疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
数日後、放課後の教室。
いつものように、クラスの出し物を決める話し合いが始まった。
「それじゃ、今出てる案を一度まとめて、そこから多数決にしようと思うんだけど……どうかな?」
前に立つナイトが、黒板の前でやや疲れ気味の笑顔を浮かべる。
その背中を見ながら、俺は席に座ったまま腕を組んでいた。
「うーん、でもさー、結局どれも中途半端っていうかさぁ……」
「なんかどれもパッとしないよね」
「てかさ、どうせならどっかのクラスとコラボとかして盛り上げた方がよくね?」
教室内に広がるのは、ただの愚痴と文句の嵐。
しかも、自分では何もやらないくせに、「もっと面白いの」とか「どうせなら映えるやつ」とか言い出す連中ばかり。
さながら、区切りのないブレインストーミング。意見がまとまる気配すらない。
「……ナイト、大変だな」
ぽつりと隣の席で呟いたゴワスが、ペットボトルの水を口に含む。
「俺たちは見てるだけだけどな」
俺も苦笑して肩をすくめた。
ナイトは一生懸命やっていると思う。
問題はそれに誰もちゃんと向き合おうとしないことだ。
「とりあえず、今残ってる案は、喫茶店、展示、映像、演劇、縁日の五つだね」
ナイトが黒板に丁寧に案を整理している。
愛夏の頼みもあるし、タイミング的にもそろそろ動くとするか。
「あー、ちょっといいか」
俺は手を挙げ、立ち上がった。
ナイトが黒板の前でこちらを見て、笑顔で「どうぞ」と手を差し出す。
そのタイミングで、俺は隣の席に座るヨシノリに視線を向ける。
ちらりとこちらを見たヨシノリが、わずかに頷く。
これからのことは、事前に打ち合わせ済みである。
「一つ提案がある」
そう前置きして、事前に用意しておいた教室のプロジェクターにスマホと変換器付きのケーブルを接続する。
黒板横のスクリーンに、一枚の画像が投影された。
夏コミでくっころ飯の女騎士アイシャのコスプレをしたヨシノリの写真だ。
俺とトト先の作品を完璧に現実に落とし込んだ整った造形。
それを着こなしたヨシノリのクオリティの高いコスプレ姿に、クラスの連中は絶句する。
数秒遅れて、教室内にどよめきが広がる。
「これって……」
「うそ、由紀ちゃん!?」
「なにこの完成度……やばぁ……!」
女子たちは目を輝かせ、男子たちは言葉を失っていた。
「ちょ、カナタ!? 勝手に使うなってば!」
ヨシノリが立ち上がって叫ぶ。
その声に焦りはあるが、本気で怒っている様子はない。
それも、事前に話し合っておいた通りだ。
俺が何か言ってヨシノリがオーバーリアクションで返す。
それだけでクラスの関心を引ける。
何故かはわからないが、俺たちのやり取りはクラスの中で一つのコンテンツになっているからだ。
「喫茶店って案があるだろ? どうせならただの喫茶店じゃなくて、こうやってビジュアル面でも魅せた方が、いいんじゃないかと思ってさ」
俺が静かにそう言うと、ナイトがふむふむと頷き、さりげなく黒板の〝喫茶店〟の文字の上に〝コスプレ〟と付け加える。
「佐藤美人過ぎるだろ」
「絶対ウケるでしょ、これ」
「由紀ちゃん、普通にレイヤーで食ってけるよ……!」
盛り上がる教室に、ヨシノリが顔を赤くして告げる。
「一人だと恥ずかしいし、みんなもやってくれたら盛り上がって楽しいと思うんだけど……どうかな?」
その瞬間、クラスの空気は決まったようなものだった。
「俺も賛成だ! 女子のコスプレみたくない男子はいねぇよなぁ!?」
ゴワスが立ち上がって同じ体育会系の男子たちを煽る。
「料理ならわんも作れるさー!」
喜屋武が元気よく応じる。
「私は……由紀ちゃんと一緒に並びたい、です」
アミが照れながら、けれどしっかりと意思を口にする。
「決まり、だね」
ナイトが小さく笑って、黒板の〝コスプレ喫茶〟の文字に丸をつけた。
「で、お前は出るの?」
「もちろん! せっかくだからコスプレしてみたいところだね。執事服とか……似合うかな?」
ナイトは困ったように笑ってクラス全員に問いかける。
返ってきたのは黄色い歓声だった。