疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第151話 寄り道したいところ

 文芸部の一件以降、東海林先輩の元気がなかった。

 放課後の部室でパソコンに向かう姿は、いつも通り仕事をこなしているように見える。

 ちなみに、東海林先輩が使っているパソコンは文芸部の廃部に伴って回ってきたものだ。

 

「はぁ……」

 

 深いため息がひとつ漏れる。

 それが聞こえた瞬間、俺はマウスを握る手を止めて、そっと東海林先輩に声をかけた。

 

「東海林先輩。元気ないですね」

「そう見える?」

 

 モニターから目を離さず、先輩は苦笑する。

 けれどその笑顔は、いつもよりずっと曇っていた。

 

「見えます。というか、わかりますよ。先輩、ずっと気にしてますよね。原先輩のこと」

「……だって、彼は、私のせいで」

「違いますよ」

 

 俺は即座に否定した。

 思わず声に力が入ってしまったが、それだけはちゃんと伝えておきたかった。

 

「原先輩がしたことは、原先輩自身の問題です。たしかに先輩に対して強い想いを持っていたんでしょうけど、それを理由に人を傷つけていいなんてことはないですから」

「……」

 

 東海林先輩は何も言わなかった。ただ、小さくうつむいて唇を噛んでいた。

 

「だから、先輩が自分を責める必要なんて、これっぽっちもないんです」

「……田中君って、いつも真っ直ぐだよね」

 

 ようやく先輩がこっちを見て、少しだけ笑ってくれた。

 その表情に、俺もようやくホッと胸を撫で下ろす。

 

「それなら少し付き合ってもらえるかな?」

「どこへでも付き合いますよ」

 

 それで東海林先輩の気が晴れるというのなら、喜んで付き合いたいと思った。

 彼女はいつも漫研のまとめ役で、しっかり者として振る舞っているけれど、その心の内側にはきっと、ずっとしまい込んでいたものがあるんだろう。

 俺なんかで役に立てるなら、できることはしたい。

 

「おっと、旦那を借りるんだから正妻には連絡をっと……」

 

 東海林先輩はスマホでヨシノリに連絡を入れていた。いや、正妻て。

 俺の知らないところでどんな会話がされているのか……少し怖い。

 

「それじゃ、都々ちゃん。私たちはこれであがるから戸締りよろしくね」

「おけまる」

 

 いつも通りの調子で返すトト先。

 その声音には、特に感情の起伏もない。

 

 だが、俺たちのやりとりを聞いて、きっと理解してくれているはずだ。

 放課後の空気は次第に夕暮れ色に染まり始めている。

 校舎の窓から差し込む斜めの光が、部室の床に長く影を落とす。

 

「それで、どこに行くんですか?」

 

 俺が尋ねると、東海林先輩はスマホをポケットにしまいながら、ふっと目を細めて言った。

 

「ちょっと寄り道したいところがあってね。付き合ってくれる?」

「もちろんです」

 

 俺たちは並んで部室を出る。ガラガラと戸を閉めると、最後にトト先がペンを持ったまま、軽く手を振ってくれた。

 

「ありがと、都々ちゃん」

「いいってことよ」

 

 そう言って、また黙々と原稿に戻っていった。

 

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