疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第123話 その選択をしたのは自分自身

 全員の視線が集まる中、トト先は変わらず原稿の手を止めなかった。

 

「ふん、相変わらずマイペースな奴だ」

 

 釈先輩は不機嫌そうに鼻を鳴らすとトト先を見遣る。

 

「元々漫研は漫画を描くのが好きな連中の集まりだった。それがたった一年で一人の天才が好き勝手する場に変わった。温泉川も気の毒にな」

「部長や他の人たちが筆を折ったのは都々ちゃんのせいじゃありません」

「本心からそう思っているのか?」

「それは……」

 

 釈先輩の言葉に、東海林先輩は目を逸らした。

 

「他の部活から部員を引っ張ってきているのも、端から漫画を描く気がない人間なら心が折れずに部員を水増しできるからだろ。とても健全な組織運営とは言い難い」

 

 トト先の実力は、大勢の漫画家志望の心を折った。

 ただ漫画が好きで、何となく漫画家になりたいなぁと考えている人間と、一心不乱に漫画を描き続けてきたトト先とではあまりにレベルが違い過ぎたのだろう。

 砂の城を作って遊んでいる横で高層ビルを建築されるようなものだ。

 

「その程度で折れるようならそれまでの夢だったんじゃないですか」

「なんだと」

 

 いい加減八つ当たりしにきたこの人にもイラついていたところだ。

 俺も言いたいことを言わせてもらおう。

 

「結果が出るまでやるのが努力です。自分に見切りをつけて手を止めた人間にどうこう言われる筋合いはないでしょう」

「これだから天才は……!」

 

 さっきから天才天才って、うるさいんだよ。

 俺がどれだけ自分に才能がないことを嘆きながら作品を書き続けてきたかも知らずに……!

 

「努力もしない奴ほど〝天才〟って言葉を安易に使いたがりますよね」

 

 自分でも、声に怒気が混じっているのがわかった。

 けど、もう止まられなかった。

 

「やる気がないなら、努力してる人間の邪魔をしないでくれますか?」

 

 俺の横で東海林先輩が小さく息を呑むのがわかった。

 

「描くのが好きで漫研に入って、描き続けられなかった人がいた。それは事実だと思います。それを壊されたっていうのは、違うでしょう」

 

 視線を真正面から釈先輩にぶつけて告げる。

 

「誰かの才能を見て筆を置いたのは、あくまで自分自身の判断だ」

 

 静かな空気が部室に落ちる。

 

「努力も覚悟も足りなかった自分を棚に上げるんじゃねぇよ、タコが」

「なんだと……お前!」

 

 釈先輩は頭に血を上らせ、今にも掴み掛かりそうな勢いで俺に詰め寄る。

 一発くらいは覚悟しようと思ったそのときだった。

 

「よっすー……何々、揉め事?」

 

 バスケ部の練習を終えたヨシノリがやってきた。

 

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