疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第161話 家族への報告

 喫茶店を出たあと、駅までの道をゆっくり歩いた。

 神保町の古本街を抜ける風は心地よく、頭の中を少しずつ整理してくれる。

 

 コミカライズ決定。

 最近、賞を取ってライトノベル作家になったばかりだった。

 三十二歳までまるで結果も残せなかった俺が、こんなとんとん拍子でいいのだろうか。

 そんな疑念が頭を過ぎる。

 

 死ぬ気の五年間で得た経験で俺の書く作品は洗練された。

 高校入学前に書いた〝ポニテ馴染〟が金賞を取った。

 それは青春をやり直す前から、俺はもう商業レベルのものが書けていたということだ。

 

 ポニテ馴染以降の作品も同様だ。

 最低限の実力は手に入った。あとは時の運とタイミング。

 そして、大切なのは小説家であり続けるということ。

 

 欲しかった結果は手に入った。

 ならば、次の目標に向けてまた結果が出るまで努力を続けるだけだ。

 家に帰ると、珍しく家に家族全員が揃っていた。

 

「ただいまー」

「おかえり、奏太。今日は遅かったわね」

 

 リビングにいた母さんが顔を上げる。その隣では、父さんが無表情でテレビを見ていた。

 ソファの前には、妹の愛夏がクッションに座って漫画を読んでいる。

 こんな風に三人が顔を合わせるのも、かなり久しぶりだ。

 

「そうだ。俺の小説、漫画になることになった」

「へぇ、そうか――はぁ!?」

 

 ほとんど聞き流していた状態の父さんが、ものすごい勢いで振り返った。

 

「あら、おめでとう。賞を取ったライトノベルだっけ」

「えっ、ポニテ馴染まだ出版していないよね?」

 

 父さんとは対照的に、母さんと愛夏はそこまで驚いた様子はなかった。

 二人には俺が賞を取ったことは伝えていたからだろう。契約の関係上、母さんには言わなきゃいけなかったし。

 

「ポニテ馴染とは別。カミラの聖剣のほうだ」

 

「「はぁ!?」」

 

 今度は母さんと愛夏がハモった。

 

「編集さんと喫茶店で打ち合わせしてきた。まだ作画さんは決まってないけど、企画としては正式に進行するって」

「ふ、二つも商業作品に……」

 

 母さんがポカンと口を開けたまま、手に持ったマグカップをテーブルに置き忘れる。

 

「お兄ちゃん、すごすぎじゃん! あのさ、カミラの聖剣って、あれでしょ? ルミナの聖剣が元ネタの異世界転生ミステリー!」

「お前、読んでたのか」

「うん、投稿サイトで見つけて普通に読んでた。カミラちゃんの〝打ち首ィ!〟マジで好き」

 

 愛夏の声が弾んでいた。思ったより、ガッツリ読んでいたことに驚く。

 

「で、それが漫画に? キャラデザとかどうなるの? 連載媒体は? アニメ化も視野に入るやつ!?」

「まだそこまでじゃないって」

 

 落ち着け、と言いながらも、内心では少し嬉しい。

 高校入学前は執筆してる俺をゴミを見るような目で見ていた愛夏が、ここまで喜んでくれるとは思わなかったのだ。

 父さんはというと、先ほどの驚きから一転、今は腕を組んで黙り込んでいた。

 

「父さん?」

「頑張ってるのは知ってたが……そうか……」

 

 今まで大した関心を示さなかった父さんだが、自分の息子が原作を担当する漫画が商業誌になると聞けば、やはり無関心ではいられないのだろう。

 

「応援してるぞ。ちゃんと体壊さないようにやれよ」

 

 短いけれど、重みのある言葉だった。

 

「うん。ありがとう」

 

 さすがに、もう死ぬまでの無茶はできないからな。

 

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