疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第142話 完売からの休憩時間

 13時過ぎ、K&Kの新刊は完売した。

 部誌の段ボールはすっかり空っぽになり、一般列から入場して合流してきた漫研の部員と交代する形で、俺たちはようやく短い休憩を得ることができた。

 

 コミケ三日目、夏。

 戦場と化した東京ビッグサイト。

 

 西も東も、ホールというホールにぎっしり詰まった無数のブース。

 壁際に構える大手サークルの壁には、すでに完売の札が次々と掲げられていた。

 

 列形成の導線、売り子の呼び声、スタッフのマイク放送、数十万単位の人間の熱気。

 この空間はまるで、巨大なボイラーの内部だった。

 冷房が効いているはずなのに、ほとんど意味を成していない。

 

 湿度までサウナに引き込まれたようなこの空間は、外よりもむしろ内側の熱気のほうが激しかった。

 主成分がオタクの汗であることは一旦忘れたほうがいい。

 来年なんてコミケ雲ができるんだ。それに比べればまだマシである。

 

「みんな、お疲れ様。休憩行ってきていいよ」

 

 手慣れた様子で在庫管理のメモを片付けながら、東海林先輩が言った。

 

「東海林先輩も休憩してほうがいいですよ」

「私はもうご飯食べ終わったから大丈夫」

「早っ」

 

 見れば、いつの間にかおにぎりが二つとスポーツドリンクが一本消えていた。

 さてはこの人、速攻で口に詰めて流し込んだな?

 

「トト先はどうしますか?」

「スケブの対応があるからいい。楽しんできて」

 

 トト先は受け取ったスケッチブックから目を離さずに淡々と答えた。

 すでに数冊のスケブが積まれていて、彼女の隣には〝スケブ対応中〟の札が立てられている。

 こういうときも淡々としているのは彼女らしい。

 

「ゴワスはどうする?」

「俺はもう動き回る元気残ってねぇよ……部活とは違う疲れがあるな、これ」

 

 ゴワスはクーラーボックスで冷やしておいたスポーツドリンクを首筋に当ててブース内で座り込んでいた。

 

「本当にありがとな……お前が来てくれて助かった」

「今度、何か奢ってくれ」

「んじゃ、焼肉で」

「あんた、とりあえず奢るときは焼肉奢っとけばいいと思ってるでしょ……」

 

 コスプレ姿のままヨシノリは呆れたように、塩タブレットを舐めていた。

 

「ヨシノリは着替えなくていいのか?」

「更衣室まで行って着替えて戻ってくるのがだるい。それにこの衣装、意外と涼しいのよね」

 

 確かに、肩周りや背中が大胆に開いたデザインの女騎士の衣装は、見た目の重装備感に反して通気性が良さそうだった。

 何より、ヨシノリ自身が着慣れているようで、歩き方にもポージングにも一切の違和感がない。まるで本物の女騎士がこの夏の祭典に現れたかのような錯覚すら覚える。

 

「二人で昼食がてら周ってきなよ」

「写真もちゃんと撮ってきて。漫画の糧になる」

「その前に小説の糧にしますけどね」

 

 こうしてお昼休憩をゲットした俺たちは夏コミを見て周ることにした。

 

「カナタ。早くいこ!」

「せっかく休憩もらったんだから、満喫しないとな」

 

 本当は買い物でもしようと思っていたが、どうせこの時間だ。

 人気サークルは軒並み完売しているだろうし、ヨシノリと周って思い出を作るのも悪くないか。

 

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