新米Vtuberの神社運営生活@デスゲーム〜のんびり配信生活をするつもりが、なぜかNPCの皆さんに信仰されていました ~   作:梯子田カハシ

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第6話 第一村人&第一モンスター発見

 

しばらくフレンドリストを眺めた私は1期生の宗近さんと神楽耶さんの上に表示された同期と連絡できることに今更気付く。

 

 

「あっ、そう言えばフレンド同士だからこいちゃんと連絡取れるんだった」

 

「……ご主人、今頃気付いたのか?」

 

「色々あったんだし仕方ないでしょ、イロハ」

 

 

相変わらず無駄口の多いイロハの横腹を突っつきつつ、私はこいちゃんへのメッセージを入力する。なんて送ろうかな……まあ、無難に「どの辺にいる?」とかで良いかな?

 

 

「送信っと、これでオッケー」

 

「合流できれると良いけど……ひとまずは集落に向かうか?ご主人」

 

「そうだね~。情報収集もしないとだし、もしかしたら現地の人と仲良くなれるかもだしね。それじゃ、張り切っていきましょう!!」

 

「ちょっとは元気になってきたな。それでこそご主人だ」

 

「ありがとん。そう言えばイロハはこいちゃんのこと分かるんだもんね」

 

「ご主人がデビューしてから俺は喋らないだけで一緒だったからな。毎度ご丁寧にご主人が鯉嬢に抱き着かれるたびに俺も一緒だった訳だし」

 

「……イロハ、えっち」

 

「ご主人、なんでそうなるんだ? 俺は動けなかったんだから不可抗力だろう」

 

「でもでも、正直内心嬉しかったんじゃないの? こいちゃんって背が高くて美人さんだし、なんなら抱き着かれたときに、その、ちょうどいい位置になるじゃない?」

 

「…………ノーコメントだ」

 

「あー、やっぱりそうなんだ!! イロハも男の子だもんねえ?」

 

「そんなことない!!完全なる冤罪だ!! それを言うならご主人だってそういうことを考えてたんだろう!?」

 

「そんなことないです~!!別に、柔らかいな~とか、良い香りだな~とか、そんなこと全然思ってないもん!!」

 

「思ってなきゃそんな具体的なコメント出ないだろう!?」

 

 

イロハとくだらない言い争いをしながら丘を降りていると、視界にメッセージ通知が表示される。噂をすればのこいちゃんからの返信だ。なになに~、こいちゃんからの返信は「田舎」だって。……うん、返信がたった2文字って酷くない?

 

 

「そもそも地図もないのに場所を聞かれても分かんないと思うぞ、ご主人」

 

「…………たしかに!!そういえばそうだった!!」

 

「何というか、たまに抜けているよな、ご主人」

 

「でもでも、私がいるのも田舎だから、やっぱり近くにいるかもしれないよ?」

 

「…………」

 

「ねえ、イロハくん? なんで私をそんな駄目なヤツみたいな目で見るのかな?」

 

「ソンナコトナイゾ」

 

 

ねえ、イロハくん、なんでこっちを見てくれないのかな?

 

というか、イロハと話せるようになってまだ2、3時間くらいしか経ってないけど随分と仲良くなれた気がする。もちろんイロハが私のことを知ってくれてるのもあるけど、会話のリズムが合って相性がいいのかもしれない。

 

 

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

その時、遠くから甲高い少女の悲鳴が聞こえてきた。

 

私とイロハは顔を見合わせて頷き合うと、急いで声の聴こえた方へと走り出す。悲鳴の主がこいちゃんだったらどうしよう。もしそうじゃなくても、ライバーの先輩かもしれない。……とにかく急がなきゃ。

 

 

「……スキル〘神降〙発動」

 

「おうよ、ご主人。行くぜ!!」

 

「へ? イロハ? どこ?」

 

 

試しにということで職種スキルである〘神降〙を発動してみる。ステータスには「自身の信じる神の権能・加護の行使が可能」って書いてあった。

 

 

[ご主人、俺の声聞こえるか?]

 

「き、聞こえるよ。イロハ、どこにいるの?」

 

[スキルの効果で俺はご主人と一体化してる。今だったらご主人は神通力が使える。縮地や変身、敵の心を読んだりもできる。とにかく急ごう]

 

「わ、分かった!! それじゃ、“縮地”」

 

 

私の掛け声とともに移動速度が一気に加速する。

これ多分だけど敏捷のパラメーターとか無視して発動できるタイプのスキルな気がする。敏捷のステータス値15でこんなに早く移動できるはずが無いからね。

 

 

「みえたっ!!」

 

 

猛スピードで草原を駆け抜ける私の視界に入ったのは2人の子供とそれを見据えて腰を落とす1匹の大きな狼の姿だった。

 

子供は恐らく兄妹のようで、お兄ちゃんが妹を庇うように前に出てナイフを構えている。狼の方は前脚を曲げで低い姿勢を維持したまま唸り声を上げている。

 

 

「ストオーーーップ!!」

 

 

私は勢いそのままに兄妹と大狼の間に割り込むと、兄妹を背にして刀を構えた。大狼は一瞬、私の登場に驚いたみたいだけど、すぐに私を睨んで唸り声を上げる。

 

 

「2人とも、ここは私に任せて下がっててね?」

 

「で、でも……」

 

「いいから!! はやく逃げて!!」

 

「は、はいっ!! ヤヨイ、行こう!!」

 

 

私は大狼と対峙しながら兄妹の足音が遠ざかるのを確認する。

 

狼の方も特に2人を追うような素振りはなく、私の目をしっかりと捉えている。…………なんか勢いで割り込んじゃったけど、めっちゃ怖いんですけど。リアル狼ってこんな怖いの?

 

デスゲームでいきなり死にたくはないんですけど……

 

 

≪GYAU!!!≫

 

「えっ?」

 

[ご主人!!]

 

 

私の一瞬の迷いを突いて大狼が飛び掛かってくる。

次の瞬間、私の右肩にガブリと狼が噛みついていていて、激痛が全身を走る。

 

 

「まずいっ!!」

 

 

肩の痛みに耐えながら生存本能で無理やり大狼を振り払う。……痛い。それに大きいだけあってかなり力が強い。

 

なんとか日本刀を構えなおすけど、これまでの人生で経験したことのないズキズキとした痛みと血が失われていく感覚に襲われる。

 

……痛みを感じて初めて気付く。これがデスゲームで生きるってことなんだ。

 

 

≪Guuuuuu………≫

 

 

少し距離を取った狼が再び私を睨んで腰を低くする。普通の狼よりも二回りくらい大きい狼の視線に足が震えそうになるけど、怯えてる暇はない。

 

大狼の頭上には《Lv7》の表示。一方で私のHPステータスは954/50の表示。たった一噛みの一撃でHPを20も削られている。本当だったら残りHPは30でギリギリの状況になっていた。……やっぱり強い。

 

よく見ると大狼の右後脚に傷がある。もしかしたら弱点なのかもしれない。

 

 

≪GYA!!≫

 

「“縮地”!!」

 

 

再び飛び掛かってきた大狼を縮地で躱して、そのまま脇腹を切り上げる。……相手の攻撃も速いけど、避けられないほどじゃない。

 

大狼が悲痛の叫び声を上げて着地すると、少し息を荒げながら私を睨んでくる。感覚的には捉えた一撃だったけど、反応的にはそこまでダメージを出せていないみたい。…………なんというか、自分の無力が憎い。

 

 

「ねえ、イロハ?」

 

[どうした、ご主人]

 

「さっき言ってた「相手の心を読む能力」ってなんていうの?」

 

[“他心通”って能力だ]

 

 

狼に切っ先を向けて剣先を維持しながら私はイロハと会話を交わす。ゆっくりとお互いに間合いを測りながら私と大狼の睨み合いが続く。

 

 

≪GYuuu………≫

 

「“他心通”!!」

 

≪チッ、これ以上はお互いに深傷を覚悟しないとな。ただ人間の子供を集落に追い返すつもりが、面倒なことになったな………≫

 

「………え、そうだったの?」

 

≪む? 何故この人間は俺の言葉を話すんだ?≫

 

「え、あの子達を襲って食べる気じゃなかったの?」

 

≪なぜそんなことをする必要がある。俺の縄張りに近づいた人間を追い返しただけだ!!そこに割り込んできたのはお主だろう≫

 

「それは……あなたがあの子達を殺しちゃうと思ったから」

 

≪俺は高貴なるダイアウルフの末裔だ。そんな無駄なことはしない≫

 

 

えーっと、なんかすっごく大狼と意思疎通が取れてる。さっきまでの緊張感はどこへやら、なぜか私と大狼は突っ立って会話を始めている。

 

 

「もしかしてだけど、あの子達があなたの縄張りに勝手に入っちゃったの?」

 

≪いかにも。まあ既に俺の縄張りではなくなったがな≫

 

「それは、どういう意味?」

 

≪なに、俺が縄張り争いに負けただけだ。ヤツは人間の子供がいたら迷いなく殺すだろう。俺のかつての縄張りで無駄な血は流れて欲しくはないからな≫

 

「もしかして、あなたって良い狼?」

 

≪知るか≫

 

 

うん。もしかしなくても良いヤツだ、この狼。多分、右後脚の怪我は縄張り争いの時に負ったんだと思う。

 

………どうにかしてこの狼を仲間に出来たりしないかな? 縄張りを失ったのなら行く当てもないだろし。こうなったら思い切って聞いてみよう。

 

 

「あなた、私の仲間にならない?」

 

≪は?≫

 

「行く当てもないだろうし、怪我もしてるじゃない。それに私、これでもある程度は強いのよ。神様のご加護だってあるんだから!!」

 

 

肩の痛みをこらえて精一杯、胸を張る。こうなったらハッタリで通すしかないもんね。

 

正直、戦ってもダメージを追うだけだし、仲間になってくれなくても最悪このまま戦わずに状況を終わらせてしまいたい。もちろんこの狼が仲間になってくれるのが一番だけど。

 

 

≪お主は……アホなのか?≫

 

「な、何を!!アホじゃないもん!!」

 

≪ふふ、はははは!! いや、大アホだ!!だが気に入った。初対面で、お主に傷を負わせた俺を仲間に引き入れようとは、なかなかの器だっ!!≫

 

「なにがおかしいのよっ!!私だって、めっちゃ肩痛いんだからね!!」

 

≪ふふふ、すまない、すまない。……わかった、仲間になろうじゃないか。お主、名は何というのだ?≫

 

「………稲取いなほ」

 

≪そうか。いなほ、我が名はアッシュ、お主の仲間となろう≫

 

 

〘ダイアウルフの末裔アッシュが仲間になりました〙

 

 

私の視界にポップアップ通知が表示される。

……た、助かった。肩を噛まれたときは死んだかと思った。というか普通に肩が痛いままなんだけど、ポーションとかあるんだっけ?

 

 

「えーっと………?」

 

 

インベントリを開くと中級ポーション×30の表示が出ている。とりあえずポーション2個を取り出した私は、1つを自分の肩に、もうひとつをアッシュの脇腹と右後脚にかけてあげる。

 

 

≪こ、これは………?≫

 

 

突然回復していく傷に驚くアッシュを尻目に、私はスキル〘神降〙を解除する。すぐにイロハが出現してさらに驚くアッシュを見て、私は新たな仲間獲得の達成感に浸るのだった。

 

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