疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第107話 僕は親友の妹に手を出したロリコンです

 奇跡の夜が終わり、騒がしい朝がやってきた。

 結局、俺は外のベンチに腰掛けて一晩を過ごすことになった。何だか海風に当たりたい気分だったのだ。

 そのまま寝落ちしてしまい、俺はリビングから聞こえる喧騒で目が覚めた。

 

「朝からうるさ――一体、何があった」

 

 コテージのリビングでは、なぜかパンツ一丁でナイトが正座をしていた。その首には〝僕は親友の妹に手を出したロリコンです〟というプラカードまでぶら下がっている。

 

「いや、マジでどういう状況」

 

 寝ぼけた頭をこすりながら状況を理解しようとするが、まったく意味がわからない。

 

「違う、違うんだ……!」

 

 ナイトは悲痛な表情で首を振るが、周囲の視線は冷ややかだった。

 

「言い訳があるなら聞こうじゃねぇか」

 

 ゴワスが腕を組みながら低い声で言う。その隣では喜屋武も冷たい視線を向けていた。

 

「だから僕は何もしてないんだ! 朝起きたら愛夏ちゃんと一緒のベッドで寝てて――」

「はい、アウト」

「アウトさー」

「だから、誤解なんだ!」

 

 ゴワスと喜屋武が同時にジャッジを下す。ナイトは両手を振り回しながら必死に否定するが、その動揺ぶりが余計に怪しさを増していた。いや、仮に本当だったとして二歳差しか離れていないのに、ロリコン呼ばわりはどうかと思う。

 俺は視線を横に移し、当の愛夏を見る。

 

「愛夏。どうなんだ?」

 

 俺の問いに対して、当の愛夏は顔を真っ赤にして俯いていた。

 

「その、私も、気づいたらナイト先輩と一緒に寝てて……朝起きたらお互い裸で……」

「なるほどなぁ……」

 

 俺にはこの状況がなんとなく読めていた。

 昨夜のことを覚えていない。原因はこの場にいる全員が未来から来た自分に一時的に憑依されていたことだろう。

 

 つまり、この二人に関しても、未来の愛夏とナイトが憑依したままの状態で寝たということだ。

 

 たぶん、無意識のうちに普段通り夫婦のように過ごしてしまったのだろう。

 当然ながら今の彼らは、まだ何も始まっていない関係だ。

 

 そりゃ、朝起きたら裸で一緒に寝てただなんて大事件である。

 ふざけんな、未来の妹夫婦。

 愛夏はちらりとナイトのほうを見たが、すぐに目を逸らした。

 

「とりあえず、俺が話を整理するから落ち着け」

 

 そう言って俺は椅子に座り、混乱した状況をどう説明するか考え始める。

 これは、どうフォローしたらいいんだ。

 未来じゃお前ら夫婦だから問題ないぞ、なんて言えるわけがない。

 

「まず、ナイト。お前は何も覚えていないんだな?」

「本当だよ! 信じてくれ!」

「別に最初から疑ってないっての」

 

 事情は知っているからな。

 ナイトの表情には焦りしかない。本気で潔白を証明しようとしているのが伝わってくる。

 

「それで愛夏も昨日のことは覚えていない、と」

「うん、何も覚えてない」

 

 愛夏は小さな声で答えながら、まだナイトのほうをチラチラと見ている。

 

「ここでさらに確認だ。全員、昨日の夜は執筆を終えた俺と会話している。記憶はあるか?」

 

『え?』

 

 覚えているわけがない。だって、全員未来から来た自分たちに憑依されていたのだから。

 

「あー、やっぱりな。原因はこいつだろ」

 

 そこで俺は〝大人のぶどうジュース〟の空き缶を取り出す。昨日、ソフトドリンクと間違えて購入されていた酒である。

 店員がガバガバだったおかげでなんとか理由を作れそうだ。

 

「つまり、全員ジュースと間違えて酒を飲んで酔っぱらっていた。それによって起きた事故というわけだ」

 

 あとはこれでゴリ押せばなんとかなるだろう。

 まあ、酔った勢いで友人の妹に手を出すのもどうかとは思うが。

 

「あー、だから喉がイガイガするんだ」

「…………」

 

 おい未来のナイト。お前、マジで愛夏のこと任せて大丈夫なんだよな?

 

「……とにかく、不幸な事故だったわけだ。あと、愛夏。ぶっちゃけ、この状況になってナイトのこと嫌いになったか?」

 

 俺がそう尋ねると、愛夏の肩がピクリと動いた。

 少し沈黙が続く。愛夏はぎゅっと拳を握りしめた後、小さく息を吸い込んだ。

 

「嫌いじゃ、ない……よ。恥ずかしかっただけで」

 

 その言葉が部屋の空気を一変させた。

 ナイトが驚きに目を見開き、周囲も息をのむ。

 

「よし、これでこの件は終わりだ。愛夏が嫌がってないのなら問題なし!」

 

 俺が結論を出すと、ヨシノリが苦笑した。

 

「ま、本人同士の問題だもんね」

 

 愛夏は顔を伏せたまま、何かを考えているようだった。

 俺は彼女の横顔を見ながら、未来の記憶が残っているのかもしれないという可能性を頭の片隅に置いた。

 

 それでも、今はそっとしておくべきだろう。

 こうして、俺たちの騒がしい朝はようやく幕を閉じたかに思われた。

 

「あれ、アミはどこにいるんだ」

「そういえば、見てないね」

「一体どこで――あ」

 

 まさか、あのまま海辺で眠るまでギターを弾いていたのだとしたら。

 

「やっべぇ!」

 

 その後、浜辺でギターを抱えて眠るアミが発見されたのだった。

 

 未来からの訪問者たちよ。お願いだから後始末くらいちゃんとしていってくれ……。

 

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