疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第129話 コミケ前の漫研

 コミケ前だというのに、漫研は、どこかのんびりとした空気が流れていた。

 本来なら締め切り前でバタバタするのがお約束なのだが、そもそも原稿を仕上げているのはトト先だけ。

 そのトト先もハイペースで常に原稿作業をしている以上、締め切りに追われるということがまずないのだ。

 

「そういえば、田中君のペンネームって回文由来? ほら、たなかかなたって逆から読んでも田中カナタでしょ」

 余裕があるからか、東海林先輩が宣伝周りの作業をしながらそんなことを尋ねてくる。

 

「よくわかりましたね」

「えっ、ゆきぽよが呼んでるからじゃないの?」

「あたしもあだ名をそのまま付けたのかと思った」

 

 珍しく部室にいたヨシノリも驚いて目を丸くしていた。

 

「因果関係が逆だな」

 

 ヨシノリと先輩たちが怪訝そうな顔をする。

 

「奏太をカナタって読むと、フルネームが回文になることを得意気に話したらヨシノリが呼び始めたんだぞ」

 

 最近、思い出したがヨシノリが俺をカナタと呼び始めたきっかけは、俺が謎の自慢をしたことがきっかけだったのだ。

 

「えー、そうだったっけ?」

 

 ヨシノリは目をしばたたかせながら、記憶を辿るように天井を見上げた。

 

「……うん、言われてみれば、そうかも。なんか、テンション高めにドヤってた気がする」

「それ、絶対田中君ウッキウキだったやつじゃん」

 

 東海林先輩がくすくすと笑う。

 その笑いの奥に、ほんの一瞬だけ昔を懐かしむような、そんな色が宿った気がした。

 

「美晴ちゃん。お品書きのレイアウトこれで大丈夫そう?」

 

 雑談モートに入った空気を切り替えるように、部員の一人がタブレットを手にして東海林先輩に話しかけた。

 

「オッケー。都々ちゃんのアカウントで告知しておくからデータ送ってー」

「了解」

 

 漫研部室の中では、全員が真剣になりながらも、それぞれの作業に打ち込んでいた。

 東海林先輩が中心になって各部員に指示を飛ばしている。

 トト先は今進めている原稿に一度目を通してから、ペンを動かし始めた。

 その様子を少し離れた場所からヨシノリが漫画を読みながら眺めていた。

 

「はぁ……久しぶりに部員として来てみたけど、クリエイター集団って感じの空気ね」

 

 ため息をつきながら椅子に座り、テーブルに肘をつくヨシノリ。

 

「もっとくればこの空気にも馴染めるだろ」

「バスケ部があるからしょうがないじゃん」

 

 ヨシノリと同様、漫研には兼部している部員も多い。

 ここ最近はコミケ前ということもあってか、割と出席率は良かった。

 

 ヨシノリは読んでいた漫画をしまうと手持ち無沙汰そうに周囲を見回しながら、テーブルの上に置かれた印刷された原稿をめくる。

 そこには、今回コミケで出す漫画のネームが並んでいた。

 

「ふーん……カナタの小説が漫画になってるの、なんか不思議な感じ」

「ヨシノリも読むか? 一応ラブコメ要素も入ってるぞ」

「それ、絶対あたしをネタにしてるでしょ!」

「ソンナコト、ナイヨ」

「もぉぉぉ!」

 

 俺がシラを切ると、ヨシノリは頬を膨らませて原稿を丁寧に元の場所へと戻した。

 

 

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