新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

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第32話 混乱、そして疑念

 

「何を話してたって……聞こえてましたよね?」

 

「せんぱい、隣にいたけど聞こえなかった?」

 

 

私とこいちゃんはニア先輩の質問の意図が掴めず、顔を見合わせて首を傾げる。それを見たニア先輩は、少し緊張したような表情を浮かべている。

 

 

「ええ。確かに私達は貴方達のすぐ隣に居たわ。でも、貴方達の声しか聞こえなかったし、それに、あのエルフはずっと無表情で、貴方が言ったみたいに慌てている素振りなんてなかったのよ」

 

 

「それは流石に……え、本当ですか?」

 

「ええ、本当よ。コメントが来てない?」

 

「えっと……」

 

 

ニア先輩に促された私は視界の端のコメント欄に視線を集中させる。

さっきから物凄いスピードでコメントが流れていたのは感じてたけど、改めて見ると勢いが凄い。まさにコメントを読むので精一杯、って感じ。

 

 

【ええええ、マジでどーなってるん?】

 

【まったく同じ構図なのに全然ちゃうんやがwww】

 

【あのエルフ、里に居た巫女だよね?】

 

【そう】

 

【めっちゃ話すやんwww】

 

【てか稲穂ちゃんも鯉ちゃんもフランクに話すなwww】

 

【エルエレ側だとめっちゃ無愛想なのにいなこい側だとめっちゃ笑顔に見える】

 

【知り合い?】

 

【わからん。でも仲良さそう】

 

【エルエレ側で聞いてると基本いなこいの声しか聞こえん】

 

【どーなってるんこれ?】

 

【いや、こっちが教えて欲しいわwww】

 

 

これは……やっぱり先輩達と私達で見え方が違うってこと?

 

コメントを見る感じだと、ニア先輩達以外の先輩方の配信でもNPCは表情が乏しくて、必要最低限の会話しかしないみたい。……ということは、むしろ私とこいちゃんがレアケースってこと、なのかな?

 

 

「これは……なんででしょう?」

 

「不思議ね……2人は最初からNPCと話せたのかしら?」

 

「はい。最初にリスポーンした時から普通に話せましたね」

 

「そうなのね……」

 

 

ニア先輩は考え込むように俯く。

 

その間に他のエルフ・エレメンツの先輩方とも話してみたけど、他の4人もニア先輩と変わらずNPCはずっと表情が薄かったみたいだった。何か理由があるとするなら、原因を解明できた方が良いと思う。私達と先輩方のスタート時点からの違いって、何かあったっけ……

 

私も頭を捻りながらコメント欄に目を向ける。

 

 

【最初からってことは、この2人が特殊なんか?】

 

【本人たちの感じ故意じゃなさそうやし、スキルとかでもない?】

 

【それな。スキルかなって思った】

 

【そう。でもスキルだったらステータスに書いてるだろうから本人達が知らんわけない】

 

【エルエレといなこいの違いを見比べてみるとか?】

 

【たしかにそれはあり】

 

【つっても、いなこいは最初の4日くらい配信してなかったし……】

 

【そう言えばそうやったな。解析班は無意味か】

 

【まあ。本人達の記憶を辿れば理由分かんだろ】

 

【最初のNPC接触のタイミングとかは憶えてんだろ】

 

【いや、マジで大事やん】

 

 

……考えてみれば、私が最初にNPCと接触したのはヤスケ君とヤヨイちゃんを助けた時。

 

その前だと、1期生の宗近さんと神楽耶さんと会った時で、その前は……イロハと話してた。イロハが最初に喋りかけてくれたのは……私がガイドの天使を間違って倒しちゃった時だったよね。

 

 

「……あっ!」

 

「なにか分かった、いなほさん?」

 

「あの、先輩方ってAIガイドの天使って1体しかいないですけど、最初は1人1体いましたか?」

 

「ええ、そうね。ガイド天使なら私達が合流できたタイミングで合体して1体になったの」

 

「そうなんですね……こいちゃん、嫌そうな顔しない」

 

「キモい……」

 

 

こいちゃんが露骨に嫌そうな表情を浮かべて、思わず笑ってしまう。

 

それでも、こいちゃんの直感、特に人を見る目は、昔からかなり鋭いところがあった。それに、これまでの経緯を思い返してみると、確かに確信に近づいていっている感覚がある。つまり……私達と先輩方の違い、フィエリテさんの発言、さっき配信に映りたがらなかった天使の態度、そして、こいちゃんの勘。ただ、確証がない。

 

 

【てか、普通にいなこいの2人が怪しくね?】

 

【なんで?】

 

【だって、MIDIAX側もデスゲーム始める1か月前に素人の新人入れるか?】

 

【う~ん……言われてみれば、そうなのかあ?】

 

【もし運営側だったら普通に許せないんだけど】

 

【まあ、まだそうと決まった訳ではないし】

 

【いや、正直な話、普通に犯罪者やろ】

 

【そうだとして、いなこいの2人がそうかは分からんやろ】

 

【いなこい懐疑ニキ急に出てきたな】

 

【でも状況的にありえなくはない、のか?】

 

【話飛躍しすぎやろ】

 

 

……視聴者さんも考えてくれてるけど、なんが話が変な方向に進んでいる。

 

私達が運営側?そんなわけないじゃん!!と言いたいんだけど、確かに今回の事件が発生する1か月前に加入した新人が初手からかなり有利になりそうなバグを持ってたら疑いたくなる気持ちもわかる。

 

 

「みなさん。憶測だけで話を進めないように」

 

「そうだぞ。後輩への誹謗中傷は俺達が許さない。MIDIAXはずっとそうだろ?」

 

 

先輩達のコメント欄も雲行きが怪しくなってたのか、ニア先輩が視聴者さんに釘を刺してくれる。それに同調するようにイグ先輩がカメラを覗き込んで、他の先輩方も頷いてくれる。

 

 

「あの……ありがとうございます」

 

「いいんだ。そもそも君らが運営だったら俺らにNPCと話すところなんて見せないだろ?」

 

「そう……なんですかね? でも、嬉しいです」

 

「おうっ!! ……なあ、この後輩ちゃんたち素直でかわいいんだけど。最近は生意気な新人が多かったからメッチャ新鮮な気分だわ」

 

「イグ、そんなこと言ってっと前みたいに炎上すんぞ。炎担当だけに」

 

「うるせー!! 思ったこと言って何が悪いんだ!!」

 

 

先輩達のヘルプもあって何とか私達に向いた言葉が収まってきた。

それでも、無実を証明しないと疑念はぬぐえないと思う。何かいい手は……

 

 

「……なほちゃん」

 

「ん? こいちゃん、どうしたの?」

 

「フィーがアイツが擬態してるって言ってた」

 

「? うん、確かに言ってたね」

 

「なほちゃんパワーで擬態を解除できる? スイをおっきくする感じで」

 

「それは……やってみよっか?」

 

「うん。化けの皮が剝がす」

 

 

そう言って天使を見つめるこいちゃんの視線を追って私も天使を見ると睨むような、恨めし気な視線が突き刺さって……やっぱり、ちょっと怖い。けど、物は試し。やってみるしかないよね。

 

 

「イロハ……【神降】」

 

「了解だ」

 

 

私は全身を包むスキル発動の感覚とともに真っ直ぐと天使を見据えた。

さあ、白黒着くか、やってみようじゃないっ!!

 

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