疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
その夜、あっさりAMUREは未来に帰っていった。なんだったんだ、マジで。
アミからは「無事もとに戻りました。ご心配をおかけしました」と連絡があった。
……一応書置きはしてくれたみたいだが、よくアミも信じてくれたものだ。
謎は増えたが、再び推しに出会えた奇跡に感謝である。
それにバンドメンバーが対バンに乗り気なのはいいことだ。
ただ俺にはどうしても気がかりなことがあった。
どうして多田野がこんなことをしでかしたかである。
「おい、多田野」
「ああ、田中。この間はありがとな」
A組まで行くと、多田野は嬉しそうに駆け寄ってくる。
「対バンってどういうことだよ。桃太郎のことは諦めたんじゃなかったのか」
「うん、だから無理に説得して引き抜くのはやめたんだ。どうせ誤解だって言っても信じてもらえないだろうし」
なんだろう。会話が噛み合っていない気がする。
「諦めるにしても、さ。できることを全部やってから諦めないと、喪失感も中途半端になりそうじゃん? それじゃあ、音楽の糧にするには物足りないと思ってね」
「仮に対バンでお前の新しいバンドが勝ったところで、桃太郎の気持ちはどうなる?」
「どうだろう。やってみなきゃわからない。でも、何事も挑戦だ。失敗こそ糧になるんだろ?」
どうやら俺はヤベー奴のやる気スイッチを押してしまったらしい。
「軽音部も解散ラッシュで荒れ気味だったから、うまいこと最高のメンバーが集まったよ。こういうの塞翁が馬っていうんだっけ」
「お前……」
変に発破をかけてしまったせいで、多田野はおかしな方向に尖ってしまった。
自分に似たところがあるから、経験を踏まえて説得しようなんて傲慢だったのだろうか。
ケイコ先輩のときとは違う。
俺は最初にもっと周囲の人間を思いやることが大切だと伝えるべきだった。
ただ経験上、死ぬ気の執筆期間中の俺にそんなことを言っても伝わらなかったという確信もある。
「もしアミたちが勝って、出した条件が多田野に彼女と別れて桃太郎と昔みたいな関係に戻る、だったらどうする」
「そうだとしたら、どっちに転んでも俺の得になるけど、大丈夫そ?」
桃太郎には悪いが、この答えで確信した。
仮にこのまま桃太郎が多田野と元の関係に戻りたいと願っても、それは叶わない。
「安心しろ。文化祭でズタボロに負けたお前に、それを喜ぶ余裕なんてない」
「……なんだと」
そこで初めて薄っぺらい多田野に本気の感情が宿った気がした。
「お前たちはアミに……いや、Named Monsterに勝てない」
「素人にはわからないだろうさ」
「だから、負けるんだよ」
一通り煽ってみれば、多田野はわかりやすくこめかみに青筋が浮かんでいた。
懐かしいな、この感じ。
素人にはわからない――その通りだと思う。
でも、俺たちクリエイターがそれを言ったらおしまいなんだよ。