疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第140話 男女逆

 準備が終わり、部誌も無事に搬入され、俺たちのブースはついに完成を迎えていた。

 絶体絶命のピンチを乗り越え、弛緩した空気を引き締め直して俺たちは部誌の最終チェックを行う。

 とはいえ、R-18本でもないので、修正の確認などは必要ないんだけども。

 

「よっすー! あれ、斎藤じゃん」

 

 その最中、更衣室から着替えてきたヨシノリだった。

 

「「は?」」

 

 その姿を見て、俺とゴワスの目が点になった。

 目の前にいたのは、明らかに現実離れした女騎士だった。

 オレンジ色のウィッグをかぶり、肩や太ももを大胆に露出させたドレスを着ている。

 

 まさに、俺たちの作品のヒロイン・女騎士アイシャそのものだった。

 

「ど、どうかな。イメージ通り?」

「イメージ通りすぎて、ビビってる。めっちゃ似合ってるし、綺麗だ……」

 

 ヨシノリは、恥ずかしそうに腰の剣を少し浮かせてから、クルリと回って見せた。

 そのたびに装飾がきらりと光り、注目を浴びずにはいられない存在感を放っている。

 

「手芸部がめちゃくちゃ気合い入れてくれたからね。衣装、軽く企業レベルだよ。これ、後で写真送って実績として提出するんだって」

「ふふん、文芸部以外の創作系サークルとは仲良くやらせてもらってるからね」

 

 東海林先輩がヨシノリの隣でドヤ顔をしている。

 もしかして、俺が一周目で文芸部に入ったのって本当に失敗だったのでは?

 もし、他の部活に入っていればトト先が所属していた漫研と関わりを持てたかもしれないというのに……いや、所詮は結果論でしかないか。

 

「さてと、写真撮るよ。はいはい、そこ座って! あっ、由紀ちゃんはポスターの横に立ってね!」

 

 そう言って、スマホを構えたのは東海林先輩だった。

 俺とトト先は促されるまま、ブース内の椅子に座る。

 ヨシノリは立ったまま、机の横でポーズを決めていた。

 

「顔はあとでスタンプで隠すから安心して!」

 

 東海林先輩はスマホを横向きに構え、画面を確認しながらシャッターを切った。

 

「よし、いい感じ! 都々ちゃん、文面含めてRINEで送ったから投稿しておいて」

「おけまる」

 

 満足げに画面を眺めると、東海林先輩は写真をトト先に送る。

 

[とっととカク太郎@日曜日東A48a:ちょっとトラブルもありましたが、無事ブースの設置完了しました。今回は私とカナタ先生もブースにいます!]

 

「あっ、やば」

「どうしたんですか、トト先」

「加工忘れた」

 

 口に手を当てて、てへぺろと呟くトト先。いや、ポーズと台詞が一致してないって。

 

「すぐ消してください!」

「いや、ちょっとリプが来るのを待とう」

 

 東海林先輩は神妙な面持ちで投稿削除に待ったをかける。

 

[顔出し!?]

[カク太郎先生イケメンで草]

[カナタ先生可愛すぎない!?]

[でっっっ]

[美男美女すぎる]

[レイヤーさんもめっちゃ美人]

 

 すると、速攻でリプ欄にサークルのファンらしき人から反応があった。

 

「もしかして、俺とトト先の性別逆だと思われてる?」

「名前的にも配置的にも誤認されるだろうと予想してたからね!」

 

 そうか。私とカナタ先生という風に投稿されているが、配置的に左にいるのは俺で右がトト先だ。

 あとは名前から来る先入観で、性別を勘違いされたのだろう。わざわざ名札を付けてない状態で写真を撮ったのもこのためか。

 

「よしよし、このくらいで投稿を消して、顔を隠した写真で投稿しなおしてね。これで女バレからのドジっ子属性付与も効いてくる」

 

 むふー、と東海林先輩は満足げな表情を浮かべていた。

 

「……なあ、奏太。この先輩ってもしかしてやばい人か?」

「……高校生のマーケティング能力じゃないとだけ言っておく」

「……ミハリ先輩って本当に何者なのかな」

 

 俺たち一年生組は顔を見合わせて何でもバズへ繋げようとする姿勢に戦慄するのであった。

 そんなこんなで、俺たちのスペースは準備完了となった。

 

 会場のシャッターが開く、その直前。

 広い東館に、緊張感の波がじわりと満ち始めていた。

 

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