疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第148話 部長交代

 夏コミも終わり、漫研は秋の半期予算報告会に向けての準備がある。

 この辺の仕事は俺の得意分野だ。

 社会人経験で培ったエクセル技術が火を噴くときである。

 

「しかし、改めて見るとコミケの売り上げやばいですね」

「都々ちゃんの知名度のおかげだよ。今回は美少女バレと田中君のブーストのおかげもあるけどね」

 

 漫研の予算を全部注ぎ込んだ夏コミは大成功を収め、冬コミの準備費用も確保できた。

 エクセルに打ち込む数字は学生の部活レベルのものとは思えない数値だった。

 冊数、売り上げ、支出、利益率。搬入部数と完売時刻の記録まで細かく残してある。

 同人誌即売会というイベントは、趣味でありながら完全にビジネスの顔も持っている。

 それを数字で証明していく作業に、俺は高揚感を覚えていた。

 

「というか、漫研の予算こんなに出してもらえるんですね」

「そりゃ明確な実績を出しているからね。あと、うちの高校は運動部がバスケ部以外はそんなに強くないから予算が回ってきやすいっていうのもあるけど」

 

 そういえば、ナイトの所属するサッカー部も楽しくやることがメインであまりガチでやっていないという話も聞いたことがある。

 

「らしいけど、そこはどうなんだバスケ部?」

「うーん、女バスはそこまでかな。一年のあたしがスタメンに選ばれるくらいだし」

「それはヨシノリがうまいだけでは?」

 

 ヨシノリは女子にしては身長も高いし、昔からバスケをやっている経験者だ。

 女バスとしても、彼女は貴重な戦力だろう。

 

「それはあるだろうけど、みんな勝利への貪欲さとかそういうのとは無縁だもの。みんなで楽しくがうちの基本スタイルよ」

「まあ、確かに学校の部活って本来はそういうスタンスのほうが多いか」

 

 そう考えると、漫研みたいにガチで金を稼いで成果を出しているほうが異常なのかもしれない。

 

「うちも元々はそういう類の部活だったけどね」

 

 珍しく部活にいた部長がどこか遠い目をしてそんなことを呟く。

 

「大きく変わったのは、やっぱり伊藤さんと東海林さんが入ってからだよ」

「あー……その節は大変失礼しました」

 

 部長の言葉に、東海林先輩は気まずそうに目を逸らした。

 

「二人共、何やったんですか?」

「実力で乗っ取った。当時の部員は激減。K&Kも元々自分たちのサークル」

「やってんなぁ」

 

 おそらく釈先輩が以前に言っていたことだろう。

 部長も筆を折った一人らしいが、あんまり恨んでいる様子は見受けられない。

 

「伊藤さんのワンマン体制になったことで予算は増えたし、何だかんだで楽しくやれているからこちらとしてはあんまり文句もないけどね」

 

 部長はそう言いながら、パイプ椅子に体を預けて腕を組む。

 

「それより、東海林さん。そろそろ部長は交代の時期だ。任せてもいいかな?」

「あ、はい。わかりました」

「一応、僕は内部推薦組だから冬コミも参加させてもらう予定だよ。何かあったらいつでも言ってね」

「ありがとうございます。今までお疲れ様でした」

 

 なんというか、あっさり部長の引継が終わってしまった。

 まあ、この部活を回していたのは東海林先輩だったし、引継もクソもないのだろう。

 

「東海林先輩。予算報告書できました」

「おー、さすが田中君。早いねぇ」

「そんなことないですよ」

 

 一周目の上司が作ってたら、俺の三倍速で終わらせてただろうから。

 

「それより、夏コミの郵送がテレコになってたやつの再発防止策。そっちも進めておかないとですね」

「そう、だね」

 

 俺の言葉に、東海林先輩の表情に影が差した。

 

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