疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第155話 そして、東海林美晴へ

 中学に入る前、お父さんが新たな週間連載を始めることになった。

 新たに週間連載を勝ち取ったお父さんの忙しさは想像を絶していた。

 二本目は原作担当だったとはいえ、もう片方は作画も両方やっている中での二本同時連載。

 

 二本目の連載が始まってからというもの、お父さんは仕事場に泊まり込むことが多くなり、家には滅多に帰ってこなくなった。

 たまにお母さんと一緒に着替えを持って行ったりすることもあったが、仕事の邪魔になるからと長居はできなかった。

 お母さんは日に日に疲れた表情を浮かべるようになっていた。

 

 本当はずっと前から限界だったのだ。

 

 連載を抱えて朝も夜もなく働くお父さんと、家庭を守りながら漫画家の夫を支えるお母さん。

 二人は、同じ家にいながら、全然別の時間を生きていた。

 私はお母さんが夜中に一人で泣いていたことも知っていた。

 

 だから、離婚を告げられたときも自然とそりゃそうだと納得してしまった。

 親権がお母さんにあるのも当然。

 自身の生活すらも犠牲にして漫画を描くことを優先する父親に、娘の親権が渡るわけもない。

 お父さんは離婚を二つ返事で受け入れ、私の養育費も払うことに一切躊躇いはなかった。

 それからお母さんは私が漫画を描いていると、嫌な顔をするようになった。

 

 でも、私は止まれなかった。

 少しでも止まれば、都々ちゃんに追いつけなくなるから。

 

「美晴。あんたいつまで漫画描いてるの」

「いつまでって……漫画家になるまでだよ」

「漫画家は選ばれた人間しかなれないの。なれても漫画家を続けるのが難しい仕事なのよ」

「難しいからって、やめる理由にならないでしょ」

「いい加減、現実を見なさい」

 

 テストはいつも赤点ギリギリ。

 漫画ばかり描いていたことが原因だったのは、言うまでもないことだった。

 だから、優しかったお母さんが激怒するのも仕方のないことだったのだ。

 当時の私はそんなことにも気がつけなかった。

 

「私はあなたを心配して言ってるの。この間だってテストの成績悪かったじゃない」

「赤点は取ってないから全然いいでしょ。テストの点を取ったところでいい仕事に就けるわけでもないし」

「……そんな考えだから、あの人のところへ行かせたくなかったのよ」

 

 お母さんの声が、まるで呪いのように胸に刺さった。

 

「テストの成績が良くなるまで漫画を描くのは禁止ね」

「そんな権利、お母さんにはない」

「……返事は?」

「いいえ」

「美晴!」

 

 漫画家になれるのはほんの一握り。そんなこと私だってわかっていた。

 だから、結果が出るまで努力するんじゃないか。

 

「漫画家かぁ……そういうのは一部の天才が目指すものだからなぁ」

 

 私の目標は学校の先生にも否定された。

 

「ミハリの漫画は面白い。頑張って」

「僕もショージーに負けてらんないな! 言っとくけど、僕が小説家になるほうが先だからね!」

 

 都々ちゃんや原ちゃんだけが、私の夢を肯定してくれた。

 いつしか私は、教室の隅でひたすら漫画を描いている変人として扱われるようになった。

 友達なんて都々ちゃんと原ちゃん以外にいなかったし、いらなかった。

 

 全員観察して模写する対象でしかない。

 私自身がコミュニケーションを取らなくても、傍で観察するだけで十分だった。

 

 それだけで――漫画の糧になるのだから。

 

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