疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第20話 月が綺麗ですね(迫真)

「はぁ……最高の一日だった」

 

 部室の鍵を返し終えた俺は、トト先とのやりとりを反芻しながら下駄箱で靴を替えて学校を出る。

 すっかり暗くなっている空を見上げると、綺麗な満月が浮かんでいた。

 

「随分と楽しそうだったじゃん」

 

 唐突に後ろから声をかけられ、振り向くとそこにはヨシノリがいた。

 

「由紀。こんな時間まで――ハッ!?」

 

 部活だったのか。という言葉を飲み込み、急いでお約束の言葉を口にする。

 

「月が綺麗ですね!!!」

「そんな勢いで告白すな。目が血走ってて怖いっての」

 

 ド定番のシチュエーション台詞だったのに、ヨシノリにはジト目を向けられてしまった。

 

「いや、こんな満月見たら言うしかないでしょ」

「はいはい、死んでもいいわ……っと」

 

 呆れつつも、ヨシノリはきちんと定番の返しをしてくれた。今日も幼馴染の優しさが染みわたる。

 

「それで、漫研ではうまくやっていけそう?」

「おう。最初は避けられてたけど、手書きの書類全部データ化したら神扱いされるようになった」

「何で入部初日から社畜みたいなことしてるの……」

 

 上司が効率の鬼だったおかげで、表計算ソフトや便利なツールの使い方とかは叩き込まれたことが幸いした。

 本当にいい上司だったなぁ……二週目の人生で小説家になれたとしても兼業でやる予定だし、また部下になりたい。今度は給料泥棒じゃなくて、しっかり恩返しがしたいと柄にもなくそう思えた。

 

「大人になったよね、カナタは」

 

 二週目でまだ見ぬ上司へ思いを馳せていると、遠い目をしたヨシノリがそんなことを呟いた。

 

「高校生は子供だろ」

 

 少なくとも三十二歳までの経験をした俺からすれば。いや、俺も社会でうまくやれていなかったから、精神年齢は高校生止まりの気もするけど。

 

「そうじゃなくてさ」

 

 苦笑しつつ、ヨシノリは首を振った。

 普段よりも真面目な顔をした幼馴染に、俺は何も言えずに息を呑む。

 

「立ち振る舞いとか、雰囲気とか……あたしの力なんてなくても、やって行けそうだなぁって思って」

 

 わずかに俺から視線を外して、ヨシノリが微笑む。その微笑みは普段と違って儚げだった。

 俺とヨシノリの間には風が吹き、ヨシノリのトレードマークのポニーテールが風に棚引く。

 

「まったく、何言ってんだか」

 

 前向き元気印のヨシノリらしくもない。幼馴染ヒロインのギャップとしてそれはアリだが、ヨシノリにはそんな顔してほしくない。

 

「俺はヨシノリがいないと生きていない自信がある」

「自信の方向性が後ろ向き過ぎるでしょ」

「それだけ頼りにしてるってことだ。何てったって俺は執筆以外はからっきしだからな」

 

 自信たっぷりにそう言ってやる。すると、ヨシノリは目をぱちくり瞬かせた。月光に照らされたオレンジ色のアイシャドウが煌めく。

 それから月光よりも明るい笑顔を浮かべてヨシノリは告げる。

 

「じゃあ、高校デビュー頑張らなきゃだね。あたしも頑張るからさ!」

「おう、結果が出るまでやるのが努力だ。お互い頑張ろうな」

 

 小学校のときのように拳をぶつけ合って笑い合う。

 

 この二周目の人生。使えるもんは全部使って、とことん楽しんでやる。

 

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