疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第137話 トラブル

 東海林先輩は、自分を責めるように唇を噛み、拳を強く握りしめる。

 普段は冷静な先輩の珍しく取り乱した姿に、俺も胸の奥がざわつく。

 たしかに、最後の発送確認をしたのは先輩だった。

 

 けれど、それはあくまで段ボールの外装のチェックであって、中身を改めるようなことはしていなかった。

 封は厳重にガムテープで閉じられ、伝票も正しく貼られていたのだから、誰だってそれを正規の荷物だと信じただろう。

 

「まさか、全部……」

 

 隣にいたヨシノリがもう一冊取り出して確認する。

 その場に、重たい空気が落ちた。

 

「これ、どゆこと?」

 

 トト先が机の上に並べた数冊をめくっていたが、どこにも新刊はなかった。

 搬入された四箱、すべて開けて確認するも結果は同じだった。

 

「なんで!? 確かに、印刷所には正しいデータを送ったし、発送の確認も取れてた。部室にもちゃんと新刊は届いてた……!」

 

 東海林先輩が顔面蒼白になり、震える手で段ボールの外装を調べる。

 伝票も宛名も間違っていない。テープも貼り直されたような跡はない。

 

「やばい……やばい、どうしよう! これじゃうちのサークルで何も出せない……!」

「先輩のせいじゃありませんよ。部誌は全員で確認したので、全員の責任です」

 

 俺は段ボールの中で乱雑に詰め込まれた過去の部誌を見つめながら言った。

 これまでの宣伝、トト先との合作、ラノベ作家×高校生イラストレーターという肩書きで構成されたマーケティング戦略。

 

 すべては、この一冊の新刊を出すためにあった。

 それが今、無造作に放り込まれた過去の部誌にすり替えられている。

 

「部室で梱包したときにはちゃんと中身、確認してたはず」

「うん。都々ちゃんと一緒に詰めた。ちゃんと、刷りたての新刊を入れたって、はっきり覚えてる」

 

 東海林先輩の声は震えていた。何かを思い出そうとするように眉を寄せ、額に手を当てる。

 

「じゃあ……どこで入れ替わった?」

 

 ガムテープの貼り直しはされていない。封を切った跡も、外装に乱れもない。

 

「とにかく、今は確認を優先しましょう。学校に届いた分が、部室にあるはずです」

「でも、今日はみんな部室にいないんじゃ……」

「だったら、いる人に頼むしかないですね」

 

 俺はスマホを取り出し、すぐに思い当たる人物に連絡を取った。

 今日はたしか、バスケ部の朝練で学校にいるはずだ。

 

『おー、カナタか?』

 

 着信に気がつくように祈っていると、数コールの内にゴワスが出てくれた。

 

「すまん、ゴワス! 練習中だったか?」

『気にすんな、ちょうど今は休憩中だ。そっちはコミケ……なんかあったのか?』

 

 俺の声音から何かあったのだとゴワスは察してくれた。

 話が早い奴は本当に助かる。

 

「実は新刊のダンボールと整理した過去の部誌のダンボールが間違えて送られてたんだ」

『いや、めっちゃやばいだろそれ!』

 

 コミケで販売予定の新刊が現地にない。

 その状況のやばさをゴワスもすぐに理解してくれた。

 

「無茶を承知で頼む! 部室にある新刊、持ってきてくれないか! タクシー代も、何でも出すから!」

『鍵は先生に言えば開けてもらえるよな?』

「こっちからも職員室に電話しておく」

『わかった、今から行く! サークルの場所送れ!』

 

 ゴワスは自分も練習があるというのに、二つ返事で了承してくれた。

 通話を切ったあと、俺は東海林先輩に声をかける。

 

「大丈夫です。まだ、終わってません。俺の友達が新刊を持ってきてくれます。きっと間に合います」

「うん……」

 

 その言葉に、彼女は小さく息を吸って、震える目元を拭った。

 

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