疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第192話 青春ガールズバンドの幻想

 スタジオの片付けを終え、機材を車輪付きの台にまとめながら、俺たちはエレベーター前で一息ついていた。

 

「えっ、練習後に集まってどっか飯いったりしてないのか?」

 

 思わず口に出してしまった。バンドの青春ものなら、練習終わりにファミレスやらカフェやらに行って盛り上がるのが定番というか、むしろマストイベントだろう。

 

「あはは、アニメではそういうシーンよくありますけど……私はお母さんが家でご飯作ってくれているので」

 

 アミが申し訳なさそうに笑う。ピックをポーチにしまいながら、手際よくギターケースを締める。

 

「わんは節約中さー。バイト代は機材に消えてくから、外食は贅沢品さー」

 

 喜屋武はにっこりと笑って、自分のベースケースを肩に担ぐ。

 

「私もあんまり外食はしないかな」

 

 桃太郎は淡々とスティックをバッグに仕舞いながら、さらっと言った。

 え、なにそれ。そんなバカな。

 

「女子高生って、練習後も駅前のカフェでパンケーキとかシフォンケーキとか食ってるもんなんじゃないのか?」

「その偏見、どこから来たのさー」

 

 喜屋武がくすくす笑いながら首を振る。

 

「じゃあ、放課後ティータイムとかもしないのか」

 

 俺の問いに、アミが笑いながら答えた。

 

「たぶん該当するのは由紀ちゃんくらいだと思いますよ」

「あいつのは、暴食カーニバルだろ」

「ぶふっ……! もう、由紀ちゃんに怒られますよ……!」

 

 吹き出したアミは口元を抑えて肩を震わせていた。ツボってるじゃないか。

 

「だいたい部室でティータイムなんてアニメの軽音部の中でも異例中の異例でしょ。うちのバンドにお嬢様は――」

 

 言いかけて、ふと桃太郎の視線が横に逸れる。

 

「あ、いたわ……」

 

 視線がアミを捉えている。それに対してアミは苦笑していた。

 そう、こいつは港区に実家があるガチのお嬢様だった。

 

「徒歩圏内に銀座、麻布十番、東京タワー……って、改めて聞くとなんだそりゃって感じだな」

 

 しかも、マンションとかじゃなくて自分の土地にある一戸建てだからな。

 

「高級レストランでいつも飯食ってそう」

「いえいえ! あまり外でご飯は食べませんよ。家でちゃんと準備してくれるので」

 

 これも偏見だけど、買い物も成城岩井とかでしてそう。

 

「アフロン、思ったよりもお嬢様感ないねー。もっとこう、制服のまま紅茶とか飲んでそうなキャラかと思ってたさー」

「普通に午前の紅茶紙パックのままラッパのみするからな」

 

 育ちはいいのだろうが、どうにも所作が一般高校生なんだよな。まあ、ヨシノリの影響が大きい気がするが。

 

「だから、両親が裕福なだけで、お嬢様育ちではないですから!」

「でも、アミがカフェで紅茶飲んでたら、それはそれで絵になるとは思う」

「も、もう、桃太郎ちゃんまで……」

 

 桃太郎の言葉に、アミが顔を赤らめながら小さく抗議した。

 

「結局、あれか。バンドの帰りに集まって〝ちょっとお茶でも〟みたいなノリは存在しないのか」

「たぶん存在はすると思う。でも、うちにはないさー」

「あってもファミレスじゃない? 高校生なんだし」

 

 桃太郎の言葉で締めくくられ、俺はひとつ小さくため息をついた。

 俺の中の〝青春ガールズバンド〟的なイメージは幻想だったらしい。

 

 そういえば、バンド系のアニメって練習描写よりもみんなで楽しく過ごしてる描写のほうが多かったよな……。

 

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