疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
クラスの出し物も決まり、文化祭実行委員会へ提出する用紙も埋まった。
「悪いね、付き合ってもらっちゃって」
「気にするな。文化祭実行委員会への取材と考えれば手間でもないって」
用紙を提出するため、俺とナイトは廊下を歩いて文化祭実行委員会本部がある教室へと向かっていた。
用紙の提出くらいナイト一人でも問題ないのだが、俺が個人的に文化祭実行委員会がどんな風に動いているか様子を観察したかったのだ。
自分がやらない限り体験することはできない組織の様子を見れるチャンスを逃す手はない。
これもまた小説の糧になる。
文化祭実行委員会本部があるのは、校舎の一番奥。使われていない多目的教室だった。
ドアの前に立つと、既に中から活気のある声が漏れてきている。
「じゃ、入るか」
「うん」
軽くノックしてからドアを開けると、いくつかの机を囲んだ中央のテーブル席では、数人の生徒が手元の資料に目を通していた。
その中心、ひときわ派手な声で話していた女子生徒が、こちらに気づいてパッと顔を上げる。
「はーい、クラスの出し物の提出だね~!」
腕を大きく振りながら駆け寄ってきたのは、明るいピンク色のスウェットを制服の上から羽織った女子生徒だった。
瞳は茶色がかっていて、テンションの高さと相まってどこか落ち着きがない。金髪に染めた髪は癖っ毛混じりのショートボブ。見るからに元気っ子タイプだ。
「文化祭実行委員長、岡絵里です。気軽に〝おかえり〟って呼んでね!」
「ああ、確か生徒会長の応援演説やってた……」
入学してしばらく経ってから行われた生徒会選挙のとき、唯一印象に残っていたのがこの人だった。
なんなら応援演説だったのに、生徒会長より印象に残っているくらいだ。
そのせいか、一年生の票なんてほとんど現生徒会長に流れただろう。
「こっちが提出用紙です。1年B組、クラス出し物は〝コスプレ喫茶〟です」
「はーい、受理するね!」
岡先輩が弾けるように笑いながら、紙を手に取ってチェックする。
いや、内容の精査しろよ。
「ふふん、こう見えて速読は得意なんだよ!」
俺の心を読んだかのように得意げな表情を浮かべる彼女に、ナイトが柔らかく言葉を添える。
「岡先輩。提供するメニューについては問題ないですか?」
「うんうん、そこ大事! 大丈夫、書類に細かく記載してくれてるから、保健衛生チェックも通るよ!」
ぱん、と手を打った岡先輩が、受領印をぺたりと押して書類を返してきた。
「文化祭当日は絶対に事故らせないように調整するつもりだから、何か困ったらすぐ言って!」
言ってることは真面目だが、全体的にノリが軽いせいで話の密度が濃く感じない。
しかし、実際にはしっかり書類をさばき、こちらの質問にもスムーズに答えているあたり、口先だけの人間ではないようだった。
人懐っこい笑みとテンションの高さに呑まれかけるが、言ってることは的確だ。
岡絵里。見た目と第一印象こそ軽いが、文化祭の中心でちゃんと立っている人間なのは間違いなさそうだ。
「じゃ、お互い文化祭頑張ろうね! またね~!」
岡先輩が笑顔で手を振ってくる中、俺たちは静かに教室を後にした。
「なんかパワフルな人だったね」
「まさにリーダーって感じだな」
岡絵里、文化祭という名の混沌を動かすにふさわしい、エンジンのような存在だった。