疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
「うちの文化祭ってアニメやドラマみたいな青春とかないだろうし」
「規模がちっせぇんだよな」
「都心の高校あるあるというか、土地が狭いもんね」
慶明高校は都内の高校の中でも神保町という都心にある高校だ。
土地は狭く、校舎はビルのように縦に伸びている構造だ。
生徒だけでなく教師も基本的に電車で通い、駐車場は業者用のスペースが辛うじてあるだけ。
教室も狭いし上に、グラウンドも狭い。
こんな校舎で文化祭をやったところで、いまいち盛り上がらないのは目に見えている。
というか実体験として、まるで盛り上がっていなかった。
「運動部って言えば出店やるイメージあるけど、そういうのもないもんね」
「文化部が主役になるって意味じゃ、正しく文化祭だけどな」
まあ、その文化部の代表格も一つ消えたばっかりだけど。
「出し物決まらなかったらそのままクラスの出し物はなしで、教室だけ献上する形になるんでしたっけ?」
ただでさえスペースが足りないのだ。やる気のないクラスは容赦なく教室を取り上げられ、やる気のある団体へと教室があてがわれる。
一周目では、他クラスを買収して学年全体でお化け屋敷をやったときもあったっけか。
当然、俺はしょっぱい文化祭事態に興味がなかったため、点呼の時間になったら学校行って、出席だけ取ったらそのまま秋葉原へ向かっていた記憶しかない。
「文化祭回るのに拠点がないのはダルくね?」
「だから、どのクラスも形だけはクラスの出し物をやるってポーズを取っているんだろうね」
ナイトは困ったように肩を竦める。
「いっそ、期限決めて締め切り過ぎたら今出てる中で一番票が多かった出し物で決定しちまえばいいだろ」
一周目で俺の上司はよく言っていた。
『田中君。そのタスクは優先度低いかもしれないけど、後回しにしてたらいつまでも終わんないよ。ちゃんと自分で期限を切って終わらせないとダメだよ』
『田中君。相手に確認するときは〝抽象的にどうしましょう〟って聞くんじゃなくて、〝A案とB案があるんですけど、A案で問題ございませんか?〟って聞き方するとなるはやで返ってくるよ』
おかげで確認作業がスムーズに進むようになったのは今でも覚えている。
よくもまあ、俺みたいな産業廃棄物に根気よく教育してくれたんもんだ。
「でも、意見が割れてるからなぁ」
「そんなもん捨て置け。どうせ文句だけのやる気のない連中の意見なんて聞くだけ無駄だ」
「カナタ。それとんでもないブーメランだけど大丈夫そ?」
「俺、文句は言ってないぞ」
「はいはい、お待たせ~!」
喜屋武が両手に盆を抱えて、テーブルへと料理を運んでくる。
ゴーヤチャンプルーにラフテー、そして湯気の立ったソーキそばが並ぶと、一気に沖縄の空気が席に広がった。
「うわあ、すごい! 色とりどりだね」
テーブルに並ぶ沖縄料理に、みんなの目が輝く。
「これがゴーヤチャンプルー? 見た目からして美味しそう!」
「食べてみて! きっと美味しいから」
「いっただきまーす!」
喜屋武の勧めで、ヨシノリはさっそくゴーヤチャンプルーを口にする。
「やっぱり、ゴーヤはこの苦みよねぇ!」
「ヨッシーは何でも美味しく食べてくれるから嬉しいさー」
「ラフテーもとろとろで美味しいですね」
アミが感嘆の声を上げる。
「おお、このソーキそばのスープ。意外とジャンキーな味だな」
ゴワスも満足そうに麺をすすっている。
「みんな喜んでくれて良かったさー!」
喜屋武が嬉しそうに微笑む。普段の学校での彼女とは少し違う、仕事に誇りを持った表情だった。
「姉ちゃんに教えておくか。たぶん、酒に合うだろうし」
「お前の姉ちゃん酒飲みなのか?」
「大学のテニサーの飲み会で全員潰して帰ってきたぞ」
「それはすごいな……」
和やかな雰囲気の中、沖縄料理を囲んでの食事会は続いていく。文化祭の準備で疲れた心を癒す、いつものメンバーでの特別な時間だった。