疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
軽音部の部室に、はじけるようなイントロが鳴り響く。
明るくて、リズミカルで、聴いているだけで気分が浮き立つ。ギターが軽快にコードを刻み、ベースが跳ねるようにリズムを支える。ドラムがカラッと乾いた音で響き、まるで夏空を駆ける風のようだった。
アミがマイクに向かって歌い出す。
透き通った声が、メロディに乗って跳ねる。
この曲は俺もよく知っている。
2007年にリリースされた曲で、男子校に女の子の主人公が転校する当時人気だったドラマの主題歌だ。
桃をひっくり返すとハートだし、ピーチとビーチ、桃とお尻。
何というかモチーフが秀逸なんだよな、この曲。
「PEACH♪ ひっくり返る愛のマーク~♪」
青春を全力で楽しむ。そんな気持ちが、アミの声にそのまま乗っている気がした。
部室の空気がぱっと明るくなるような感覚。
この曲の真骨頂は、何といってもサビの爆発力だ。
跳ねるようなリズムが、全員の体を自然と揺らす。
喜屋武のベースが躍動し、桃太郎のドラムがしっかりとしたテンポでそれを後押しする。
自然と手拍子を入れたくなるほどポップで、思わず口ずさみたくなるくらいキャッチー。
その可愛さの奥には、強い意志のようなものも感じられる。
アミの歌には、ただ可愛いだけじゃない芯の強さがあった。
「……やば、アフロンの声、今日めっちゃ冴えてるさー!」
演奏が終わった途端、喜屋武が興奮したように声をかける。
それに答えるように、アミが笑った。
「ありがとう、ございます! この曲、すごく好きだから……つい、気持ちが入っちゃいました!」
その表情は、今まで見たアミの表情の中でもひときわ輝いていた。
「本番、この曲で一発ぶち上げるかね」
桃太郎が叩き終えたスティックを回しながら、静かにそう言った。
少し乱れた前髪の隙間から覗く瞳には、やりきった余韻と、どこか確かな期待が見えた。
「カナタ君はどう思いましたか?」
アミがギターのストラップを外しながら、少しはにかみながらも真剣な眼差しを向けてくる。
俺はその瞳をまっすぐに受け止めて、口を開いた。
「まず、楽曲のチョイスが絶妙だな。一曲目でぶち上げるにはもってこいだ」
軽快なテンポ、耳に残るメロディ、そして盛り上がるサビ。どれをとっても一発目にふさわしい。
それに、どんなにアミが良い曲をかけたとしても、いきなり知名度ゼロのオリ曲は受けづらい。
そこで一発目にみんな知っている盛り上がる曲を入れることで、バンドの良さが伝わり、こんなすごいバンドならオリ曲も凄そうという期待感が高まる。
「俺ら世代には刺さる選曲だし、サビに手拍子が入るのも盛り上がるポイントだ。あと曲名的にも〝桃〟太郎がいるバンドにはもってこいだな」
言いながら、自然と桃太郎の方を向いたが、本人はどこか照れくさそうに視線を逸らしていた。
「ふふん、桃ならここにもありますよ」
胸を張るとアミは自慢げに自分の胸と尻をペチペチ叩いた。
おい、誰だこいつをここまで悪い方へ染めたのは……あれ、ネット活動を勧めた俺のせいか?
「やめとけ。そういうの、ファン層がざわつくぞ」
俺が呆れ気味に言うと、アミはてへぺろと笑う。
うっわ、懐かし。てへぺろとか死語だろ。
いや、この時代なら絶賛女子高生の間で大流行中だったわ。