疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第111話 思い出の場所の正体

 今回の旅行は、なかなかの収穫が得られた。

 夏らしい青春イベントの数々の参考になったし、お色気シーンの重要性にも気が付くことができた。

 

 この経験を踏まえてまた面白い小説が書ける。何より、ヨシノリからもらったポメラのおかげで作業効率もモチベーションも爆上がりだ。

 そんなことを考えながら、俺は高架下にある静かな池の縁に腰を下ろし、ポメラを開いていた。

 

「いや、普通ザリガニ釣り中に執筆する?」

 

 ヨシノリが隣で呆れたように言った。手には竹竿とタコ糸、それと割りばしにくくりつけたあたりめ。

 

「安心しろ。ポメラには落下防止用のバンドを取り付けてある」

「そういう問題じゃないでしょ……」

 

 ヨシノリは深いため息をつき、タコ糸の先をじっと見つめる。あたりめの近くには結構なサイズのザリガニがいた。

 

「てかさぁ、前から思ってたけどここって人工の池じゃん。どうして、ザリガニや小魚がいるの?」

「あれ、知らなかったのか。シューヤがこの場所でザリガニ釣りとかしたいから、他所で取ってきた生き物片っ端からぶち込んで、新たな生態系が生まれたんだぞ」

「近所の池で勝手にビオトープすな。あいつの仕業だったのね……そういえばシューヤの奴、しょっちゅう親の実家の方でいろいろ獲ってきてたっけ」

 

 ヨシノリが苦笑交じりに言う。俺たちが小学生の頃、この場所はよく遊んだ思い出の場所だ。

 夏になるとザリガニ釣り大会と称して、誰が一番多く釣れるかを競ったこともあった。懐かしい思い出だ。

 

 その正体は、倫理観と道徳を母親の胎内に置いてきた幼馴染みシューヤの仕業によってできたものだった。

 

「小学校のときから他の場所で捕った生き物を放すのダメって習ったよね?」

「あいつにそれは逆効果だな。禁止されたもの片っ端からやる奴だぞ」

 

 カリギュラ効果。人はダメと言われるとやりたくなる心理現象のことだ。

 それを加味したとしても、シューヤのはやり過ぎだったけどな。

 

「昔っからシューヤは命で遊びがちだったからな。特に虫」

「あー、シューヤに限らず小学生って虫で遊びがちよね」

 

 俺はやらなかったが、小学生は残酷な遊びをしたりするものだ。

 たぶん、おもちゃと命の区別がついていないからだろう。

 

「クラスの一部で〝セミブレード〟が流行ったときはさすがにドン引きした」

「あれはあたしでもやらないわ……」

 

 カブトムシが捕れない都内で、セミは手軽に捕れる昆虫だったため、倫理観の緩い小学生にとっては格好のおもちゃにされがちだった。

 セミブレードもその一つである。

 某ベイゴマを元にした大人気のおもちゃの代わりに、捕まえたセミを投げてぶつけ合うとんでもない遊びだ。

 

「せめて元ネタのベイゴマにしておきなさいよって話よね」

 

 ガキ大将だったヨシノリですら、ドン引きして混ざらなかったくらいである。

 あの頃でもヨシノリは道路のミミズを土に戻してあげるくらいには優しかったからな。

 

「シューヤも今はさすがに落ち着いてるだろうな」

「あの倫理観ゆるキャラが更正するわけないでしょ。ママから聞いたけど、近所で勝手に打ち上げ花火やってたらしいわ」

「命で遊ばなくなっただけマシだろ」

「比較対象がおかしすぎる……」

 

 額に手を当ててヨシノリは深いため息をついた。

 

「ん、着信――っ!」

 

 そのとき、スマホが震えた。

 画面に表示された名前は〝シンフォニア文庫編集・佐藤さん〟だった。

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