疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
翌朝、食卓にヨシノリの姿があるのを見て、俺は思わず二度見した。
「おお……珍しいな」
「最近は女バスの朝練ないからさ」
いつもはバスケ部の朝練で、すでに家を出ている時間。こうして揃って朝食を囲むのは久しぶりだ。
「ほら、お兄ちゃん。箸」
対面に座る愛夏が、器用に箸を揃えて俺に差し出す。
「サンキュ。いつもありがとな」
「……感謝の気持ちがあるなら、たまには夕飯くらい作ってよ」
「前向きに善処することを検討します」
「政治家でもそこまでひどい誤魔化し方しないでしょ」
そんなやりとりを交わしつつ、温かい味噌汁と焼き魚、卵焼きが並んだ質素ながらバランスの良い朝食に箸をつける。
「そういえば、カナタ。放課後、あーちゃんたちのとこ行ってたんでしょ?」
焼き海苔を巻いたご飯を口に運びながら、ヨシノリが何気なく聞いてくる。
一口デッカ。おにぎりでわんこそばしてんのかと思ったわ。
「まあな。アミたちのバンド、結構いい感じに仕上がってきてたぞ」
そう言ってひと呼吸置いてから、昨日のことをふと思い出し、続けた。
「ただ、最近の軽音部はいろいろ大変らしい」
「大変?」
愛夏がヨシノリのお茶碗におかわりをよそいながら首を傾げる。食べるの早すぎだろ、手品かよ。
「バンドがちょくちょく解散してるんだと。理由の半分は、色恋沙汰だってさ」
「は?」
箸を止めたヨシノリが目を丸くする。
「桃太郎ってドラムの子が言ってたんだ。仲間内で付き合って浮気されて、それが原因でギスって崩壊するパターンが多いってさ」
俺は味噌汁を一口すする。出汁がやたらと沁みる朝だ。
「で、俺が漫画のモデルでアミや喜屋武と絡んでるから、そのへんも少し気にされてたみたいでな」
「……そっち方面で、あーちゃんと鳴久に何かあると思われたってこと?」
ヨシノリが目を細める。そこにはうっすらと警戒の色があるような気がした。
「ま、ありえないよな。アミも喜屋武も、俺みたいな執筆マシーンに惚れるわけがないし、そもそも俺なんかに惚れる女子がいたら見てみたいよ」
自分でも、そう言ってて少し虚しくなった。現実的な自己評価はだいたい冷めたものだ。
ふと視線を上げると、向かいの二人がまったく同じ動きをしていた。
無言で、あからさまにため息ついている。
「……なんだよ、そのリアクション」
「別に」
「いや、特に意味はないけど……そういうとこなんだよなぁ」
ヨシノリがどこか疲れたような顔で呟く。
「お兄ちゃん。そろそろ刺されるよ」
「誰にだよ」
愛夏が俺を見る目が、なぜか同情に満ちている。
「まあ、いいや。とりあえず、アミたちのバンドは順調だから安心しろ」
「よくない」
ピシャリとヨシノリが告げる。
「カナタはもっと周りの人の気持ちを考えなさい」
「というと?」
「最近はマシになってきたけど、あんまり自分を低く見積もらないで」
ヨシノリの言葉に、俺は箸を止めた。
「低く見積もってるって、別に普通の評価だろ」
二周目からはいろいろと気をつけてはいるものの、俺の本質は執筆マシーンだ。
小説家田中カナタとしての自信も誇りもある。
ただ一人の人間としての田中奏太に関しての自己評価はかなり客観的なものだと思う。
「いや、でも実際そうじゃん。俺なんて小説書いてるときしか取り柄ないし」
「はい、また出た」
ヨシノリが手をひらひらと振る。
「カナタが思ってるより、あんたを大切に思ってる人はたくさんいるの。それなのに、そんなふうに自分のこと言われたら、その人たちがどう思うか考えたことある?」
そんなヨシノリの言葉が、妙に胸に刺さった。