疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第175話 三回目の打ち合わせ

 カミラの聖剣コミカライズについて三回目の打ち合わせの日がやってきた。

 神保町のいつもの喫茶店に着くと、根本さんはすでに席に座っており、タブレットを見ながら低く呟いた。

 

「……まったく、末恐ろしい人だ」

 

 その視線の先には、東海林先輩――いや、小池ケイコの名前で提出されたラフの数々。完璧だった。

 

 キャラの顔立ちは一人一人に個性があり、それでいて統一感がある。装飾や衣装のディテールも、こちらが想定していた世界観にぴたりと寄せてきていた。

 さらに、獣人の構造。そこに描かれた鳥獣人のアリスは、動物的な骨格を持ちつつも、人間社会で違和感なく生活できそうなバランスに仕上がっていた。

 それは、トト先の描いた平面感が抜けない獣人と違い、これこそ小池ケイコの得意分野という印象を受ける自信に溢れたものだった。

 

「この密度の絵を、デジタル初心者が描いたって言うんですからね……信じられませんよ」

 

 根本さんの声に、感情が乗っていた。驚きと、少しの賞賛。

 

「とはいえ、さすがに事前の仕込みには驚かされました」

 

 そう言って、彼は薄く笑った。

 配信で()()()()トト先が〝小池ケイコ〟について触れてしまい、トト先の師匠であり、有名漫画家である小池悠一郎の娘ということが話題になった。

 そこから〝父親である小池悠一郎の職場見学〟という名目で、親子共演の配信番組を実施。小池悠一郎の職場がメディアで公開されていなかったことも話題を呼んだ。

 

 さらに、放置されていた液タブを使って東海林先輩がデジタル作画を披露し、視聴者を唸らせた。

 小池悠一郎効果もあり、SNSでは〝小池ケイコ〟がトレンド入り。

 知名度としては、もはや十分すぎた。

 

「エビで鯛を釣ったというわけですか」

「そのエビも伊勢海老ですよ」

「くくっ、違いない」

 

 珍しく根本さんがくつくつと笑いを零した。

 

「……話題性も、作画力も、申し分ありません」

 

 そう言って、根本さんは静かに頷いた。

 

「田中先生。カミラの聖剣の作画は小池ケイコさんに打診します」

「本人もやる気ですよ」

 

 その言葉に、俺は小さく息を吐いた。

 最善の選択ができたこと。自分の想いを押し通せたこと。

 

 そして、何より。

 創作の地獄から這い出てきた人間が、もう一度筆を取ってくれたこと。

 この瞬間が、どんなに尊いか。俺は知っている。

 

「引き続きよろしくお願いいたします」

「こちらこそ。絶対に売れるようにしますよ」

 

 根本さんはそう言うと、コーヒーをひと口飲んだ。

 表情は変わらないが、どこか満足げだった。

 

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