疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第195話 案外、悪くない

 文化祭まで一ヶ月を切った。

 それは同時に、ポニテ馴染みの発売まで二ヶ月を切ったということでもあり、連載打ち合わせの頻度も上がってきた。

 カミラの聖剣の進行も並行して進めなければならず、俺のスケジュールはすでにカレンダーが泣きたくなるほどの密度を誇っている。

 

 そんな中でも、アミたちのバンドの取材は欠かせない。

 文化祭の部誌に載せる漫画〝ギター少女アフロディーテ〟を成立させるには、リアルとの連動が肝だ。取材を怠れば説得力がなくなるし、練習風景を知らずにドラマは描けない。

 加えて、クラスの出し物も佳境に入ってきていた。

 俺たちのクラスのコスプレ喫茶は、衣装づくりや内装準備などやることは山積みだった。

 その辺りは未来でコンカフェに関する知識のある俺が、積極的に関わった方がよいものになるという自負があった。

 

「カナタ。顔色悪いけど大丈夫かい?」

 

 そんな忙しさの中、教室でプリントの整理をしていると、ナイトが心配そうに声をかけてくる。

 いつものきっちり整えられた髪型、ブレない優等生スマイル。

 その観察眼はちゃんと俺の体調を見抜いていた。

 

「……ちょっと寝不足なだけだ」

 

 俺は無理に笑って答える。ナイトの前であんまり弱音を吐きたくない。

 こいつは何でもそつなくこなすタイプに見えるけど、クラスのまとめ役として相当無理してるのを俺は知ってる。

 無理をしている人間がいる中で、自分が弱音を吐くなんてできるわけもない。

 

「倒れないでくれよ。カナタがそんな調子だと愛夏ちゃんが心配するだろう」

 

 プリントを束ねながら、ナイトがそっと釘を刺してくる。

 

「……お互い様だろ」

「……それも、そうか」

 

 結局、無理をしているのはお互い様だ。ここは踏ん張るしかないのだ。

 

「それに言い出しっぺの法則ってのがある。俺がコスプレ喫茶をやるように焚き付けたんだ。責任は取らなきゃな」

「それはわかるけど、ここまでやる必要があったかい?」

 

 ナイトは俺がエクセルで細かくまとめた資料を見て苦笑する。

 各クラスメイトたちの希望のコスプレと衣装のレンタル代金の整理、設備にかかる費用の算出、喫茶店で出すメニューの材料費とどのメニューに比重を置くかの試算。

 この手の業務は俺の領分だ。というか、エクセルをまともに使える奴がクラスにいない。

 

 お前ら全員、まともに情報の授業受けろや。教えはどうなってんだ教えは。

 

「やるなら全力だ。せっかくの文化祭だしな」

 

 最初はクラスメイトたちを小バカにしていたが、全力で興じてみればなかなかどうして悪くない。

 

「田中くん。無理しないで、手伝えることあったら言ってね?」

「田中! 俺、手ぇ空いてるけど、どうすればいい!?」

「カナタっち、これ差し入れのエナドリ!」

 

 元々クラスメイトたちとはそれなりに話をするようにしてはいたが、クラスの出し物がコスプレ喫茶になってから話しかけられることが以前より増えた気がする。

 前は基本的に誰かとセットで話しかけられることが多かったが、最近は俺単品でも高頻度で話しかけられるようになった。

 これが文化祭効果というやつだろうか。

 満足げにクラスを見渡していると、慌てた様子でゴワスが駆け寄ってきた。

 

「悪ぃ、奏太! 印刷したメニュー表のラミネート失敗してぐちゃぐちゃになっちまった」

「何やってんだ、タコ。殺すぞ」

「俺にだけ辛辣すぎねぇか!」

 

 ゴワスとのやり取りだけで周囲が笑い声に包まれる。

 案外、友達以外のクラスメイトとの交流も悪くないものだ。

 

 ちゃくちゃくと進む文化祭の準備を楽しんでいると、後ろの方から騒がしい気配が近づいてきた。

 

「おーい、カナタン! 今日は部室で練習するってー! アフロンが言ってたさー!」

 

 喜屋武の元気な声が響く。寝不足の頭に染みるなぁ。

 

「ああ、わかった。ちょっと顔出す」

「カナタンいるだけで、アフロンのテンションぜーんぜん違うんだからさー!」

 

 その言葉に、ナイトの眉がピクリと動いた。

 

「カナタ。最近、由紀ちゃんとあんまり一緒にいないよね」

「ああ、取材が忙しいからな」

「休日も?」

「作業が立て込んでてあんま話せてない、かな」

 

 ポニテ馴染の発売が近づいてきて、確認作業がやたらと多いからその辺は仕方ないだろう。カミラの聖剣のほうだって作業はあるし、文化祭の出し物の資料作成、取材をしつつギター少女アフロディーテのネームを駆ける部分まで描かなくてはいけない。

 とはいえ、顔を合わせれば会話は普通にしている。

 

「……そうかい」

 

 ナイトの声色が少しだけ低くなった気がしたが、特に何も言わず、プリントの山に視線を戻す。

 

「じゃ、俺は軽音部の方、ちょっと行ってくるわ」

「レッツゴーさー!」

 

 喜屋武に手を引かれ、俺は軽音部の部室へと向かうのだった。

 

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