ヒューマン)の王国の北に広がる広大な森林の先、万年雪に覆われる険しい峰々の麓にその里はある。常人では蠢き続ける魔樹の森に阻まれて到達できないその場所では、険しい峰々から注がれる雪解け水が集ったシンノ川の流れの恩恵と魔獣を遠ざける聖なる力を宿した聖樹に守られて自然を司る美しい種族エルフたちが暮らしている。

 

 

そんなエルフの里に辿り着いた私達が最初にしたことは、寝ることだった。

 

そもそも夕方に寝ていたとはいえマサキ村から5時間の大移動を終えて時刻は夜の4時半。そう、エルフの里に着いた私達は、それはもう眠かったのである。と、いうことでエルフの里に着いて早々にフィエリテさんのお宅で寝させてもらうことになった。

 

そんなナレーション風の解説を考えながら私はシーツにくるまって頑なな抵抗を続けるこいちゃんを起こす。

 

 

「あの~、なんというか、お2人は本当に仲が良いのですね」

 

「あはは、ありがとうございます……」

 

「鯉となほちゃんは親友」

 

「それは分かったから……はい、起きるっ!!」

 

「ああ……おふとん……」

 

 

もはやお馴染みのやり取りで、私が引っぺがしたシーツを名残惜しそうにこいちゃんが眺める。……はいはい、私にそんなかわいい顔を向けたって揺るがないんだから、起きましょう。

 

 

「もう10時になっちゃうよ? それに里長さんに会わなくちゃいけないんだって」

 

「うう……わかった……」

 

「えらい。それじゃお顔洗おうっか?」

 

「わかった」

 

「……これは親友というよりは、母娘、でしょうか?」

 

 

フィエリテさんの発言に苦笑しつつ、こいちゃんを立ち上がらせてあげる。

里長さんに挨拶しなくちゃいけないらしいし、とりあえず急いで準備をしちゃおう。

 

 

▼ △ ▼

 

 

エルフの里は私が思っていたよりはちゃんとした集落だった。

 

北峰を背にするように御神木が村の最奥に鎮座していて、それを守るように神殿と櫓が建てられている。さらに神殿の手前には里長の館があって、そこから伸びる道がエルフの里のメインストリートとして機能している。とは言っても通りの長さは1500メートルくらいなもので、その横に住宅が並んでいる感じ。

 

 

「こちらです」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

私とこいちゃんはエルフの里の中心、里長の館に来ている。

 

フィエリテさんに天幕を上げてもらって応接間に入ると部屋の一番奥に女性のエルフが座っていた。女性は遠目で見た時には一瞬子供かと思うくらいに背丈が低く、外見も私やこいちゃんと年齢があまり変わらない印象だった。

 

 

「おばあ様、連れてまいりました」

 

「うむ。フィエリテ、ご苦労」

 

 

……え?

 

奥の女性のことをおばあ様って言った? ってことは、私達の目の前に座っているエルフ女性ってフィエリテさんのお祖母ちゃんってこと? いやいや、外見的に有り得ない……って思ったけど、そういえばエルフって長寿って言うよね。もしかしなくても、フィエリテさんも私達よりかなり年上だったりする?

 

 

「ワシはこの里の長をしておるシルと申す。神託の巫女とその友人よ、遠路はるばるご苦労じゃった……ん? そんな驚いた顔をしてどうしたお主ら?」

 

「い、いえ、里長と聞いていたので、もっとご年配の方なのかと」

 

「何を言っとるんじゃ、お主ら? エルフは成長が止まってから老いることはない。これでもワシは齢はゆうに500年を超えているぞ。」

 

「そうだったんですね。失礼しました。」

 

「我らが人間との関わりを絶って久しい。知らぬのも無理はないさ。立ち話もなんだ、お主らそこに座ると良い」

 

 

そう言うとエルフの里長シルさんはひらひらと手を振って私達を用意された座布団に座るように促してくれる。シルさんはしれっと言ってるけど、500歳ってかなり凄いよね?だって現代から見て500年前って室町時代とかだったはず。「人よむな(1467)しく応仁の乱」って習ったから多分そう。

 

そんなことを考えながら私とこいちゃんはシルさんと向かい合うように座布団に座る

 

 

「さて、お主ら。名は何と申す?」

 

「はいっ!! 稲取いなほと申しますっ!!」

 

「……水滸鯉。なほちゃんの親友」

 

「いなほとこい、じゃな? お主らを呼んだのは他でもない、フィエリテから聞いているかもしれんが、我が里は危機に瀕しておる」

 

「はい。御神木が弱っていると聞いています」

 

「その通りじゃ。この2週間ほどでどんどんと力が弱まっておる……そこで神託を求めたところお主たちを呼ぶように、という言葉を授けられたのじゃ」

 

「そうなんですね……ちなみに、御神木の力が弱まる原因に心当たりがあったりしますか?」

 

「原因か……心当たりがないわけではないのじゃが……」

 

 

そう言ってシルさんがフィエリテさんへ視線を向ける。

釣られて私とこいちゃんもフィエリテさんの方を見ると、フィエリテさんが頷いて話し始める。

 

 

「実は数日前に突然、見たことのない謎のエルフの一団が現れたのです」

 

「謎のエルフ?」

 

「はい。私達とは全く縁のないであろうエルフ達が我が里に訪ねてきまして、リーダーの方が……ええっ“ニーア”と名乗る女性の方でした。人数は……6人だったはずです」

 

「エルフで、ニーアって……こいちゃん?」

 

「なほちゃん。多分だけど、ニアせんぱい」

 

「だ、だよね」

 

 

フィエリテさんから出てきた“ニーアを名乗る女性エルフ”

 

もしかしなくても私達が所属するVtuber事務所MiDiAXの先輩である、34期生 ニア・アリストさんで間違いないと思う。そもそも34期生が全員エルフがモチーフのアバターで、しかも卒業生を除いた活動中の先輩はニアさんを入れて6人。エルフがモチーフの34期生の先輩たちの最初のリスポーン地点がエルフの里の近くになるのは自然な流れに思える。

 

 

「フィエリテさんっ!!」

 

「はいっ!? いきなりどうしたんですか?」

 

「その、突然現れたエルフの方々はどちらにいらっしゃいますか!?」

 

「それが、私達とはあまり関わることなく魔樹の森の方に向かわれました。私達と話している時はどこか上の空というか、あまり良い印象はなかったですね……」

 

「そ、そうだったんですね……」

 

 

普段の34期生の先輩達ならそんなことはない、はずなんだけど、もしかしたらデスゲームに巻き込まれたショックでそうなっちゃったのかもしれない。とにかく、先輩達に会えるかもしれないのは間違いなく朗報だと思う。

 

 

「ワシらはそやつらが御神木に悪さをしとるかもしれないと思っておる。ともかく、まずはお主らに我らが御神木を見てもらいたくてな。せっかく座ったところで何じゃが、ついてきて欲しい」

 

 

そう言ってシルさんが立ち上がる。

 

しれっと言ってたけど34期生の先輩達が疑われているなら、その疑いを晴らさないといけないよね。ワールドクエストも達成したいし、まずは御神木、こと聖樹を見てみよう。私はこいちゃんと頷き合って立ち上がるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。