疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第116話 担当イラストレーター

「あの、担当イラストレーターさんなんですが、知り合いでそこそこ知名度があって、スケジュールも空いてそうな方がいるんですけど……」

「おっ、いいですね。こちらとしても、知名度のあるイラストレーターさんとコンタクトを取りやすいのは助かりますから。それで、どなたなんですか?」

 

 俺は一拍置いてから、ややためらいながらも言葉を紡いだ。

 ここで出す名前が、どれほどの反応を引き起こすのか、少しだけ予感があった。

 

「とっととカク太郎先生なんですけど」

「へ?」

 

 佐藤さんの反応は想像以上に素直だった。

 一瞬目を見開いたあと、固まったように沈黙する。

 

「漫研の先輩で、今回賞をいただいた小説も〝都合がつけば担当してくれる〟とは言ってくれてはいるんですけど……」

「あの、とっととカク太郎先生、ですか」

 

 念を押すような佐藤さんの声色は、どこか慎重で、言葉を選んでいるようだった。

 

「その、今までもうちの編集部から何度も連絡をしてもお断りされてきたので……」

「えっ」

 

 まさかそんなに接触があったとは思っていなかった。

 俺は内心で混乱しながらも、佐藤さんの次の言葉を待つ。

 

「本当に担当してくださるなら、これ以上ない方なんですが……」

「あのこれ、中間テストで学年一位を取ったときに〝ご褒美〟として描いてくださったイラストなんですが」

 

 俺はスマホを取り出し、フォルダから該当の画像を開いて、画面を佐藤さんに見せる。

 ヒロインの友紀の快活な表情を前面に押し出した、トト先の武器である〝表情の表現力〟を活かした一枚だ。

 

「おお……これはヒロインの友紀、ですよね?」

 

 佐藤さんが食い入るようにスマホの画面を見つめる。

 その顔に浮かぶ驚きと感嘆の入り混じった表情が、何よりの評価だった。

 

「もうカク太郎先生は内容を全て知ってらっしゃるんですよね?」

「はい、何なら二回読み返してくれてました」

 

 そのときのやり取りを思い出す。トト先は貪るように俺の作品を読み込み、丁寧に感想をくれた。

 これは一つの世界。そう言ってくれたあの姿は今でも忘れられない。

 

「イラストレーターとしての知名度は言わずもがな……何としてでも、説得してほしい……あまりにも、内容と絵柄の相性が最高すぎる」

 

 佐藤さんの声には、本気が宿っていた。

 編集として、読者として、創作を愛する一人の人間として、心からそう思ってくれているのが伝わってきた。

 

 俺は自然と背筋を伸ばし、深く頷いた。

 

「スケジュールが空いているのはわかっています。絶対ノリ気にさせてみせます」

 

 この物語を世に出すなら、描いてもらう相手は、あの人以外に考えられなかった。

 

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