疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

105 / 408
第105話 義弟

 急いでコテージへと戻る。今日は海とコテージを行き来してばかりだ。

 コテージの庭に差し掛かったとき、誰かの姿が目に入った。月明かりに照らされたその立ち姿は、見慣れたものだった。

 そこにいたのは紛れもなくナイトのはずだった。

 

 ただ、俺の知っているナイトとはどこか違う。

 いつも以上に落ち着いた雰囲気で、まるで年輪を重ねたような余裕が滲んでいた。いや、実際そうなのだろう。

 

「ナイト、なんだよな?」

 

 俺が問いかけると、ナイトはゆっくりと微笑んだ。

 

「あなたにそう呼ばれるのは、なんか新鮮な気分ですね」

 

 いつもと違い、彼の口調は敬語だった。その違和感に思わず背中がむず痒くなる。

 

「ヨシノリがどこにいるか知らないか?」

「由紀さんなら女子部屋にいますよ。今は他に誰もいませんから、気にせずどうぞ」

 

 ナイトも俺が何を求めているのか理解しているようだった。彼の表情には余裕がありながらも、どこか感慨深げな色が滲んでいた。

 

「サンキューな、助かるよ」

 

 息を整えながら礼を述べると、ナイトは静かに俺を見つめたあと、ふっと笑みを浮かべる。

 

「高校時代に、あなたに出会いたかったな」

 

 その言葉に、俺の足が止まった。急いでいるというのに、どうしても聞いておかなければいけない気がしたのだ。

 

「……どういう意味だ?」

「いえ、妻からよくあなたの話を聞いていたものですからね」

 

 彼は穏やかに微笑みながら言葉を続けた。

 

「あなたは眩しいほどに真っ直ぐだ。愛夏とそっくりなその真っ直ぐさに僕は憧れていたんです。といっても、直接会話をしたのはほんの数回だけですが」

 

 ナイトは遠くを見つめながら静かに言葉を紡ぐ。夜風が静かに吹き抜け、俺たちの間に一瞬の沈黙が流れた。

 

「お前、まさか……」

 

 髪の色や髪型が違うのと、未来では眼鏡をかけていたから気がつかなかった。俺は彼と会って言葉を交わしたことがあるのだ。

 結婚後も、愛夏の苗字は変わっていなかった。それは何故か。

 理由は簡単だ。結婚相手の苗字も、俺たち兄妹と同じ〝田中〟だったからだ。

 

「ご想像にお任せしますよ」

 

 ナイトは苦笑しながら肩をすくめる。その仕草はまるで、すでに全てを悟っているかのようだった。こいつのことだ。非現実的なこの状況も落ち着いて分析できているのだろう。

 

 彼の目には俺の知るナイトとは違う、長い年月を経た大人の色が浮かんでいる。さっきの愛夏やアミと同じ、まだ手にしていない未来を知っている者の目だった。

 

「愛夏のこと、頼んだぞ」

「はい、お義兄さん」

 

 俺の言葉に、義理の弟は微笑を崩さず軽く頷いた。

 静かな夜の中で、その言葉がやけに心に響いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。